新・美爪通信

 爪に関心のあるすべてのかたに贈る「爪の総合情報ブログ」です。巻き爪、陥入爪など、爪に関することなら何でもとりあげるだけでなく、時には寄り道をして、医学一般の話も加えて参ります。

陥入爪の「不適切でない」治療(1) ー はじめに

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 これまで散々、巻き爪・陥入爪に対する不適切な「治療」について述べて参りました。皆さんが爪治療をお受けになる際に、こういった「治療」を選んでしまわないよう注意して戴く意味で、最初に「避けるべきもの」を集中してとりあげたわけです。

 ですが、そろそろ

   「正直言って、もうたくさん」

と言いたい方もいらっしゃることと思います。


 そこで、今回から

   「不適切でない」

治療法に話を移していくことと致します。

 ここで「不適切でない」などという持って回った言い方をしたのには理由があります。それは、

   「適応・効果・費用などの点で問題があるものの、

   治療法自体は理にかなっている」


という意味合いを表現したかったからです。ですから、ここで挙げる治療法を受けても、以前紹介した数々の「不適切治療」を受けた場合のように悪化したり

   二度と元の状態に戻れなくなる

ということはないでしょう。

 ですが、上でも「問題がある」と言っている通り、決して

   無条件に推奨しているわけではない

ので、ご注意ください。実際、現在もこれから挙げるような治療法を盛んに行っている医療機関が結構多いので、皆さんにおかれましては、選択の際に充分にお考え戴きたいと思うのです。

 因みに、これらの治療は私の「爪専門外来」では滅多に施行致しません。もっと優れた方法を行っているからです。


 では、まず巻き爪・陥入爪のうちの陥入爪に対する「不適切でない」治療について、次回から紹介して参りましょう。


(続く)


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 爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。

  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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 また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。

                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
                             メールアドレス: miyataatsushi8@gmail.com



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私は感謝しています。

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 昨年の後半から、記事更新の頻度がめっきり落ちてしまい、このブログをご覧になっている方々に申し訳なく存じております。爪についてはまだまだ書かなければならないことが沢山あり、これからも情報提供に努めますので、どうぞ、折りに触れてお立ち寄りください。

 実際、爪に対する医療の現状は依然として貧弱としか言いようのないものです。先日も私の「爪専門外来」に新規の患者がお見えになりましたが、その方は既に2箇所もの医療機関(「爪専門」と名乗っている所も含む)を受診したにもかかわらず、状態が改善せず(むしろ悪化して)、インターネットで私の外来を検索しておいでになったのです。

 このような状況を改善するには、やはり爪疾患に対する正しい対処法を広く普及させる他にありません。そのためにこのブログがわずかたりとも役立つことを祈るばかりです。


 さて、インターネットは私もよく利用いていますが、かなり前に、このブログ『新・美爪通信』を紹介してくださっている個人のブログを拝見しました。

   『★ニックと私の1年間★』
   (http://cafe-ft-2013.way-nifty.com/nick_and_me/2013/03/index.html

というブログです。

 このブログは、ご自身が陥入爪に罹患され、辛い症状に苦しめられた経験をお書きになったもので、表題にある『ニック』とは

   「肉芽(にくげ)」

の愛称とのことでした。

 陥入爪にありがちな様々な症状・経過が記されていて、実に普遍的な内容だと思います。きっと、経験者なら思い当たることが多々あるに違いありません。

 その中でブログ管理人でいらっしゃる『CAFE f.t.』さんは、私のこのブログをとりあげて推薦してくださっているのです。

   私は感謝しています。

 いささかもったいないお言葉も戴いておりますが、このようにご紹介して戴けるのは大変ありがたいことです。また、私が消毒に対する意識を新たにする機会をくださった夏井睦(なつい・まこと)先生の『新しい創傷治療』(http://www.wound-treatment.jp/)というホームページについても触れられていて、誠に嬉しい限りです。


 このブログを励みに、これからも爪医療に関する記事を盛んに掲載していこうと存じます。


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医学クイズ(1)ヒント

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 前回、初めて「医学クイズ」というものを出題させて戴きましたが、まだどなたからも回答を戴けておりません。

 問題が漠然としていてわかりにくかったかと思われますので、ここでヒントを付け加えておきたいと思います。

 問題は、下の写真に示す「ヒトの頸部の模型」の中の間違いを探すというものでした。

クイズ-01-誤

 間違いは、実は椎骨動脈(模型の赤い部分)の走行にあるのです。写真で示すと、以下の範囲に当たります。

クイズ-01-ヒント

 この水色の楕円で示した範囲のどこかに、実際のヒトの解剖と異なる部分があるわけです。

 さて、皆さんはおわかりになりますでしょうか?

