新・美爪通信

 爪に関心のあるすべてのかたに贈る「爪の総合情報ブログ」です。巻き爪、陥入爪など、爪に関することなら何でもとりあげるだけでなく、時には寄り道をして、医学一般の話も加えて参ります。

巻き爪の「不適切でない」治療(5) ー 爪の両縁に弾性板を装着する方法

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 今回とりあげる治療法は、前回の「爪の先端に金属片を装着する方法」とかなり共通するところがあります。そして、これもやはり「不適切でない」という評価にとどまらざるを得ないのです。ただ、そういう評価になってしまう理由はやや異なります。

 この「爪の両縁に弾性板を装着する方法」というのは、曲げても直線状に戻る性質を持った弾性板の両端をフック状に加工して、爪の両方の縁に引っかけることによって爪に装着する方法です。そうすれば、弾性板が直線状に戻る力によって巻き爪が平たく矯正されるという理屈です。

 この方法に使用される素材は弾性のある板であればいいわけなのですが、フック状に加工するためには折り曲げ加工ができなければなりませんので、実際には金属に限られます。私の知る限り、これに該当する素材は

   『ゴールドシュパンゲ(Goldspange)』

という名のドイツ製の爪矯正用具くらいしかありません。これは、文字通り金色の金属板であり、曲げても元に戻る弾性を備えています。これを爪の形態に合わせて加工して装着するわけですが、それには技術を要するらしく、専門の講習会が開催されています。ただ、後述の『VHO(Virtuose Humane Orthonyxie)法』などと異なり、講習を受けなければ施行が許されないということはありません。(私は使用していませんし、使用の必要もないので、講習は受けておりません。)

 理屈から言えば、この方法もなかなか有効な治療法のように感じられてもおかしくありません。ですが、それでも私はあまりこの方法をおすすめすることができないのです。なぜなら、次に挙げる3つの難点があるからです。


1.爪の両端に力が集中すること

 上で述べた通り、この方法は爪の両端に金属のフックをかけて引き上げるというものですので、爪のフックがかかる部位に強い力が集中してかかることになります。ですから、この方法がうまくいくためには爪の両端の部分が充分に硬くて丈夫でなければならないのです。さもないと、フックを引っかけたところがもげてしまうことになりかねないからです。

 ですが、実際には、巻き爪で苦しんで医療機関を受診される方はほとんどの場合、陥入爪を合併していて、爪の両端は肉に深く食い込んでいることが多いのです。

 そうなりますと、フックをかけようにも爪の両端を露出させることすら困難であり、しかもその部分の爪は水を吸ってふやけているので、とても脆い状態にあるのです。

 ですから、この方法は現実の患者に適応するのは困難であり、苦労して施行したとしても爪の縁が崩れて弾性板が脱落してしまうことになりやすいのです。そうなってしまうと、爪の縁がギザギザになってしまい、その後の治療も困難になってしまいます。


2.矯正力が持続しにくいこと

 この方法では、「曲げても直線状に戻る性質」を持った金属板の両端をフック状に折り曲げて爪に引っかけるということになるのですが、実は、ここにはある重大な矛盾があるのです。それは、

   曲げても直線状に戻る性質(弾性)


   フック状に折り曲げられる性質(可塑性)

とは、互いに相反する性質であるということです。つまり、現実にはどちらかの性質を犠牲にしなければならないということになるのです。

 実際には、板バネのように折り曲げ加工が困難な性質では使い物になりませんので、どうしても弾性の方をある程度犠牲にして、折り曲げ加工が容易にできるようにしなければなりません。となると、

   肝心の治療効果が期待できない

ということになってしまうのです。つまり、装着しても爪の形に沿って曲がったまま元の直線状に戻らなくなってしまうことになりやすいのです。これは巻き爪が高度で、ほぼ円筒状になってしまっているような場合に起こりやすい現象です。これでは、高い料金をかけて装着する意味が乏しいと言わざるを得ません。


3.矯正が進むと自然に脱落すること

 これは、仮にこの治療法が有効であっても避けられない本質的な欠点と言えるものです。

 巻いている爪にぴったり合うように弾性板を作ると、円弧状になった爪の外側から覆う形になりますので、必要となる弾性板の長さは

   爪の幅より少し長くなる

ことになります。

 これは、円筒状のものを紙などでくるむ場合を考えればわかりやすいでしょう。つまり、包む紙の長さは、円筒の円周の長さでは足りず、少し長くなければ隙間ができてしまうのです。これは、包む紙の厚さが厚ければより顕著となります。

 『ゴールドシュパンゲ』に代表される弾性板も、当然ながら厚さがありますから、爪の幅よりも少し長くなければ爪の両端まで届かないわけです。ここまではおわかり戴けたでしょうか?

