新・美爪通信

 爪に関心のあるすべてのかたに贈る「爪の総合情報ブログ」です。巻き爪、陥入爪など、爪に関することなら何でもとりあげるだけでなく、時には寄り道をして、医学一般の話も加えて参ります。

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 連載記事『消毒について』の途中ですが、ここで重大なお知らせがあります。

 このたび、平成25年10月31日をもって livedoor メールが終了するということになりました。

 そのため、これまで私への問い合わせ先として使用していたメールアドレスも本年10月末で使用できなくなります。


 そこで、私へのメールアドレスを下記の通り変更致しますので、今後は新しいアドレスへご連絡戴きますようお願い申し上げます。

   旧メールアドレス : miyataatsushi@livedoor.com

   新メールアドレス : miyataatsushi8@gmail.com



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消毒について(5) ー 消毒についての3つの神話

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 これまで、長きにわたって消毒薬の性質・作用について説明して参りました。やや専門的な内容にも踏み込んでいるので、些か難しい印象を持たれた方もいることでしょう。

 ですが、これも「消毒するということ」が本当はどういうことなのか理解して戴くためには、ぜひとも必要なことなのです。

 と言いますのは、世間一般(いや、医療界においてさえ)における「消毒」のイメージが、あまりにも事実とかけ離れている現状があるからです。

 皆さんは、「消毒」と言うとどのような印象をお持ちになりますか? 恐らくは、「傷から有害なものを取り除き、傷の治りを速めてくれる」というような感覚をお持ちなのではないでしょうか?

 ですが、残念ながらそれは

   幻想

に過ぎないのです。私が長々と消毒薬について説明してきたのも、世間一般に広まっているであろうこの幻想を打破するための予備知識を得て戴くためだったのです。

 それでは、いよいよ「消毒」の本当の意味を明らかにして、これまで抱かれていた「消毒」の認識が誤りであったことをご納得戴くことにしましょう。


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 一般に、「消毒」について皆さんが感じていらっしゃる効果というものは、おおよそ次の3つにまとめることができます。

  1.消毒は傷をキレイ(清潔)にする

  2.消毒はバイ菌(細菌)だけを殺す

  3.消毒は傷の治りを速める


 だからこそ、みんな自ら消毒薬を買い求め、痛いのを我慢して消毒を繰り返しているわけです。

 ところが、これらは

   全て間違い

なのです。これらには何の根拠もなく、言わば医学における

   神話

でしかないものなのです。

 事実はむしろ逆であり、本当は

   消毒は傷を化学物質で汚染する

   消毒はバイ菌だけでなくヒトの細胞も殺す

   消毒は傷の治りを妨げる

と言うべきなのです。


 では、これは一体どういうわけなのか、これから順番に説明して参りましょう。


(続く)


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消毒について(4) ー 消毒薬(後編) ー 蛋白質を冒すもの

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 では、消毒薬の最後として、これまでの分類に当てはまらない「その他のもの」について説明致しましょう。


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3.主に蛋白質を冒すもの(その他のもの)


 ここでとりあげる消毒薬は、アルコールと界面活性剤以外の全てです。

 代表的なものを挙げれば、次の通りです。

   過酸化水素水(オキシフル® など)

   マーキュロクロム水溶液(マーキュロクロム®、いわゆる「赤チン」)

   クロルヘキシジングルコン酸塩(ヒビテン® など、いわゆる「白チン」)

   ヨードチンキ(いわゆる「ヨーチン」)

   ポビドンヨード(イソジン® など)



 これらの消毒薬はその作用こそ違いますが、どれも「蛋白質を冒す」という点で共通しています。

 ただ、「蛋白質を冒す」と言っても、実際のところどういうことなのかを正しく理解して戴くにはかなり長い説明を要すると思われます。

 そこで、この「蛋白質を冒す」作用の説明の前に、上に挙げた消毒薬について少々説明を加えておきましょう。


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 過酸化水素水は過酸化水素(H2O2)の水溶液であり、過酸化水素が分解してできる酸素が主に蛋白質などに結合することによって効果を現します。過酸化水素は酸素を放出するとただの水(H2O)になりますので、後には何も有害物質が残りません。作用は弱いのですが、消毒薬の中で「後に有害物質を残さないもの」はこれ以外にありません。