 わかった方は、どうぞコメントに回答をお寄せください。正解は予告通り、来月(平成27年2月)に掲載致します。


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医学クイズ(1)問題

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 年も明けたことですので、ここらで少し息抜きとして爪医学を離れ、医学一般に関するクイズを出題してみたいと思います。かなりマニアックで難易度が高いものもありますが、雑学としてお役立て戴ければ幸いです。


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医学クイズ(1)問題(難易度:中)

 これは人体の構造についての問題で、医学で言えば基礎に当たる分野ですが、改めて問われると医師でさえうろ覚えだったりして咄嗟には答えられないかも知れません。ですから、一般の方がもし正答できたら驚愕に値します。医療関係者(医師を含む)が答えられないことがあるとしても不思議ではないレベルだと思います(こんなことを言っていると解剖学の先生から怒鳴られるかもしれませんが)ので、皆さんにはゆめゆめ人を試す目的にはお使いにならないようお願い申し上げます。


 下の写真は製薬会社が患者への説明のために製作したヒトの頸部の模型です。

クイズ-01-誤

 模型の赤い部分は動脈(椎骨動脈(ついこつどうみゃく))を表していて、黄色の部分は中枢神経系とそこから出ている神経の枝を、白い部分は骨(頭蓋骨、頸椎)を、水色の部分は椎間板(ついかんばん)をそれぞれ表しています。

 ところが、この模型には間違いがあるのです。左右同じ部位に1箇所ずつあるのですが、一体どこが間違っているのでしょうか?
 

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 おわかりになった方は、どうぞコメント欄にお答えをお寄せください。

 解答は来月(平成27年2月)に掲載する予定です。


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私はがっかりしています。

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 私はこれまで、巻き爪・陥入爪について、主に不適切な処置・手術のことをとりあげて参りました。また、巻き爪・陥入爪のそれぞれについて、その意味するところを含めて、それらの原因から詳しく説明して参りました。

 その間、情報収集のために専門書・雑誌のみならず、インターネットを検索することも多かったのですが、実のところ、私はがっかりせずにはいられませんでした。

 このブログの前身である『美爪通信』(既に閉鎖)を始めたのは、2007年(平成19年)のことでしたが、その当時は(世間の爪に対する関心がこれほどまでに低いとは意識していなかったせいもあって)

   驚愕を禁じ得ませんでした。

 この「驚愕」は、情報に圧倒されてのものなどではなく、逆に、あまりの情報の「質の低さ」、つまり、

   いかに誤った情報がまことしやかに流通しているか

によるものであったのです。そして、それから7年も経っているにもかかわらず、その状況は未だに改善していないのです。


 これまでも繰り返し述べてきましたように一般の人々の爪に対する関心は実に低調であり、美容面からネイルアートなどがとりあげられることはあっても、爪の健康・病気に関する情報はまだまだ少ないのが現状です。

 しかも、その少ない情報でさえ間違っているものが少なくないのです。その傾向は、インターネット上においてより顕著であり、今でさえそれらの情報のうち6割以上が極めていい加減で誤った内容なのです。

 例えば、インターネットのサイトで次のような記載を見ることがあります。

   『巻き爪(陥入爪とも言う)』

   『巻き爪の進行したものを陥入爪と呼ぶ』

などなどです。いずれも

   全くの見当違い

です。これらの誤りに共通するのは、

   「巻き爪」と「陥入爪」の区別がついていない

ということです。

 このような基本的な区別がついていないとは、実に驚くべきことだと言えます。

 もっとも、爪に関心のない人からしてみれば、

   「そんなもの、どちらだって同じようなものじゃないか」

というような意識を持つのも無理はありません。私だって、爪医療に関わるようになる前は似たような感覚でいたくらいです。

 ですから、医療関係者でない一般の方(患者を含む)がブログやツイッターで書いているものなら、医学的に誤りであっても必ずしも責められるものではありませんし、読む側も鵜呑みにする危険は少ないと思いますから、私も取り立てて問題には致しません。