 では、次に、巻き爪が幸いにもうまく矯正されて平たく平面状になったとします。そうなった場合に、爪の両端に届くために必要となる弾性板の長さはどうなるでしょうか。これは考えてみればすぐわかる通り、

   爪の幅と同じ

でよいことになります。

 つまり、巻き爪が矯正されて平たくなると、必要となる弾性板の長さが短くて済むようになるわけです。ですが、弾性板は爪の状態に応じてゴムのようにひとりでに縮んでなどくれません。するとどうなるかと言えば、巻き爪が矯正されると

   弾性板の長さが余る

ことになり、そのうちフックが外れて

   自然に脱落してしまう

ことになるのです。

 こういう現象が起こるため、実際に『ゴールドシュパンゲ』などを装着する際には接着剤などで爪に固着させる処置も行うわけですが、それでも自然脱落を完全に防ぐことはできません。

 ですからこの治療法では、例え効果が現れてもそれが充分に発揮される前に自然脱落して失敗してしまう危険が必ずつきまとうのです。


 以上の3つの点から、私はこの治療法もあまり優れた方法と考えてはおりません。ですが、もし巻き爪の程度があまりひどくなく、爪の両縁が充分に丈夫であれば、この方法を試みるのも悪くはありません。ですから、この方法は、かなり軽症の方に適しているものと言えます。巻き爪の程度が強い方や、陥入爪を合併している方には適さないと考えますので、もし、それにもかかわらずこの方法をすすめられた場合には、即決することなく、よく検討されることをおすすめ致します。



(続く)



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  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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巻き爪の「不適切でない」治療(4) ー 爪の先端に金属片を装着する方法

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 次にとりあげるのは、アルミニウムやステンレスなどの金属片を爪の先端に装着して爪を直接矯正しようとする方法です。

 具体的には、金属板などを爪の先端に嵌められるような形に折り曲げ加工して、それを巻いている爪の先端にかぶせて固定します。それにより、板バネのような「平たくする力」を爪に加えることになるので、爪が平たく矯正されるという理屈です。

 実際には、アルミ缶を切って自作するとするという方法もあれば、すぐに爪に付けられるように加工されている器具も販売されていますが、共通する点は

   爪の先端に装着する

というところにあります。

 一見、理に叶っていて優れた方法のように感じられます。ですが、この方法も幾つかの難点があり、やはり「不適切でない」という評価にとどまらざるを得ないのです。


 この治療法の難点は、次のように整理することができます。

   1.金属の化学的な問題

   2.金属板の物理的な問題

   3.装着する爪の問題

 以下に、順番に説明して参りましょう。


1.金属の化学的な問題

 上で例に挙げましたように、この治療法で用いる金属片はアルミニウムやステンレスなどの、比較的入手しやすく、一般の人にも容易に加工できる金属でできていることが大部分です。

 爪とはいえ、人体に長期間装着することを想定するわけですから、人体に有害であってはなりません。その点で、アルミニウムやステンレスはやや難があると言わざるを得ないのです。

 まず、アルミニウムについてですが、一円玉やアルミホイルなどによく使われていて身近にあるだけに、人体にも安全だという印象を持つ方が多いと思います。ですが、アルミニウムはかなり反応性に富んだ金属であり、人体に悪影響がないとは言えないのです。実際、アルミニウムは塩酸にも水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)にも容易に溶けますし、日の丸弁当(ご飯の真ん中に梅干しを置いたもの)をアルミの弁当箱に入れておいたら、梅干しの所だけが薄くなってとうとう穴が開いてしまったという話も聞かれます。ですから、足の爪の先端といった、高温多湿の環境が続く条件に置いておけば、変質してしまう可能性が少なくないのです。そうなれば、足の皮膚に刺激がかかって皮膚炎などを起こす危険があると考えられます。

 ステンレスの場合にはアルミニウムのように変質する可能性は低いと考えられますが、現在のほとんどのステンレスにはニッケルが入っており、これは金属アレルギーを起こす頻度が最も高いことがわかっています。ですから、これも長時間皮膚に接する器具として使うのはおすすめできません。

 つまり、この治療法で用いる金属は、人体にできるだけ無害なものでなければならないのです。

 金属の中で最も人体に無害なのはタンタルであり、人工関節や人工骨頭に使われます。ですが、タンタルなど一般の人にはなかなか手に入りませんので、それ以外に人体に害の少ないチタンなどが好ましいと言えます。現に、歯列矯正に用いる針金はチタン合金でできています。それと同様に、この治療法で使う金属片はチタン合金製のものが望ましいでしょう。

 私が現在、巻き爪治療に必要不可欠と考えている『マチワイヤ』という形状記憶合金製の針金があるのですが、その開発者である町田英一(まちだ・えいいち、『マチワイヤ』の名はこの先生の姓から来ています)先生が最近新たに開発された

   『マチクリップ

という器具は、この条件を満たしており、素材という点においては優れていると言えます。


2.金属板の物理的な問題

 次に、金属板の性質を考えた場合、この治療法に適用するのに不都合な面があるのです。

 この治療法に適していると言うためには、以下の2つの条件を同時に満たさなければなりません。

   A.爪に矯正力を充分に加えられるほどの弾力があること

   B.切削・折り曲げ加工がしやすいこと

 ところが、この2つの条件は往々にして矛盾するのです。

 弾力が強い金属と言えば、ピアノ線やバネが思い浮かびますが、こういった金属は切ったり削ったりすることが困難ですし、曲げてもすぐに元に戻ってしまうので、折り曲げ加工が非常にしづらいのです。逆に、加工が容易な金属というのは柔らかくて簡単に曲がる性質を持っていますから、爪に装着しても爪の形に曲がるだけになってしまい、爪を平たくする力を保つことができないわけです。

 つまり、簡単に爪に合うように金属片を加工できる素材では装着しても効果が期待できず、効果がありそうな弾力の強い金属は加工が困難で使用できないということになりがちなのです。

 これでは、この治療法自体の有用性がほとんど認められません。

 例外としては、すでに紹介した『マチクリップ』というものがあり、これは爪の大きさ・厚さに応じて幾つかのタイプが作られていて、その中で合うものを選べますので、上に挙げた難点はほぼ解消されています。