 マーキュロクロム水溶液は「赤チン」と呼ばれ、昔はよく見かけたものです。ですが、水銀化合物であるため、製造過程で水銀を含む廃棄物が出ることから、現在、国内での製造は中止されており、輸入材料から作られたもののみが販売されています。マーキュロクロムが放出する水銀イオンが主に蛋白質に作用して効果を現します。通常の使用では水に流されやすいため毒性は低いのですが、沃(ヨウ)素イオンと一緒になると沃化第一水銀(後に分解して、金属水銀と沃化第二水銀に変化する)や沃化第二水銀を生じ、不溶性となって傷に残留して腐食の原因となるため、沃素を含むヨードチンキやポビドンヨードと併用してはいけません。

 クロルヘキシジングルコン酸塩は通常無色透明なので「赤チン」に対して「白チン」とも呼ばれる消毒薬です。これも主に蛋白質に作用します。

 ヨードチンキは沃化カリウム水溶液に沃素を溶かし(沃素は水に溶けないため)、アルコールを加えたものです。ポビドンヨードは沃素を含む化合物で、どちらも沃素イオンを放出して、その沃素イオンが主に蛋白質に結合することによって効果を示します。ポビドンヨードの方が刺激が少ないので、よく使われます。上にも書きましたが、マーキュロクロム(「赤チン」)と併用してはいけません。(なお、ヨードチンキは「チンキ」と呼ばれてはいますが、「チンキ」とは「生薬の有効成分をアルコールで抽出したもの」を指す言葉なので、厳密には「チンキ」ではありません。また、「赤チン」や「白チン」の「チン」も「チンキ」を略したものですが、これらもただの水溶液ですので「チンキ」ではありません)


 つまり、これらの消毒薬は全て「主に蛋白質に作用すること」によって効果を現しているわけです。


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 さて、それぞれの消毒薬についておおよそご理解戴いたところで、いよいよ、「蛋白質を冒す」とはどういうことなのかについて説明して行きたいと思います。


 まず初めに、

   そもそも「蛋白質」とは何か

について考えてみましょう。

 私が考えるに、この「蛋白質」というのはあまりいい名前ではありません。これは「卵の白身」から来た言葉ですが、これですと本来の蛋白質の働き・重要性がうまく伝わらないからです。

 皆さんは如何でしょうか? きっと「蛋白質」と聞いて思い浮かべるのは「卵の白身」とか「筋肉」や「皮膚」を造っている、コラーゲン、ケラチンなどのいわゆる

   構造蛋白

ではないでしょうか?

 もちろん、これらの構造蛋白も生物が生きていく上で欠かすことのできない重要なものであることは間違いないのですが、これは「蛋白質」の働きの「ほんの一面」に過ぎないのです。

 実は、「蛋白質」は

   「全ての生命の源(みなもと)」

とも言える最も重要な物質であり、生物を形作っている他の物質はほとんど全てが「蛋白質」の働きによって生み出されたものなのです。ですから、生命は「蛋白質」なしには一瞬たりとも存続しえないのです。


 ここで、学校で教わった生物学の知識を思い出してみてください。

 蛋白質とは、20種類以上あるアミノ酸という物質が一列に幾つもつながってできています。そのアミノ酸の種類・配列によって、多種多様な蛋白質が生じるわけです。

 難しいことは省きますが、生物は DNA(デオキシリボ核酸)というものを持っており、それにはその生物の体を造り出すのに必要な情報が含まれています。 DNA に記録された情報はまず mRNA(伝令RNA)という短い RNA(リボ核酸)に写し取られ、それを基にアミノ酸の種類・配列が決定され、蛋白質が合成されます。

 ここで大事なことは、脂肪だの糖だのが造られるより先に

   まず最初に蛋白質が造られる

ということです。

 そして、そのようにして造られた蛋白質のあるものは酵素として働き、脂肪だの糖だのといった他の成分を造り出すことになるのです。

 ですから、蛋白質がなければ、脂肪や糖といった他の成分も一切造られなくなるわけです。

 いかに蛋白質というものが重要なものであるか、よくおわかりになったでしょう。


 上で説明した通り、蛋白質とは

   数多くのアミノ酸が連結しているもの

です。そして、そのアミノ酸の数は数個から数十・数百に及ぶため、蛋白質の分子はとても大きいのが普通です(こういう大きい分子のことを「高分子(こうぶんし)」と呼ぶ)。

 このような高分子になると、その形は非常に複雑となります。単純に考えればアミノ酸が一列につながった紐状になりそうですが、実際にはそういう形で存在することは滅多にないのです。なぜなら、アミノ酸には「プラスやマイナスの電気を持ったもの」や「親水性のもの」や「疎水性のもの」など様々な性質の違いがあり、それが分子の形に大きな影響をもたらすからです。