 ところが、ここで私が問題にしているのは、歴(れっき)とした医療機関や医師が公表しているホームページやブログの記載内容であり、しかも皮膚科や整形外科の専門家が書いているものなのです。これでは、一般の読者が

   「巻き爪と陥入爪は同じもの」

というような間違った認識を持ってしまっても不思議はありません。しかも、さらに問題なのは、そういった情報を公開している医療機関や医師が現実に「診療を行っている」ことなのです。


 これまでこのブログで述べてきましたように、巻き爪と陥入爪は

   原因からして異なる全くの別物

なのです。ですから、当然、その治療も全く違う考えで対応しなければならないはずのものなのです。

 なのに、それを「巻き爪と陥入爪は同じ」というような考えを持っているであろう医師が対処したら、一体どうなるでしょうか? 果たして適切な治療をしてもらえるでしょうか? これはもう、

   「推して知るべし」

と言えましょう。実に恐ろしいことと言わざるを得ません。


 このような情報を公開している医療機関が未だに存在し、診療まで行っているとは、私は何ともがっかりせずにはいられないのです。

 もし、皆さんが爪の治療を受けようとお考えの医療機関のサイトが、「巻き爪も陥入爪も同じ」という扱いをしているようでしたら、

   実際に診療を受ける前に

よくその内容を吟味されることをおすすめ致します。逆に、両者を明確に区別して扱っている医療機関でしたら、「かなり爪医療に詳しい」と考えてよいでしょう。ぜひとも、充分にご注意ください。


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巻き爪・陥入爪の「標準的手術」:『鬼塚法』(10) ー 結論

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 現在、日本で、そして世界でも「巻き爪・陥入爪の『標準的手術』」とされている『鬼塚法』という「手術」について、これまで長々と論じてきました。

 最後に、私が『鬼塚法』をどう捉えているか、その要点をまとめて結論とすることと致します。


 最も重要なことは次の一点に尽きます。

   『鬼塚法』は「爪の幅を狭くする手術」である。

従って、その対象は「爪の幅が広すぎる場合」

に限られる。


ということです。

 つまり、『鬼塚法』の適応とされている巻き爪や陥入爪は、決して「爪の幅が広すぎることが原因になっている」わけではないのですから、本来、『鬼塚法』の対象とすべきではないのです。

 現在、『鬼塚法』を施行されたがために生じている様々な問題(副爪、爪の変形、爪の幅が狭くなりすぎることなど)は、『鬼塚法』を適用しなければ初めから起こらなかったはずの問題であり、上に述べた原則通りに治療法を選択すれば未然に防げるものなのです。

 これまで当ブログの記事をお読みになった方であれば、きっと上記の結論に同意してくださることでしょう。


 では、なぜ、いまだに『鬼塚法』が巻き爪・陥入爪の「標準的手術」として大手を振ってまかり通っているのでしょうか?

 私が考えるに、これには大きく3つの可能性があるのです。


 一つ目は、

   『鬼塚法』が最良の治療法だと思い込んでいる

可能性です。これは、職場や先輩医師から教わったまま、何の疑問も抱くことなく『鬼塚法』を施行し続けている場合が相当します。言ってみれば、「巻き爪・陥入爪の治療に対する意識が低い状態」です。

 以前にも述べましたが、巻き爪・陥入爪といった爪の疾患は専門的に扱う医師がほとんどいないため、関心が低い傾向にあります。そのため、扱いも片手間やお座なりなものになりやすく、真剣に対応してもらえにくいのです。実際、治療に当たることの多い皮膚科や整形外科では、他に対応しなければならない疾患が山ほどあり、爪の問題に時間を割いて対応する余裕などほとんどないのが実情なのです。

 そのため、「巻き爪・陥入爪など、こじれたら『鬼塚法』を使えばいいのだ」という思考で停止してしまい、その先まで考えを巡らせる必要性を感じないでいることがあり得るのです。