3.装着する爪の問題

 最後に、金属片を装着する爪にそもそも問題がある場合があり、これが、この治療法をおすすめできない最大の理由になっているのです。これは、上2つの問題を回避している『マチクリップ』ですら免れない難点です。

 巻き爪で苦しんでいる患者は、ほとんどの場合、痛みや出血、腫れ、排膿などを訴えて受診されます。中には、爪の変形だけを苦にして来院される方もいますが少数派です。

 つまり、巻き爪の患者の大部分は

   陥入爪を合併している

のです。これがどういうことを意味しているかおわかりになれば、この治療法が現実に甚だ価値の低いものであることに納得して戴けるでしょう。

 陥入爪は、これまでの記事でも言及してきました通り

   深爪が原因で起こる

ものです。つまり、

   爪が短すぎる状態

にあるのです。しかも、痛みを軽くしたいがために医療機関やもしくは自分自身の手で爪のカドを斜めに切り込んでしまっている例も少なくありません。

 そんな状態では、爪の先端に金属片を装着しようにも

   爪が短すぎて付けられない

場合が多く、しかも爪のカドが斜めに切り落とされていると、爪の先端は爪の中央部のわずかしかないことも多く、そうなると

   金属片を装着しても意味がない

ことになりかねないのです。

 さらに、爪が肉に埋もれてふやけていたりすると、爪がもろくなっていて、金属片を装着してもすぐに爪が崩れて外れてしまうことが多いのです。

 実際には、爪の先端がギザギザになっていたり、2枚に剥がれていたり、水虫で白く濁って崩れていたりして、金属片を装着しようにもどうにもならない例も頻繁に見られます。

 こういった現実を考えますと、この治療法がうまく適用できる患者はかなり限られてしまうのです。

 「よい治療法」として皆さんにおすすめするからには、それが

   大部分の患者に適用可能

なものでなければならないと私は考えております。


 以上の理由から、私はこの「爪の先端に金属片を装着する方法」は、やはり「『不適切でない』治療」という位置付けにせざるを得ないのです。

 もし、爪が充分に伸びていて、爪の先端も充分に丈夫であれば、この治療法を受けるのも悪くないと考えますが、そうでなければおすすめできません。現に、私の爪専門外来でもこの方法は行っておりません。もっと有効で適用範囲の広い治療法があるからです。

 皆さんがもし、この治療法を施行されていらっしゃるならば、その効果が費用や時間に比べて小さすぎないかどうかお考えになることをおすすめ致します。



(続く)



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巻き爪の「不適切でない」治療(3) ー コットン・パッキング法

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 次に紹介するのは、

   「コットン・パッキング法」

と呼ばれる方法です。

 と言えば、きっと皆さんは疑問に思われるに違いありません。

   「あれ? どこかで見たような・・・?」

と。

 そうです。この「コットン・パッキング」という治療法は既に「陥入爪の『不適切でない』治療」(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/42488718.html)として紹介しているのです。

 ですが、この方法は巻き爪の改善を目的として行われることも多く、その場合には陥入爪に対して行う場合と意味合いが変わってくるのです。そのため、ここで改めて「巻き爪の治療法」としてとりあげることにしたわけです。

 陥入爪の治療法として紹介したときには、この方法は

   (食い込んでいる)爪と肉との間に隙間を作る

ことを目的としていました。ですが、巻き爪の治療法として用いる場合には、これでは意味がありません。

 巻き爪とは、爪の両縁が内側へ接近してくるわけですから、それを阻止する目的で綿を詰めようというわけなのです。


 どうでしょうか? ここまでの説明なら、皆さんにもまあまあ納得して戴けるものと思います。しかし、この治療法もやはり「不適切でない」という評価にとどまらざるを得ない、利点の少ない方法なのです。


 まず第一に、この方法を「正しく」行うのはとても難しいのです。

 爪の彎曲を阻止する目的ならば、当然のことながら綿は爪の内側、すなわち

   爪の下

に詰めなければなりません。ところが、治療を要するほどの巻き爪では爪の縁が皮膚の奥深くに入り込んでいて、爪の下どころか爪の縁を見ることすら困難です。そうなると、往々にして、

   めくらめっぽうに綿を爪の縁に押し込む

ようなことになりがちなのです。すると、どのようなことが起こるでしょうか?

 そうです。爪の下に入れるべき綿が爪の上にばかり入ってしまうのです。そうなると、爪の縁を押し下げる形になってしまい、下の図1のように、爪の彎曲を阻止するどころか、さらに進行させることになるのです。
コットン・パッキング-01
 これではまさに有害無益であり、完全に不適切な処置となってしまいます。


 第二に、例え「正しく」爪の下に綿を詰めても、苦痛が大きい割に効果が乏しいのです。

 爪の下側というのは、皆さんもおわかりのように

   皮膚に密着している

のが普通です。そして、その場所の皮膚はとても敏感なのです。だからこそ、生爪を剥がされる痛みは強烈であり、過去には拷問の手段としても用いられていたわけです。

 この「コットン・パッキング法」というのは、まさにこの敏感なところを引き剥がして、そこに綿を詰めるという行為なのです。これがかなりの苦痛を伴うものであることは、想像しただけでわかることでしょう。

 しかも、その苦痛に耐えて綿を詰めたところで、効果がほとんど期待できないとしたらどうでしょう。実際、綿を爪の下に入れても、それが爪の彎曲を阻止する効果は微々たるものと言わざるを得ません。なぜなら、