 具体的には、電気的な力(プラス同士・マイナス同士は反発し、プラスとマイナスは引き合う)が作用し、疎水性のもの同士が集まる傾向も加わり、ある特別な形となるのです。これを蛋白質の

   立体構造

と呼びます。

 この立体構造は、蛋白質がその役割を果たす上で必要不可欠なものです。ですから、例えアミノ酸配列が変化しなくても、立体構造が変わってしまうと、もうその蛋白質は本来の働きをすることができなくなってしまうのです。


 これは、水(H2O)やエチルアルコール(CH3CH2OH)のような小さい分子(こういうのを「低分子(ていぶんし)」と呼ぶ)には見られない現象です。低分子ならば、分解や結合が起こらない限り、その性質が失われることはないと考えられますが、蛋白質のような高分子では、例え分解や結合などの化学反応が起こらなくても、立体構造が変化するだけで、その性質が失われてしまうのです。

 このように、化学反応が起こったわけでもないのに、立体構造が変化したためにその性質が失われることを蛋白質の

   変性(へんせい)

と呼びます。


 このように、蛋白質は変性、つまり立体構造の変化だけで役に立たなくなってしまい得る、極めて

   脆(もろ)い

性質を持っていることをよく理解して戴きたいと思います。


 さて、ここまで長々と説明してきたのは他でもありません。

 「蛋白質を冒す」ということの意味を正しく理解して戴きたいがためです。

 このように、蛋白質というものは、生体にとって最も大事な成分であると同時に、非常に不安定で損なわれやすい物質であるわけです。

 そのため、分解や結合などの化学反応が起こればもちろんのこと、例え起こらなくても、変性をきたすだけで、蛋白質はその機能を失ってしまうのです。

 「蛋白質を冒す」とは、蛋白質を分解するとか、何かを結合させるだけでなく、変性させることをも含めて言っている言葉であったわけなのです。


 既に述べましたように、蛋白質の立体構造はアミノ酸の電気や疎水性といったもので成り立っているため、ごく一部でも何か結合するだけで電気や疎水性のバランスが崩れ、大幅に立体構造が変化してしまう可能性があります。いやそれどころか、何も結合しなくても、何か電気を持ったものが近づいたり、疎水性の分子に囲まれたりするだけで容易に構造が変わってしまい得るのです。

 ここでとりあげた消毒薬は、酸素を結合させたり、電気を持ったイオン(水銀イオン、沃素イオンなど)を放出することによって、蛋白質に化学変化を起こしたり変性させたりして、その機能を失わせ、細菌を殺すというわけです。


 ですが、ここで改めて言うまでもなく、蛋白質を持っているのは何も細菌だけではありません。

 およそ地球上の全ての生物は蛋白質の存在の上に成り立っているのです。もちろん、ヒトだって例外ではありません。

 そうなると、結局のところ、ここで挙げた消毒薬も

   全ての生物にとって害毒となる

ことに変わりはないということになるのです。


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 いかがでしょうか?

 消毒薬を、その作用から3つに分類して説明して参りましたが、結論としては、

   全ての消毒薬は細菌に対してだけでなく、

全ての生物の細胞に対して害毒となる

ということとなるのです。


 では、このような性質を持つ消毒薬を使って、「細菌を(ヒトの細胞を殺さない程度に)殺す」などということが、果たして可能なのでしょうか? 可能なのであれば消毒という行為に意味を見出すことができますが、もし不可能であるとしたら、消毒はまさに

   有害無益な行為

と断ぜざるを得ません。

 次回から、この点をさらに突き詰めて行きましょう。


(続く)


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消毒について(3) ー 消毒薬(中編) ー 細胞膜を溶かすもの

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 消毒薬について説明を続けましょう。


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2.主に(細胞を包んでいる)膜を溶かすもの(界面活性剤)


 これは、一般には「消毒薬」とはあまり見なされていませんが、実際には消毒目的で頻繁に使われているものです。

 具体的な消毒薬の例としては、

   ベンゼトニウム塩化物(ハイアミン® など)

   ベンザルコニウム塩化物(オスバン®ヂアミトール®ウェルパス® など)

   アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩(テゴー51® など)