 この場合には、当事者である医師が『鬼塚法』に対して問題意識を持たないことには解決の見込みはないと思われます。


 二つ目は、

   『鬼塚法』が最良でないことはわかっているが、

他によい治療法を知らない(またはできない)


可能性です。これは、一つ目の場合に比べればまだしも「意識が高い」状態と言えます。

 これは考えてみれば、実に「惜しい状態」と言えます。このような状況を改善するには、医学教育の場でもっと爪の疾患について採り上げるか、それが時間的に無理なら、せめて一般医家向けの爪治療の講習会をもっと普及させるべきでしょう。

 実際、内科が専門である私でさえ、1回の講習会と自習のみで習得できているのですから、ほとんどの医師は意欲さえあれば習得し実践できるものと信じています。


 三つ目は、

   『鬼塚法』以外の治療も施行できるが、保険適用外なので

(職場の都合で、または金銭的な理由で)行えない

可能性です。これは、爪治療に対する意識が充分に高いにもかかわらず、それを医療現場で生かせないという残念な状態です。

 現在、日本の医療保険制度では、巻き爪・陥入爪に対する『鬼塚法』などの手術は保険適用になっていますが、巻き爪に対する爪矯正治療や陥入爪に対する「溝形成法」などは適用とされていません。そのため、そういった『鬼塚法』以外の治療を行おうとしたら、赤字になることを覚悟して、報酬の低い「処置」として算定するか、または、患者の同意のもと、全額自費とするかしかなくなってしまうのです。

 ですから、そのような収益増加に逆行するような診療を職場から禁じられたり、また、患者が自費となることに同意されなかったりした場合には、不本意ながら『鬼塚法』を施行せざるを得ないことになりかねないのです。

 このような状態を根本的に解決するには、もはや保険適用範囲を広げて、爪矯正治療や「溝形成法」も保険で行えるようにしてもらう以外にありません。いつか、そのようになる日が来ることを私は願っています。


 以上述べた通り、今現在の日本ではまだ『鬼塚法』は主流の地位を占めています。ですから、背景のどのような事情があるにせよ、患者が巻き爪・陥入爪で医療機関を受診すれば当たり前の如く『鬼塚法』をすすめられる(または指示される)ことが充分に予想されます。

 私は、『鬼塚法』が現在も行われている事情について理解は致しますが、だからと言って、

   「『鬼塚法』は巻き爪・陥入爪の治療法として不適切である」

という主張を枉(ま)げることはできません。

 ですから、もしあなたが医療機関で『鬼塚法』もしくはそれに類する「手術」をすすめられた場合には、決して即決されることなく、考える時間を作って戴きたいのです。

 他の医療機関(私の「爪専門外来」でももちろん結構です)に相談されてから決定しても、決して遅くはありません。


(この項終わり)


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巻き爪・陥入爪の「標準的手術」:『鬼塚法』(9) ー 『鬼塚法』の真の適応とは?

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 これまでの記事で、巻き爪・陥入爪の「標準的手術」とされている『鬼塚法』が、実は巻き爪に対しても陥入爪に対しても決して適切でない「手術」であることがおわかりになったことと存じます。

 そうなりますと、『鬼塚法』という手術はいったい何のためにあるのかという疑問がどうしても浮かんでくることになります。「『鬼塚法』が巻き爪にも陥入爪にも適用できないとしたならば、『鬼塚法』の存在価値は皆無なのか? 『鬼塚法』が役に立つ場合はないのか?」ということです。

 この疑問に対しては、私は次のように答えます。

   「『鬼塚法』が適応となる場合はある。しかし、

それは巻き爪や陥入爪ではない」

 どういうことか、これから説明して参りましょう。


 『鬼塚法』とは「爪郭爪母楔状切除術」の代表であると述べました通り、「爪の縁を短冊状に切除して爪の幅を狭くする手術」です。つまり、『鬼塚法』の本質は一言で言えば

   「爪の幅を狭くする手術」

ということになります。となると、その適応となる場合はと言えば

   「爪の幅が広すぎる状態」

であるはずです。もし爪の幅が広すぎて困る状態であるならば、「爪の幅を狭くする」手術である『鬼塚法』はまさにうってつけの治療法となるわけです。

 では、そういう「爪の幅が広すぎる状態」を呈する場合はあるのでしょうか?