   爪よりも皮膚の方が柔らかいから

です。

 例で説明しましょう。ここに柔らかい羊羹があり、その上に鉄の板の断面が押し当てられているとします。そうなりますと、放っておけば鉄板がどんどん羊羹に食い込んでいくことが予想されます。そこで、それを阻止するために鉄板と羊羹の間に綿を詰めたらどうなるでしょうか? 期待通り鉄板が押し上げられて、羊羹に食い込むのを防ぐことができるでしょうか? いいえ、そんなことはありません。おそらくは綿を詰めた分、さらに羊羹が凹むだけの結果となるでしょう。

 つまり、

   硬いものは柔らかいものに勝つ

のです。

 これを実際の爪に置き換えて考えてみましょう。爪の彎曲を阻止する目的で爪の下に綿を詰めたとします。そうするとどうなるかと言えば、下の図2のように、硬い爪が外側へ押しのけられるよりも、むしろ、柔らかい皮膚の方が内側へ押し込まれてしまうのです。コットン・パッキング-02
 つまり、肝心の爪の形はほとんど変わることがなく、皮膚や肉だけがより変形するという無意味な結果になってしまうわけです。これが果たして「有効な治療」と呼べるでしょうか?


 以上のように、この「コットン・パッキング法」という治療法は、巻き爪に対しても有効性に乏しく、決しておすすめできるものではありません。費用がほとんどかからない、重大な障害を起こさない、といった「利点(?)」もなくはありませんが、患者にしてみれば、いくら安くても害がなくても治らなければ意味がないのは当然です。

 ですから、もし、皆さんがこの「コットン・パッキング法」やそれに類する治療を漫然と施行されているようであれば、そのまま継続すべきか否か検討されることをおすすめ致します。


(続く)


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巻き爪の「不適切でない」治療(2) ー 爪甲剥削術(ソウコウハクサクジュツ)

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 最初にとりあげるのは「爪甲剥削術」というもので、これは爪甲、つまり爪の中央部をヤスリなどで薄く削るという方法です。

 ですが、これだけでは何のことだかわかりにくいでしょうし、第一、

    「それがどうして巻き爪の治療になるのだ?」

という疑問が生じてもおかしくないでしょう。

 これまでの記事をお読みになってきた方であれば、「爪を薄くすること」が「巻き爪の改善につながる」という理屈も察しがつくことかと存じますが、一般の方にはなかなか納得がいかないことであろうと思います。

 そこで、この治療の意味合いを理解するために、

    そもそも巻き爪はどうして生じるのか

について再確認しておくことと致しましょう。


 まず大切なことは、爪には元々

    丸く巻いていく性質(傾向)がある

ということです。これは、皮膚科などの医学書にもどういうわけか記載されていないことですが、事実です。この性質があるからこそ、爪は指によく密着して生えることができるわけです。

 ですが、この性質があるため、爪の形を理想的に保つには

    爪を平たくする力が必要

であるわけです。そうでなければ、爪は際限なく丸く巻いていってしまうからです。私たちの爪が現在の形になっているのは、「爪の巻いていく力」と「爪を平たくする力」との相互作用の結果なのです。

 では、その「爪を平たくする力」とは何かと言えば、それは

    指の腹にかかる圧迫力

であり、足の指に関して言えば

    指にかかる体重

ということになるのです。

 だからこそ、指に体重のかかる機会の多い人力車夫などでは足の爪が平たくなり、逆にほとんど歩くことのない高齢者などでは巻き爪になりやすくなるのです。


 以上のことを図で改めて説明しましょう。

 指の腹に圧迫力が加わると、下の図のように、指の肉が押し上げられて爪の縁に押し上げる力が伝わります。
公開医学講座-01

この力が爪を平たくする力として働くわけです。爪の丸く巻いていく性質と、この力とが爪の形を決める要素になっているのです。

 ですから、「爪の丸く巻いていく性質」が弱い場合、もしくは「爪を平たくする力」が強い場合には、爪は平たくなり、時には反対側に反ってしまうことさえあるのです。


 このことから考えれば、巻き爪を改善するにはどうすればよいかもわかります。つまり、

    「爪の丸く巻いていく性質」を弱める

か、または

    「爪を平たくする力」を強める

かすればよいのです。

 今回とりあげる「爪甲剥削術」というのは、爪を薄く削ることによって

    「爪の丸く巻いていく性質」を弱める

処置であったわけです。

 「爪甲剥削術」がどうして巻き爪の治療手段になりうるのか、これでおわかり戴けたことでしょう。


 ですが、私はこの「爪甲剥削術」が巻き爪の治療手段として優れているとは考えていません。なぜなら、この治療法には次に挙げる二つの難点があるからです。

 一つは、

    「爪を平たくする力」がなければならない

ということです。これは考えてみれば当然のことです。なのに、実際の患者においては、この「爪を平たくする力」がほとんど期待できない場合が多いのです。つまり、足の指にかかる圧迫力がなければ「爪を平たくする力」も生じないわけで、