がこれに当たります。


 「界面活性剤」と言うと耳慣れず難しく感じられますが、意味としては「水と油を混ざりやすくする物質」ということであり、より正確に言うと

   親水性物質と疎水性物質を均一化する物質

ということになります。ここで言う「親水性物質」とは「水になじむもの」という意味で、代表的なものはもちろん

   水そのもの

です。そして、「疎水性物質」とは「水を弾くもの」という意味で、代表的なものは

   

ということになります。

 日常生活で見る界面活性剤の例としては、

   石鹸・洗剤

が代表的なものです。これらは、疎水性物質である垢や油汚れを水に溶け込ませることによって「落とす」役割を果たすわけです。


 ただ、一般的に使われる石鹸・洗剤の大部分は陰イオン性(マイナスの電気を持つ)界面活性剤なのですが、消毒薬として用いられるのは陽イオン性(プラスの電気を持つ)界面活性剤かまたは両性(プラスとマイナスの両方の電気を持つ)界面活性剤であるという違いがあります。また、あまり使われませんが非イオン性のものもあります。

 一般に、陰イオン性の方が汚れを落とす効果が強いためにそうなっているのですが、一部では陽イオン性のものも使われており、これは陰イオン性と逆の性質を持っているため

   「逆性石鹸」

とも呼ばれます。つまり、消毒薬としてよく用いられるのは「逆性石鹸」であるとも言えるのです。(これらの陰イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤とは、水中で結合して効果を打ち消してしまうため、混ぜて使ってはいけません。)


 陽イオン性界面活性剤が「消毒薬」として使われる理由としては、細菌を構成する蛋白質がマイナスの電気を持っていることが挙げられます。通常、このマイナスの電気はヒトの白血球から細菌自身を守るために役立っているのですが、陽イオン性界面活性剤はマイナスの電気に引かれる性質があるため、細菌にくっつきやすく、細菌の蛋白質を冒す(正確に言えば「変性させる」)ことによって細菌を殺すと考えられているのです。

 ただ、ここで注意しなければならないのは、蛋白質がマイナスの電気を持っているのは

   細菌だけではない

ということです。他の細胞、もちろんヒトの細胞も含めた全ての細胞にも蛋白質があり、これらもやはりマイナスの電気を持っているのです。

 ですから、陽イオン性界面活性剤のこの殺菌作用は、決して細菌に対してのみ発揮されるわけではなく、当然、ヒトの細胞にも悪影響をもたらすことになるのです。

 ここでは、これ以上蛋白質に対する作用については触れませんが、この作用においても、前項のアルコールと同様に

   全ての生物の細胞にとって害毒となる

と言えることを覚えておいて戴きたいと思います。


 さてここで改めて、一般に界面活性剤が生物の細胞に及ぼす作用を考えてみましょう。

 まず、界面活性剤とはそもそも何だったでしょうか?

 そうです。

   親水性物質と疎水性物質を均一化する物質


のことでしたね。では、界面活性剤はどのようにしてこの役割を果たしているのでしょうか?


 界面活性剤は、下の図1に示すように、親水性の部分と疎水性の部分とを一つの分子に併せ持つ構造をしています。

界面活性剤の分子




















このように、親水性の部分のことを「親水基(しんすいき)」、疎水性の部分のことを「疎水基(そすいき)」と呼びます。

 このような構造を持つ界面活性剤の分子を水に溶かすと、次の図2のようになります。

界面活性剤の水溶液


























 つまり、疎水基は水から離れようとするため、最初は水面に並んで疎水基を水上に出す形で溶けますが、ある濃度以上になって水面に並び切れなくなると、水中で疎水基を中心に向けた球状の「ミセル」と呼ばれる構造を作り、できるだけ疎水基を水に触れさせないような状態となるのです。界面活性剤を水に溶かすと、このようにミセル化した界面活性剤の分子の塊が沢山できることとなります。

 油汚れに界面活性剤を作用させると、この「ミセル」の中心部に油性成分が包み込まれた形で水中に分散するので、「よく落ちる」ということになるのです。


 一方、ヒトや細菌を含む全ての生物は細胞でできており、その細胞には必ずその表面を包む膜があります。これを

   細胞膜

と呼びます。この細胞膜は細胞の中と外とを隔てている重要な存在であり、もしこれがなかったり破れたりしたら、細胞の中身がみんな外へ流れ出てしまい、細胞は生きていられなくなります。

 これだけ重要な細胞膜なのですから、さぞかし強靱な構造をしているのだろうと考えたいところですが、現実はそうではありません。

 実は、細胞膜はほとんどの場合、下の図3に示すような「脂質二重層」というつくりになっているのです。

細胞膜の構造
























 つまり、界面活性剤の分子とよく似た「燐脂質(りんししつ)」という脂肪の種類の分子がただ二重に並んでいるだけなのです。この構造は、「疎水基をできるだけ水に触れさせないようにする」ことによってのみ安定化され、維持されている極めて「脆い」構造であり、例えて言うならば

   薄い油の膜

でしかないものなのです。


 では、このとても脆い油の膜でしかない細胞膜に、界面活性剤がふりかかってきたらどのようなことが起こるでしょうか?