 私の知る限り、そういう場合は一つしかありません。それは、

   「ラケット爪」

と呼ばれる爪の変形です。これは生まれた時からあるもので、主に両手または片手の親指(足の第1趾に生じることもある)の爪の長さが短く、幅が広くなるという変形です。爪がラケットのようになることから「ラケット爪」と呼ばれます。遺伝によって生じるという報告もありますが、現在のところ原因は不明です。

 ただ、これは異常ではありますが、特に症状があるということはなく、本人は何の不自由も感じずに生活している場合がほとんどです。ほとんど唯一の問題は見た目の不格好さのみであり、特に女性の場合には気になる場合もあり得ます。

 もし、これを「治療」するとしたならば、『鬼塚法』によって爪の幅を狭くするのがよいということになるでしょう。

 ただ、実際には特に不自由を感じていないのですから、わざわざ手術をするには及ばないと言えるでしょう。実際、手術を受けた結果として、爪の見た目がよくなったのはよいが、指先に力が入らなくなって後悔したという例(*)もあり、むしろそのままの方がよいことが多いようです。


 他には、「爪の幅が広すぎて困る状態」というものは思いつきません。


 結論としては、『鬼塚法』が真に「治療法」として役立つ場合というのはほとんどラケット爪くらいしかないということになります。しかも、それすらも手術をしない方がよいと考えられているのです。

 ですから、将来、「爪の幅が広くなる病気」でも発見されない限り、『鬼塚法』の出番はほとんどないということになります。

 『鬼塚法』は、「爪の幅を狭くする」ことを目的とする場合のみに用いられるべき手術であり、本質的に異なる巻き爪や陥入爪に適用すべきものではないのです。


(続く)


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* : 東禹彦(ひがし・のぶひこ)『爪 ー 基礎から臨床まで ー』(2004年、ISBN 4-307-40038-0)44ページ。


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『居候(いそうろう)の原理』 ー 陥入爪治療法としての『鬼塚法』の不合理性

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『居候の原理』

 居候が家族ともめ事を起こした場合には居候を排除して家族を守るべきであるのと同様に、陥入爪においては肉芽を排除して爪を守るべきである。

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 ある日、遠い親戚に当たる男が窶(やつ)れ果てた姿でいきなり家にやってきて、

   「何か食わしてくれぇ~!」

と言うなり、玄関に倒れ込んでしまいました。

 一応、他人でもないということもあり、仕方なく家に上げて残り物を振る舞いました。ところが、男は食うだけ食っても家から出て行こうとしません。聞けば、「アパートを叩き出されて、もう帰る家がない」と言うのです。その日はもう夕方遅くなっており、やむを得ず男を空いている部屋に泊めることにしました。

 翌日早々、男の家族に連絡を取ろうとしましたが、どこもかしこも電話がつながりません。どうも、かなり前に一家離散していて、今は子供とも音信不通状態になっているようです。

 困り果てて警察に連絡しましたが、「家族なんだからそちらで面倒を見てください」と言われるばかりでした。


 そんなこんなで、とうとう男は居候となって家に居着いてしまいました。元々、一家離散に至るくらいですから怠け者で性格も悪く、しかも短気で腕力だけはあるものですから、家族は気が休まる暇がありません。

 そのうち、こともあろうに男は家族の娘に目を付けてしまい、娘に馴れ馴れしく付きまとったり、娘のいない間に部屋に入り込んで物色したりするようになりました。そして、男が夜、娘の部屋に押し入ろうとするに至って、流石に我慢も限界に達しました。


 さて、こんな場合、あなたならどうするべきだと思いますか?