    寝たきり状態の人

    ほとんど歩かない人

    外反母趾の人

    ハイヒールやミュールなどをよく履く人


などでは足の指に有効な圧迫力がほとんどかからないため、「爪を平たくする力」も生じようがなく、「爪甲剥削術」をしても意味がないのです。

 もう一つの難点は、

    巻き爪の程度が軽い場合にしか効果がない

ということです。これは図で説明した方がわかりやすいでしょう。

 まず、巻き爪の程度がごく軽度で、ほとんど正常と違わないくらいであれば、下図のように爪の縁に「押し上げる力が加わり、爪が平たくなることが期待できます。
巻き爪-01
 ですが、巻き爪の程度が進行し、爪の縁が内側へ巻き込んでしまっていたら、下図のように、例えどんなに指に圧迫力を加えても爪を平たくする作用は期待できないばかりか、さらに進行してしまうことさえあるのです。
巻き爪-02
 つまり、この「爪甲剥削術」は

    ごく初期の巻き爪にしか効果がない

ということなのです。そうなると、実際に長いこと巻き爪に苦しんでいる大部分の患者にはほとんど適用できないことになってしまうわけです。


 以上の理由から、私はこの「爪甲剥削術」を単独で巻き爪の治療として行ってはおりません。もし行うとすれば、他の巻き爪治療法の補助的手段として「より容易に巻き爪を矯正するため」に施行するくらいです。実際、爪が分厚くて硬いような場合には、薄く削って変形しやすくした方が治療が早く終わることが多いのです。このような補助的処置としてであれば、この「爪甲剥削術」も有用であると言えるでしょう。

 ですが、他に何の処置もせず、ただ爪を薄く削るだけで経過観察している場合には、なかなか改善が見込めないと思われますので、もし皆さんがそのような治療を受けていらっしゃるなら、他の治療法を検討されることをおすすめ致します。


(続く)


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巻き爪の「不適切でない」治療(1) ー はじめに

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 前項で陥入爪についての「不適切でない」治療をとりあげましたので、今度は巻き爪についての「不適切でない」治療について説明していきたいと思います。

 ここで「不適切でない」という表現を使っているのは前項と同様の理由です。つまり、

   「適応・効果・費用などの点で問題があるものの、

   治療法自体は理にかなっている」


という意味合いを表しているわけです。ですから、これも前項と共通することですが、ここで紹介する治療も私は最良とは考えておりません。他にもっと優れた治療法があるからです。

 つまり、「不適切」と言うほどの問題はないにしても、これから挙げる治療は適応が限られていたり、効果が乏しかったり、費用がかさんだりするため、おすすめできるものではないのです。

 ですが、現在、一般の医療機関ではこれらの治療が当たり前のように行われていますし、医学書にも正当な治療法として記載されているのです。

 もし、皆さんがこれから挙げるような治療を受けていて、改善が思わしくないようでしたら、そのまま同じ治療を継続すべきかよく検討されることをおすすめ致します。よくわからなくて迷う場合には、「爪専門」を謳っている医療機関に相談されるのもよいでしょう。もちろん、私の「爪専門外来」でも結構です。

 では、次回から、巻き爪に対する「不適切でない」治療を紹介して参りましょう。


(続く)


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医学クイズ(1)解答

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医学クイズ(1)解答

 ヒトには頸椎が7個あり、それらのうちの第1頸椎から第6頸椎までの横突孔(横に突き出た部分(横突起)に開いている穴)には椎骨動脈が通っていますが、第7頸椎の横突孔には

   椎骨動脈が通っていないのです。

 なのに、この模型では

クイズ-01-誤-02


のように第7頸椎の横突孔にまで椎骨動脈が通っています。従って、これが間違いです。

 正しくは以下の通りです。


クイズ-01-正-02

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 2月になりましたので、予告通りに解答を掲載致します。

 残念ながら、1月中にご回答をお寄せくださった方はいませんでした。やはり、専門的すぎたでしょうか。


 解答をご覧になった方は、ことによると

   「そんな細かいこと、どうでもいいじゃないか」

とお思いかも知れません。

 ですが、これは解剖学ではしばしば問題にされることであり、実際、口頭試問などではこれに正答できないと単位がもらえないことだってあるのです。

 一般の方にとっては特に役立たないことかと存じますが、雑学としてでも記憶にとどめて戴ければ幸いです。


 なお、医学に興味のある方は、もしかすると次のような疑問をお持ちになったかも知れません。それは、

   「椎骨動脈が第7頸椎横突孔を通っていないのなら、

   その第7頸椎横突孔は何のために開いているのか?」


という疑問です。考えてみれば、当然の疑問とも言えましょう。この疑問は、次のように言い換えることもできます。

   「第7頸椎横突孔には何が通っているのか?」

 穴が開いているからには、「何かを通すために開いている」と考えるのが自然です。さて、皆さんはどう思われますか? これは、実は医師でさえ答えに困る問題なのです。


 勘のいい方なら

   「動脈でなければ静脈が通っているのではないか」

とお考えになることでしょう。ですが、これは必ずしも正解とは言えないのです。

 確かに、第7頸椎横突孔に椎骨静脈が通ってはいます。ですが、椎骨静脈の全てが通っているわけではなく、その枝の一部が通っているに過ぎないのです。ですから、例え第7頸椎横突孔がなかったとしても静脈は流れられるわけで、第7頸椎横突孔の存在理由としては説得力が弱いのです。


 これは、実は(私の知る限り)定説はないようですが、おそらくは「昔、第7頸椎横突孔にも動脈が通っていたが、進化の過程で迂回するようになり、穴だけが残存したのではないか」と考えられるのです。実際、第7頸椎横突孔の位置はかなり後方にあり、椎骨動脈がそこを通るためには後ろへ不自然に回り道をしなければなりません。そうなると、動脈に負担がかかりますし、動脈硬化などが起こると容易に狭窄・閉塞してしまうことにもなりかねません。そこで、おそらくは永い年月のうちに動脈が「近道をする」ようになっていったのではないかと考えられるわけです。