 界面活性剤とは「水と油とを均一化する物質」であるわけですから、これが細胞膜に作用したらどうなるかは容易に想像がつくでしょう。

 そうです!

界面活性剤が細胞膜へ及ぼす作用




































 上の図4のように、細胞膜を作っていた燐脂質は界面活性剤に「溶かされて」しまい、膜構造は簡単に破壊されてしまうのです。恐ろしいことだとは思われませんか?

 つまり、界面活性剤は細胞膜を溶かして細胞を瞬時に死に追いやる危険な物質に他ならないのです。


 実際、生物学の実験で細胞を溶かして中身の分析をしようとする時にSDS(Sodium Dodecyl Sulfate :ラウリル硫酸ナトリウム)という薬品を使いますが、これは強力な界面活性剤なのです。私も使ったことがありますが、実験で培養している細胞が入った容器にSDSを入れると、瞬く間に細胞は影も形もなくなり、ドロドロの液体になってしまうのです。


 こんなことを言うと、ことによると

   「じゃあ、なぜ石鹸で手を洗っても手が溶けないのか?」

と思われるかも知れませんが、これは、皮膚の表面が界面活性剤を通さない角質層で覆われているからなのです。


 ですから、本来は体の表面には出て来ないはずの皮下組織などに界面活性剤がかかったら、おそらく細胞が溶けるのは避けられないでしょう。

 つまり、この界面活性剤も、アルコールと同じく、

   細菌に対してだけでなく、全ての

生物の細胞に対して害毒となる


ものなのです。


(続く)

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消毒について(2) ー 消毒薬(前編) ー 水を奪うもの

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 「消毒は、全ての傷にとって有害である」というのが私の主張です。

 この主張は、これまで信じられてきた

   傷は消毒するのが当たり前

という「常識」に真っ向から逆らうものであり、大いに反発を招くものと予想されます。

 しかし、この主張は決して私が言い出したことではなく、練馬光が丘病院 傷の治療センター にご勤務の夏井睦(なつい・まこと)先生がすでに盛んに講演・出版を通じて訴えていらっしゃることなのです。私も、爪の治療を学ぶ過程で夏井先生のご著書に出会い、それから自分なりに検討した結果、現在のような信念を持つに至っているのです。

 夏井先生は、一貫して「消毒とガーゼは傷にとって害悪である」との主張を繰り広げていらっしゃいます。その内容は同先生のサイト『新しい創傷治療』(※閲覧注意:実際の傷の写真がありますので、血を見るのが苦手な方はご注意ください)http://www.wound-treatment.jp/) に収められていますが、極めて膨大で多岐にわたり、とても一日では読み切れないほどです。

 私の主張もほとんどが夏井先生のご著書から得た情報の焼き直しに過ぎませんので、上のサイトを熟読して戴ければもうそれで充分なのですが、時間のない方、及び血が苦手な方のために私なりのまとめをご覧戴くのも意味があるものと存じます。

 そこで、この項では傷に対する「消毒」の意味に絞って解説して参ることと致します。


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 「滅菌」や「消毒」に用いられる手段は大きく4つに分類することができます。それは、

   A.高熱

   B.放射線

   C.気体薬剤

   D.液体薬剤

の4つです。

 ですが、これら4つの手段のうち人体に「消毒」として用いられ得るものはと言えば、D.の液体製剤による方法しか考えられません。なぜなら、A.ではやけどをしてしまいますし、B.では皮膚・眼の障害が起こりますし、C.では肺が冒されてしまうからです。

 そういうわけで、これからは「消毒」と言えば専ら液体薬剤、つまり(いわゆる)「消毒薬」によるものに限って話を進めることと致します。


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 「消毒薬」(人体の消毒に用いられる液体薬剤)が傷に使われたときに、どのような現象が起こって、どのような結果が生じるかを考えるためには、「消毒薬」そのものについての知識(そして微生物についての知識)が不可欠です。