 まさか、

   「男に好き放題やらせて、家族は縮こまって過ごすべきだ」

などと考える方はいらっしゃるまいと思います。当然、

   「そんな居候は叩き出すべきだ」

ということになるでしょう。


 陥入爪における爪と肉芽との関係は、丁度、この「家族」と「居候の男」との関係に例えられるのです。

 深爪をしてしまったばっかりに、爪の行く手に肉が出しゃばってくる余地を与え、その結果として爪の先端が肉に衝突して陥入爪が発生するわけなのですが、その肉は本来そこにあるべきものではなく、爪のあるべき場所に勝手に張り出してきているものに過ぎない存在なのです。つまり、陥入爪で爪が食い込んで腫れている肉芽というのは、爪からしてみれば「勝手に入って来やがった居候」のようなものなのです。


 そうなると、その陥入爪の状態を解決するためにはどうすればよいでしょうか?

 もはや爪と肉芽とがその場所に共存しえないとなった場合、そのどちらかを排除しなければならないわけですが、あなたなら、どちらを排除するべきだとお考えになりますか?

 ここまで言えば、よもや

   「肉が張り出して来られるように、爪の幅を縮めるべきだ」

などとお答えになる方はいらっしゃらないでしょう。当然、

   「肉を排除して、爪の幅を確保すべきだ」

と考えるのが正しいわけです。


 ところが、現在、陥入爪の「標準的手術」とされているのは『鬼塚法』という、「肉よりも爪を排除する方法」になってしまっているのです。

 これではまるで、家族が居候を恐れる余り、奥の部屋に引っ込んでしまうようなものです。

 なるほど、確かに陥入爪は治るかも知れません。ですが、こんな方法は

   「庇(ひさし)を貸して母屋(おもや)を取られる」

ようなもの、あるいは藤子不二雄Ⓐの漫画『魔太郎がくる!!』に出てくる『ヤドカリ一家』(*)の話のようなものです。


 爪と肉芽と、いったいどっちが大事かと言えば文句なく

   爪の方が大事

に決まっているのです。いくら陥入爪を治すためとは言え、その貴重な爪を犠牲にしてしまう『鬼塚法』という「手術」は、やはり不適切であると言う他にないのです。


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*
 『ヤドカリ一家(いっか)』というのは、本文でも述べた通り、藤子不二雄Ⓐの漫画『魔太郎がくる!!』の『うらみの119番: 不気味な侵略者』に登場する家族のことです。この家族は、たまたま知り合っただけの他人の家に図々しく上がり込んで、徐々にその家を乗っ取ってしまうという恐ろしい一家なのです。詳しくお知りになりたい方は「魔太郎がくる ヤドカリ一家」で検索してみてください(但し、胸糞注意)。

 この話は、ヒュー・シーモア・ウォルポール(Hugh Seymour Walpole) の『銀の仮面(The Silver Mask)』という小説が元になっているとのことで、有名な安部公房の『闖入者(ちんにゅうしゃ)』、『友達』も、これを元にした話だそうです。


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巻き爪・陥入爪の「標準的手術」:『鬼塚法』(8) ー 「陥入爪の治療」としても不適切(後編) ー 主客転倒

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 前回の記事で、私は陥入爪の発生原因は何かという問いに対して、一般に考えられているであろう

   「爪が皮膚のある場所に刺し込まれたから」

という意見をひとまず採用して話を進め、陥入爪を治すためには

   「爪と皮膚のどちらかをその空間から排除すればよい」

という結論を導き出しました。

 そして、現在広く行われている『鬼塚法』という「手術」は、「爪をその空間から排除することによって陥入爪を『治療』しているものである」ことを示しました。

 ここまではご諒解戴けましたでしょうか?


 ですが、以上の話の流れには一つ、大きな飛躍があることも同時に指摘したのを覚えていらっしゃいますか?

 つまり、陥入爪を起こしている部位から排除するのは爪と皮膚のどちらでもよいはずなのに、その検討もせぬまま

   「爪の方を排除すべき」

と決めつけているというおかしな点があるのです。

 ここでなぜ「排除するのが爪でなければならないのか」と問い質したとき、『鬼塚法』を施行している医師はどのように回答されるのでしょうか? おそらく、私が想像するに、

   「そんなことは自明のことだ」

というような答えが返ってくることでしょう。もしくは、「そんなこと、考えたこともなかった」とおっしゃる方もいるかも知れません。

 しかし、これは決して

   自明のことではない

のです。


 一般に、ある場所にAとBという2つのものがせめぎ合っている場合に、そのどちらかを排除しなければならないとしたら、排除するのはどちらにするべきかの判断は何によるのがよいでしょうか?