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陥入爪の「不適切でない」治療(5) ー アクリル人工爪法

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 この項の最後として、

   アクリル人工爪法

というものを挙げたいと思います。これは、アクリル樹脂にて「人工の爪」を作成するという方法であり、東禹彦(ひがし・のぶひこ)著『爪 ー 基礎から臨床まで ー』(ISBN 4-307-40038-0)という爪医学の専門書において最も推奨されている陥入爪治療法です。おそらく、東先生の「東皮フ科医院」では主にこの方法を用いていらっしゃるのでしょう。

 そこで私もこのアクリル人工爪法を

   陥入爪の優れた治療法

として紹介致したいところなのですが、残念ながらそうはいきません。東先生の『爪』という本は、他に類書のない極めて優れた医学書であり、私はこの本によって爪医学を学習することができたとさえ言えるくらい貴重なものであるわけなのですが、ことこの「アクリル人工爪法」に関する扱いだけには賛同致しかねるところがあるのです。

 私は、このアクリル人工爪法も理に叶った治療法であるとは考えています。ですが、それを実行するに当たって数々の難点があり、必ずしも優れているとは言えないため、「不適切でない」治療という位置付けにせざるを得ないのです。なぜか? それをおわかり戴くために、まずアクリル人工爪法について具体的に説明致しましょう。


 アクリル人工爪法とは、次のような方法です。


アクリル人工爪法

1.人工爪作成用のアクリル樹脂セット(ネイルケア用品売り場で入手可能)を用意する。

2.陥入爪部位の肉芽をどけるか取り除くかして、爪の縁を露出させ、その爪の下(つまり爪と皮膚との間))にプラスチックフィルムを挿入しておく。

3.アクリル人工爪を作る予定の爪の一部にプライマー(アクリル樹脂を固着させるための薬液)を塗る。

4.調製したアクリル樹脂液を爪とフィルムの上に塗り、指先までアクリル樹脂が板状に伸びるように形を整えて、硬化させる。

5.フィルムを取り除いて、でき上がったアクリル人工爪をヤスリなどで削って形を整える。


 つまり、アクリル人工爪法とは、アクリル樹脂を使って爪を指先まで延長しようという方法なのです。

 これまで、このブログで何度も言及している通り、陥入爪は爪が短すぎるために生じるものなのですから、この方法がうまく行われて爪が指先まで延長されれば、陥入爪症状は治まり、しかも見た目も美しく仕上がるという、誠にいいことずくめの方法と言えるでしょう。


 ですが、私自身は陥入爪に対してこの方法は施行しておりません。なぜなら、次に挙げるような数々の難点があるからです。

アクリル人工爪法の難点

1.手技がやや難しく習得するのに訓練を要する。

2.時間が長くかかるため、効率が悪く、外来診療に向かない。

3.アクリル樹脂セットに含まれるアクリルモノマーとプライマーにはかなりの悪臭があり、換気をよくする必要がある。また、アクリルモノマーは人体に有害であり、皮膚に大量に付着すると神経障害を起こすことがある。

4.アクリル樹脂セットは、開封すると長期間の保存が困難であり、かなり頻繁に使う状況でないと、使わないうちに劣化して無駄になってしまう。

5.手技に使うフィルムや筆、ヘラなどの用具にアクリル樹脂がついたまま硬化してしまうと除去することができないため、用具が使い捨てになりやすく、非経済的である。

6.陥入爪になった爪の縁は、肉に埋もれて水にふやけていることがほとんどであり、例えプライマーを塗ったとしても、通常の爪に対するほどアクリル樹脂が強力に固着するとは考えられない。

7.アクリル樹脂は硬化すると弾力に乏しいため、例え爪に固着しても指先に力が加わると容易に割れたり脱落したりしやすい。そうなってしまうと、また初めからやり直しになってしまう。


 以上のように、アクリル人工爪法には、実際に運用する上での障害が少なからずあるのです。


 ただ、この方法には

   仕上がりの外観が美しい

という長所もあり、その点では他の治療法よりも優れているのです。ですから、見た目に特にこだわる方にとっては最高の治療法と言えるかも知れません。もし、この方法に熟達していて、日常的に盛んに施行している医療機関であれば、受けるのも決して悪くありません。


 私自身は自分の「爪専門外来」ではこの方法を行っておりません。これから新規に爪治療を始めようという医師にも、おそらくおすすめはしないだろうと思います。

 では私はどうしているのかと言えば、見た目こそアクリル人工爪法に劣るものの、他の点ではいずれも優れている方法を採用しているのです。それは

   「溝形成法(ミゾケイセイホウ)」

という治療法です。現在、総合的に考えて、

   この方法に勝る陥入爪治療法はない

と断言できます。この「溝形成法」こそが、最も適切な陥入爪の治療法なのです。


 「溝形成法」については述べるべきことが山ほどありますので、また項を改めてとりあげようと思います。

 皆さんには、ここで挙げた数々の方法の特徴と限界をご理解され、治療法の選択にお役立てくださいますよう
お願い申し上げます。


(この項終わり)


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陥入爪の「不適切でない」治療(4) ー コットン・パッキング法

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 次に挙げるのは、

   「コットン・パッキング法」

と呼ばれる方法、つまり、陥入爪の陥入している部位に綿を詰めるという治療法です。これは、医療機関でよく行われているのみならず、患者自身が応急処置として行っていることも多い方法と言えます。