 そこで、まず最初に「消毒薬」はどのようなもので、どういう働きで「消毒」をしているのかについて説明しておきたいと思います。


 現在、日本で使われている「消毒薬」は、その作用の仕方によって大きく3つに分類することができます。

   1.主に水を奪うもの(アルコール)

   2.主に(細胞を包んでいる)膜を溶かすもの(界面活性剤)

   3.主に蛋白質を冒すもの(その他のもの)


 では、これらのそれぞれについて説明を加えましょう。


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1.主に水を奪うもの(アルコール)


 これは誰もが知っている消毒薬の定番です。医療機関でも、注射や採血などの際に盛んに使われるものです。

 水とよく混じるアルコール(こういうものを「低級アルコール」と呼ぶ)であれば、特にどれでも構わないのですが、万一口に入ったりした場合を想定して、人体に毒性の低いエチルアルコール(エタノール)とイソプロピルアルコール(イソプロパノール)が主に使われます。メチルアルコール(メタノール)は毒性が高く、誤って飲むと体内で蟻酸(ぎさん)という毒に変化し、眼に障害を起こします(そのため、

   「目散る(メチル)アルコール」

とも呼ばれる)。


 これだけ広く使われているアルコールですが、なぜこれが消毒薬として作用するのかとなると、詳しくご存じの方は少ないと思われます。まさか

   バイ菌が酔いつぶれるから

などということはないでしょうし、どういう仕組みでアルコールは菌を殺滅するのでしょうか。


 アルコールは触れた物質から水を奪う性質があり、そのため細菌などの細胞の水分が奪われ、干からびて死に至ることになるのです。しかも、この性質は純アルコールよりも80%くらいの水溶液の方が強いのです。

 そのため、一般の消毒用アルコールには少し水が加えられているのが普通です。これは「水増し」しているのでは決してなく、アルコールの殺菌作用をより強めるためなのです。


 このことから考えると、このアルコールの作用は決して細菌に対してのみ殺滅作用を及ぼすわけではなく、原則として

   全ての生物の細胞に対して害毒となる

ものであることがわかります。なぜなら、細胞には必ず水分が含まれているからです。

 ということは、ヒトの細胞に対しても同様の悪影響を及ぼすわけで、実際、アルコールを使いすぎると手がガサガサに乾燥してしまいます。それでも皮膚は比較的乾燥に強いからいいのですが、傷ともなると普段は表面に出て来ない血球細胞や皮下組織がむき出しになっているため、もしアルコールがかかったらたちまち水分を奪われて死んでしまうでしょう。だから、傷にアルコールが入ると「染みて痛い」のです。

 この「細菌に対してだけでなく、全ての生物の細胞に対して害毒となる」という点は極めて重要ですので、ぜひともお忘れにならないようご留意ください。


(続く)

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消毒について(1) ー そもそも「消毒」とはどういうことか?

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 前回まで、「消毒」という処置が陥入爪の「治療」として不適切であることを説明してきましたが、皆さんは納得されましたでしょうか?

 少なくとも、「消毒」が陥入爪の原因を改善するものでないこと、そして、根本的解決のためには無力であることにはご同意戴けたものと存じます。

 ですが、実はこれでもまだ言い足りない面があるのです。と言いますのは、「消毒」という行為は陥入爪にとって無意味であるだけではなく、本当は

   全ての傷にとって無意味である

いや、それどころか

   無意味を通り越して有害である

とさえ言えるものだからです。


 私がこんなことを言いますと、きっと

   「そんな馬鹿なことがあるか!」

   「じゃあ、今まで傷を消毒してきたのは一体何だったんだぁ!」

というようなご意見があちこちから噴出することでしょう。いや、もしかするとこの程度にとどまらず

   「専門外のくせに何をほざくか!」

といったお叱りさえ受けるかも知れません。


 ですが、これは誰もが認めざるを得ない「事実」となりつつあることであり、いかにこれまでの「常識」に反することであっても、断じて枉(ま)げるわけには行かないのです。


 前回までの記事では陥入爪が主題であったため、「消毒」そのものの意味合いについてはあまり立ち入って述べることができませんでした。そのため、大多数の方が抱いていらっしゃるであろう

   「消毒をして何がいけないの?」

とか

   「消毒もしないよりはした方がいいんじゃないの?」

とかいった疑問に対して充分に答えられなかった嫌いがありました。


 そこで、話題が爪からは離れますが、ここで「消毒」について改めて説明し、その問題点を明らかにしておきたいと思うのです。これをお読みになれば、もはやあなたもむやみに傷を消毒しようとはしなくなるに相違ありません。


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 まず初めに、「消毒」とはそもそもどういう意味でしょうか?