   「好きな方を残し、嫌いな方を排除する」

   「排除しやすい方を排除する」

などという考え方もあるでしょうが、最も適切な判断はと言えば

   「重要な方を残し、そうでない方を排除する」

ということになるでしょう。


 このように考えますと、陥入爪において爪と皮膚のどちらを排除すべきか判断するには、

   どちらがより重要か

によって判断すればよいことになります。

 如何でしょうか? 患者にとって爪と皮膚とのどちらが重要でしょうか?

 これはもう、考えるまでもなくあからさまにわかり切ったことです。

   爪の方が重要

に決まっています。爪は何も飾りや気まぐれでそこにあるのではなく、重要な機能を果たすために存在しているのですから。


 こう考えてきますと、『鬼塚法』でおこなっている「爪の方を排除する」という判断は甚(はなは)だおかしいということになります。つまり、『鬼塚法』という「手術」は、さして重要でもない皮膚や肉芽よりも、重要な役割を担っている爪の方を排除してしまうという不合理な「治療法」なのです。

 これを、山道での崖崩れ事故に例えて言うならば、次のようになります。

 ある山腹の道の上方で崖崩れが発生し、土砂が道に入り込んでしまったとします。その場合、復旧担当者はどうするべきでしょうか? 言うまでもなく、土砂よりも道の方が重要に決まっていますから、土砂を排除して道を温存することになるでしょう。それをもし、土砂をそのままにして、道の方を撤去するような担当者がいたら即刻クビになるのは間違いないのです。

 『鬼塚法』とは、丁度、土砂の代わりに道を撤去しようとする担当者のように、重要であるはずの爪を排除してしまう方法なのです。これが「正しい治療法」かと聞かれれば、

   断じて否

と答えるより他にありません。


 なぜこのような不合理な方法が、何の疑問も持たれることなく行われ続けてきているのでしょうか?

 私が考えるに、きっとこれには陥入爪に対する根本的な誤解または無理解があるのです。

 陥入爪の発生原因について、以前の記事(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/16044633.html)で私は「深爪が陥入爪の原因である」と述べました。これは、爪を短く切り過ぎたために爪の行く手に皮膚や肉が張り出してきて、それに爪の先端が衝突するから陥入爪が生じるということを意味しています。

 爪のある場所はもともと爪が占めていた場所であり、そこで爪は自らの役割を果たしてきているのです。その爪のある場所に皮膚や肉芽が張り出してくるから陥入爪が発生するわけです。

 ですから、陥入爪を起こしている部位というのは、本来、爪があるべき場所なのです。そこに皮膚や肉芽が出しゃばってくるから陥入爪になるのです。そうなれば、排除すべきなのは決して爪ではなく、皮膚や肉芽の方であることは明白なのです。それなのに、爪の方を排除しようとするなどというのはまさに

   主客転倒

と言う他にありません。

 『鬼塚法』に携わる医師も、一般の患者も、この陥入爪の発生原理を正しく理解していないと思われるのです。最初に、陥入爪の発生原因についての一般の意見として、

   「爪が皮膚のある場所に刺し込まれたから」

というのを挙げたのも、こういった誤解が一般に広く存在するであろうと考えられたからだったのです。このような誤解があるからこそ、

   「刺さった爪を取り除けばよい」

といった単純な発想に陥ってしまうのであろうと思われるのです。


 では、陥入爪の「正しい治療法」とはどうあるべきかと言えば、もちろん

   「爪を温存し、皮膚を排除すること」

ということでなければならないわけです。そして、現に、そういう治療法がちゃんとあるのです。

 私の「爪専門外来」では、巻き爪を伴わない陥入爪に対しては、このような「爪を温存して皮膚や肉芽を排除する」方法である「溝形成法」という治療法を施行しています。


 結論としては、『鬼塚法』という「手術」は、陥入爪に対しても主客転倒で不適切な「治療法」であるということになるのです。


(続く)


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 爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。

  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
                             メールアドレス: miyataatsushi8@gmail.com



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巻き爪・陥入爪の「標準的手術」:『鬼塚法』(7) ー 「陥入爪の治療」としても不適切(前編) ー 一見、正しいようだが

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 前回の記事で、『鬼塚法』という「手術」は、少なくとも巻き爪に対しては

   「治療」とは言えない手技である

ことがおわかりになったと存じます。

 では、陥入爪に対してはどうでしょうか? これから検証していきましょう。


 まず、「陥入爪」とはどういう状態でしょうか?