 陥入爪とは

   「爪が肉に食い込んでいる状態」

であるわけですから、爪を肉から抜き去ってやれば症状は治まります。つまり、

   爪と肉との間に隙間を作ればよい

わけです。この「コットン・パッキング法」とは、爪と肉との間に綿を詰め込むことによって隙間を作ってやろうという方法なのです。

 具体的には、綿(医療用の脱脂綿がよい)をちぎって丸め、直径5mm程度の丸玉や円柱状にして、それを爪の縁から押し込んで爪と肉との間に入るようにするのです。手技としては簡単であり、ややコツは要りますが自分でもできますし、費用もほとんどかかりません。その点では実に便利な方法と言えるでしょう。

 ですが、残念ながらこの方法も軽症例にしか効果がありません。つまり、

   適応が限られている

のが最大の問題なのです。

 陥入爪で治療を必要とするほど悪化している方の場合、大抵、爪は肉にかなり深く食い込んでいて、時には5mm以上も深く陥入していることもあるのです。そうなると、爪の縁を露出させることは極めて困難です。そんな状態で綿を詰めようとしても、自分では入れたつもりでも爪の縁まで充分に入らないことがほとんどで、意味を成さないのです。

 ましてや、中に爪棘(ソウキョク)と呼ばれるトゲ状の爪の変形などあろうものなら、綿を無理に詰めようとすることによって爪が裂けたりしてさらに悪化することも充分にあり得るのです。


 ですから、この「コットン・パッキング法」は、陥入爪のうちの初期、少なくとも爪の縁が容易に露出できる程度のものでなければ有効とは言えないのです。何度も爪の縁を切り取って凌いできたような場合にはまず使えません。

 つまり、この方法は初期の陥入爪の改善には役立ちますが、それ以外にはほぼ無効であり、むしろ陥入爪になる前の予防手段として用いるのが適切なのです。肉芽や腫脹が見られるような進行した陥入爪には、他の治療法が必要だとお考えください。もし、現在この治療法を受けていらっしゃる方で、なかなか改善しないという場合は、この「コットン・パッキング法」の適応ではない可能性が高いと思われますので、他の治療法を検討されることをおすすめ致します。


(続く)


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陥入爪の「不適切でない」治療(3) ー 爪甲周囲の軟部組織(側爪郭部)を牽引する方法(アンカーテーピング法)

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 次にご紹介するのは、一般に

   「アンカーテーピング法」

と呼ばれている方法です。ただ、これでは具体的に何をどうするのかわかりませんので、言い換えますと

   「爪甲周囲の軟部組織(側爪郭部)を牽引する方法」

ということになります。


 「テーピング」とは、元々スポーツの分野でよく行われるものであり、「テープを貼ることにより関節や筋肉を保護・固定する行為」を意味します。それを陥入爪の治療に役立てようというのが、ここで言う「アンカーテーピング法」であるわけです。

 また、テーピングはその働きによって「アンカーテープ」と「サポートテープ」の2つに大きく分けられます。「アンカーテープ」とは、「アンカー」が船の「碇(いかり)」という意味であることからもわかる通り、テープを「碇のように」皮膚に固定するために用いるものを言います。そのため、「アンカーテープ」に使うテープは強力で無伸縮性のものが多いのです。そして、この「アンカーテープ」を足場のようにして、他のテープを貼る土台として用いるわけです。「サポートテープ」は、この「アンカーテープ」に貼り付けてその場所の皮膚を引っ張り、固定する働きをさせるために使うもので、伸縮性のよいものを使うことが多いことになるのです。

 つまり、この「アンカーテーピング法」というのは、陥入爪の陥入している部位の皮膚に「アンカーテープ」を貼って固定し、その「アンカーテープ」を「サポートテープ」によって牽引する方法を意味しているのです。


 このようなテーピングにより、陥入している部位の皮膚や肉芽を爪から遠ざけるように引っ張り、陥入の程度を軽くして治そうというのが、この治療法です。

 この方法は、以前「不適切な『手術』」として紹介した「指の肉を切り取る手術」(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/35954061.html)に大変よく似ています。違うのは指に傷を残さないところくらいです。ですから、この治療法に対する評価もほぼ同じであり、

   非効果的

の一語に尽きます。その理由については、上記参照記事に詳しく説明しているので、ここでは繰り返しません。


 この治療法も、陥入爪のごく初期または陥入の程度がごく軽いものにしか効果が期待できず、しかも効果があっても一時的なものにとどまってしまう可能性が非常に高いのです。

 ですから、手術のように痛みや傷を残さない点ではマシとも言えますが、陥入爪の治療法としてはおすすめできるものではないのです。


 もし、皆さんがかかっている医療機関で、この方法を受けていらっしゃるとしたら、それが効果的であるか、また、効いていないのに漫然と継続していないかについてご検討されることをおすすめ致します。


(続く)


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陥入爪の「不適切でない」治療(2) ー 副腎皮質ホルモン製剤外用・抗菌剤併用

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 まずとりあげるのは、どこの医療機関でもごく当たり前のように行っていることであり、取り立てて「治療」というほどのものでもない医療行為です。それは、陥入爪を起こしている部位に副腎皮質ホルモン含有軟膏(*1)を塗布し、抗菌剤(*2)を併用するというものです。