 私が思うに、この「消毒」という言葉は大いに誤解を招くものであり、あまりよい用語とは言えません。「消毒」と言うと、いかにも「悪いものを消し去ってくれる」というようないいことずくめのことみたいに感じられるのに、実際はまるで違うからです。


 余談になりますが、私が大学で微生物学を学んでいた時には、「消毒」とは試験の当落をも左右するとても重要な概念でした。一般には、「消毒」と言えば「菌を殺すこと」でいいと思いますが、専門用語としてはこの説明では不充分なのです。なぜなら、これですと「滅菌(めっきん)」との区別が付かなくなるからです。

 専門的には、「滅菌」とは

   全ての微生物を殺滅すること

を言い、「消毒」とは

   人畜に特に有害な微生物を殺滅すること

を表すものとされ、厳格に区別されています。また、「殺菌」という言葉もありますが、これは「消毒」と同じ意味を指すものとされます。

 つまり、「滅菌」と言った場合にはいかなる細菌も一つ残らず殺さなければならないのに対して、「消毒」(もしくは「殺菌」)と言った場合は残っている菌がいてもいいのです。

 実際には「滅菌」をするのはとても大変で、細菌には色々な種類があり、環境への適応能力も様々ですから、これらを「全て殺滅する」となると、とてつもない猛毒(エチレンオキサイドガスなど)を使うか、さもなければ高温(120℃以上)や放射線(γ線など)を用いなければなりません。

 従って、人体に対して行う行為としては「滅菌」などということは不可能であり(すればヒト自体が「殺滅」される)、できても「消毒」がせいぜいであることがおわかりになるでしょう。

 つまり、「消毒」という行為は「菌を殺すこと」ではありますが、こと人体に関する限り、

   「菌を(人体を殺さない程度に)殺すこと」

とならざるを得ないのです。


 ところが、改めて考えてみますと、「菌を殺す」ということはすなわち

   「菌にとって害毒である」

ということでもあります。そうでなければ菌が死ぬわけがないからです。そうなると、「菌にとって害毒である」ものは他の生物にとっても害毒であると考えるのが自然です。となれば、人体にとっても害毒になるであろうと否が応でも推察せざるを得ません。

 そうなると、上で述べたような「菌を(人体を殺さない程度に)殺す」などということが、そもそも可能なのかどうか考え直さなければならなくなってきます。


 最初に述べた、「(全ての)傷に対して、消毒は無意味を通り越して有害である」という主張は、まさにここから導き出されて行くのです。


(続く)

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巻き爪・陥入爪の不適切な「治療」(12) ー 消毒(後編) ー 消毒は(陥入爪によって起こった)傷を改善しない

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 前回の記事では、「消毒」という処置が陥入爪を改善しないことを説明しました。

 では、残るB.の条件「消毒は(陥入爪によって起こった)傷を改善する」が満たされるかどうか考えてみましょう。


 まず、明らかにしておかなければならないことは、そもそも「消毒」とはどういうことであり、どういう目的で行うことなのかということです。

 通常、消毒とは「バイ菌を殺すこと」と考えられています。厳密には「(主に人体に有害な)細菌を殺す」と言うべきですが、おおよその理解としては

   「菌を殺すこと」

でよいでしょう。

 つまり、傷を消毒するということは「傷の中の菌を殺すこと」を目的として行うものであり、それ以上のものではないのです。


 一方、陥入爪の傷は何が原因で起こっているのでしょうか? どうしてなかなか治らないのでしょうか?