 そうですね。

   「爪が皮膚に食い込んで傷を作っている状態」

ということになります。ここまでは、恐らくどなたも異論はないことと存じます。

 では、なぜ爪が皮膚に食い込むのでしょうか?

 このように聞かれたとき、あなたはどうお考えになりますか? おそらく大部分の方がこうお答えになるのではないでしょうか。

   「爪が皮膚のある場所に刺し込まれたから」

 つまり、本来皮膚が占めていた空間に爪が「侵入」してきたせいであると考えるわけです。このようにお考えの方は、患者に限らず医師にも非常に多いと思われます。

 元々皮膚が存在していた空間に爪が入り込んで来た場合、皮膚と爪とが同じ空間に同時に存在することは不可能ですので、どうしてもどちらかが排除されることになります。そうなるとどちらが排除されるかと言えば、当然、柔らかい方が排除されるに決まっています。爪は歯や骨に次いで硬い組織なのですから、当然、皮膚よりも遙かに硬いことになります。となると、排除されるのは専ら皮膚の方となるわけです。

 もし仮に、爪よりも硬い皮膚というものがあったとすれば(そんなものはありませんが)、排除されるのは爪の方となり、爪が割れたりひしゃげたりして、陥入爪は発生しないことになるわけです。


 以上に述べたことは、爪をナイフに例えればもっとわかりやすいでしょう。

 つまり、皮膚にナイフが刺し込まれた場合、同じ空間にナイフと皮膚とが同時に存在することはできませんので、どちらかが排除されることになるわけですが、ナイフと皮膚とを比べれば明らかに皮膚の方が柔らかいので、皮膚が排除されて「刺し傷ができる」という結果となるのです。これがもし、ドイツの有名な大叙事詩『ニーベルンゲンの歌(Das Nibelungenlied)』の主人公のジークフリート(Siegfried)のように鋼のような皮膚であったならば、ナイフが刺し込まれても、ナイフの方が折れて排除される結果となるわけです。


 このように陥入爪を捉え直してみると、「陥入爪を治す」ということがどういうことであるべきかが自ずとわかってきます。

 陥入爪が起こるのは、爪と皮膚とが同じ空間に同時に存在しようとするがためであるわけですから、それを治すためには

   爪と皮膚のどちらかをその空間から排除すればよい

ということになるのです。


 ここまでわかったところで、問題の『鬼塚法』について考えてみましょう。『鬼塚法』は陥入爪を治していると言えるか否か?

 答えは明らかです。

 『鬼塚法』とは爪の食い込んでいる部分を切除する「手術」であるわけですから、陥入爪になっている空間から爪を排除していると言えます。つまり、

   『鬼塚法』は陥入爪の治療になっている

ということになるのです。この点では、巻き爪の場合と違って、いちおう合目的的であると言えます。

 現在、『鬼塚法』が陥入爪の「標準的手術」とされているのも、強(あなが)ち根拠がないわけではないのです。


 しかし、では、これをもって

   「『鬼塚法』は陥入爪の『正しい』治療法である」

と言えるかというと、そうは行きません。

 物事は、単に目的を達すればよいというものではなく、そのための手段が適切か否かの評価も必要なのです。


 私は上でこう結論づけました。陥入爪を治すためには

   爪と皮膚のどちらかをその空間から排除すればよい

と。ですが、ご注意ください。私が決して

   爪をその空間から排除すればよい

と言っているのではないことに。

 つまり、排除するのは爪でも皮膚でもよいのです。そうであれば、まず「どちらを排除するのがより適切なのか」を検討するのが筋というものです。

 『鬼塚法』は、その問いを素通りして、「排除するのは爪の方である」と決めつけている方法なのです。


 果たして、排除されるべきなのは本当に爪の方なのでしょうか?

 ここに大きな問題があるのです。


(続く)


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