 「副腎皮質ホルモン」というのは専門医学用語ではありますが、一般にも広く知られているものだと思います。この言葉をご存じない方でも、別名である「ステロイドホルモン」(または「ステロイド」)であればおそらく聞いたことがあるでしょう。

 ヒトの体には、左右の腎臓の上方に「副腎」という臓器があり、数多くのホルモンを分泌する働きをしています。その副腎は構造上、「皮質」と「髄質(ずいしつ)」とに分けられ、そのうちの「皮質」で作られるホルモン(一つだけではない)のことを総称して「副腎皮質ホルモン」と呼んでいるのです。これらのホルモンは、「ステロイド」と呼ばれる化学的構造を持つという共通点があるため、「ステロイド(ホルモン)」とも呼ばれているわけです。

 ここで副腎皮質ホルモンについて説明し始めると1冊の本になってしまいますので、ここではその効果の一つを挙げるにとどめます。それは

   「あらゆる炎症を強力に抑える」

という効果です。ここで「あらゆる」とつけた意味は重要であり、すなわちその炎症が

   生体にとって必要であろうがなかろうが

「強力に抑える」というのが、副腎皮質ホルモンの大きな特徴になっているのです。

 このような「炎症抑制作用」によって、陥入爪部位の炎症やそれに伴う肉芽などを抑えようというのが、ここで言う「治療」であるわけです。


 ただ、それだけであれば「副腎皮質ホルモン外用」だけでよいはずであり、わざわざ「抗菌剤併用」などと付け加える必要はないことになります。それを敢えて付け加えたのには、当然、それだけの理由があります。

 実は、単なる「副腎皮質ホルモン外用」だけでは、陥入爪が悪化してしまうのみならず瘭疽(ひょうそ)や全身性の炎症に発展してしまう危険性があるのです。ですから、ここで「抗菌剤の併用」がない場合には、この「治療」は

   不適切治療

と言わざるを得なくなるのです。これは一体なぜでしょうか?

 「炎症」という現象は、痛みや発熱を伴い実に不快なものでありますが、決して無意味なものではありません。中にはアレルギーや膠原病のように有害無益と言えるような炎症もありますが、大部分の場合、炎症とは

   生体を守るために外敵(細菌など)を排除する

働きなのです。だからこそ、陥入爪で皮膚に爪が食い込んでそこから細菌が入った場合に炎症が生じているわけです。

 ですから、炎症をただ闇雲に抑えるだけでは、細菌の助太刀(すけだち)をしているに等しく、病状がさらに悪化してしまうわけなのです。

 そのため、もし副腎皮質ホルモンを使用するなら、必ず、細菌に対して抗菌剤を内服するかせめて軟膏に混入して併用すべきなのです。


 ただ、ここまでお読みになっておわかりのように、この「治療」は陥入爪の原因に対しては何も働きかけていません。ただ、炎症を抑えているだけです。

 ですから、陥入爪のうちでも食い込みの程度がごく軽いもの、ほんの初期のものにしか効果は期待できません。実際、陥入爪で医療機関に訪れる方は、ある程度悪化している場合がほとんどですので、この「治療」だけで済むことはまずありません。他の治療の補助手段として用いるくらいが精々でしょう。


 それでも、一部の医療機関では、かなり進んだ陥入爪に対してもこの「副腎皮質ホルモン製剤外用・抗菌剤併用」ばかり繰り返して漫然と経過観察していることがあります。中には、「抗菌剤併用」さえしていない所さえあります。これでは、通院を続けても改善は期待できないでしょう。

 皆さんには、この「治療」の効果とその限界をお知り戴いて、陥入爪の程度が重い場合には他の治療手段が必要であることをおわかり戴きたいと存じます。

 もし、現在お受けになっている治療がこれに類するものでしたら、ぜひともよくお考えになり、場合によっては他の医療機関への相談も考慮されることをおすすめ致します。もちろん、私の「爪専門外来」でも結構です。


(続く)


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*1:

 一般に薬剤を外用(飲んだり注射したりせずに外から皮膚や粘膜に直接塗る使用法)する場合の製剤には、「軟膏」と呼ばれるものと「クリーム」と呼ばれるものとがあります。

 皆さんは、この両者の違いをご存じでしょうか? 同じようなものだとお思いではありませんか?

 実は医療関係者でさえ、この違いをよく知らない者が多いのです。

 このことは、結構重要なことですので、後で改めて記事にとりあげたいと思いますが、ここで大事なことは

   陥入爪には「軟膏」を用いる(「クリーム」は不可)

ということです。今はこのことだけ覚えておいて戴きたいと存じます。



*2:

 ここでは細菌に対する治療薬という意味で「抗菌剤」という言葉を使っています。ですが、皆さんにとっては

   「抗生剤」

とか

   「抗生物質」

という言葉の方が馴染みが深いのではないでしょうか? 

 私も「抗菌剤」という言葉はあまり耳慣れないであろうことは存じていますが、ここではそれを承知で敢えて

   「抗菌剤」

という言葉を使ったのです。

 ここでお伺いしますが、皆さんは「抗生剤」、「抗生物質」、「抗菌剤」のそれぞれの意味・違いを説明できますか? 実は、これも医療関係者(医師を含む)でさえよく知らない場合が往々にしてあることなのです。

 この問題も、説明すると長くなりますので、また改めて記事でとりあげるつもりでおりますが、ここでは

   細菌に対抗する働きを持つ薬剤の総称を「抗菌剤」と呼ぶ

ということだけ覚えておいて戴きたいと存じます。


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