 それは、これまでにも繰り返し述べてきている通り、

   爪が皮膚を突き破っているから

です。


 ここで重要なことは、陥入爪の傷の原因には

   バイ菌は関与していない

ということです。


 もし、陥入爪の傷がバイ菌のせいで起こっているものなら、バイ菌を殺すことによって改善が見込めるかも知れません。ですが、実際はそうではなく、爪が食い込んでいるために傷になっているわけですから、仮にバイ菌を完全に殺して無菌状態(現実には不可能ですが)にしたところで、傷は治りません。バイ菌が傷を起こしているわけではないのですから。

 つまり、バイ菌は傷の悪化要因ではあっても、決して傷の根本原因ではないのです。従って、菌を殺すことしか効果のない「消毒」は、

   傷の原因を改善し得ない

ことになるのです。しかも、化膿している傷を消毒しても、それだけでは化膿を抑えることすらままならず、爪という「異物」を除去しない限り改善は見込めないのが現実なのです。


 そうなると、B.の条件も成り立たないという結論になり、結局、A.、B.両方の条件が共に満たされないことになります。

 これでは、消毒が陥入爪に対して「メリットがある処置」とは到底言えません。しかも、こんな「処置」でも医療行為として行われる以上、通院の必要が生じ、医療費も発生します。その上、消毒の際に染みて痛いともなれば、

   メリットがないどころか、デメリットばかり

ということになってしまうのです。


 以上が、私が「陥入爪に対して消毒は無意味である」と主張する理由です。


 実際、陥入爪で例え化膿して腫れていても、本来の治療である「爪を傷から離す方法」を行えば、消毒などしなくても自然に治ってしまうことがほとんどなのです。


 皆さんも、もし陥入爪で漫然と消毒だけ繰り返すような「治療」を受けていらっしゃるとしたら、それが本当に改善につながるものなのかどうか熟慮されることをおすすめ致します。

 私の爪専門外来でも相談を受け付けておりますので、ご興味のある方はどうぞご連絡ください。


(この項終わり)

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巻き爪・陥入爪の不適切な「治療」(11) ー 消毒(中編) ー 消毒は陥入爪を改善しない

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 消毒という処置は陥入爪に対して何のメリットもない無意味な行為であると述べました。

 これをお読みになった方の中には、ことによると

   「それはいくら何でも言い過ぎではないか」

というような感想をお持ちになった人もいるのではないでしょうか?

 ですが、言い過ぎではないのです。こと陥入爪については、消毒という処置は

   何の価値もない無駄な行為である

ときっぱりと言い切れるのです。いやそれどころか、

   無意味を通り越して有害である

とさえ言えるのです。


 ここまで言うからには、当然それなりの根拠があります。それをこれから説明して参りましょう。


 まず、仮に消毒という処置が陥入爪に対して「意味がある」と言いたいとしたら、少なくとも次の2つの条件のうち1つは満たしていなければなりません。

   A.消毒は陥入爪を改善する

   B.消毒は(陥入爪によって起こった)傷を改善する

そうでなければ、消毒をいくら繰り返したところで陥入爪の治りが早まる道理がないからです。

 ここまでは、おそらくどなたも異論はないでしょう。

 ではこれから、このA.、B.のそれぞれについて考えて行くこととします。


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 まず、A.の条件「消毒は陥入爪を改善する」についてですが、これはもう深く考えるまでもなく

   成り立たない

ことが明白です。

 陥入爪とは「爪が皮膚に食い込んで傷を作っている状態」なのですから、これを改善したければ食い込んでいる爪を何とかしなければならないのは言うまでもないことです。それなのに、食い込んでいる爪を放っておいて周りから消毒薬など塗ってみたところで意味などあろうはずがありません。

 例えば、もし足にナイフが刺さって病院を受診したとします。その際、担当医がナイフに触れもしないで傷の消毒だけして、

   「はい、お大事に~」

などと言って済まそうとしたら、あなたはどう思いますか?

   「ふざけるな! ナイフくらい抜け!!」

と怒るのではないでしょうか?

 陥入爪に対して消毒だけして帰そうとするのは、丁度これと同じことをしていることになるのです。如何に意味のない処置かおわかりになるでしょう。

 それなのに、患者も医師も陥入爪で消毒だけしてよしとしているのは実に奇妙であり、考えてみればおかしいと誰もが思うに違いないと言えるでしょう。

 つまり、陥入爪を改善するためには「皮膚に食い込んでいる爪を皮膚から離す」処置をしなければならず、そうしない限り傷は治ることがないのです。消毒にそんな効果がないことは明らかです。

 ですから、まとめて言えば

   消毒は陥入爪を改善しない

ということになるのです。


 では、次にB.の条件が満たされるかどうか考えてみましょう。


(続く)

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巻き爪・陥入爪の不適切な「治療」(10) ー 消毒(前編) ー 「治療したフリ」でしかない無意味な処置

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 次にとりあげる「不適切治療」は

   消毒

です。具体的には、ヨードチンキ(ヨーチン)、ポビドンヨード(イソジン®)、ヒビテン®などの消毒薬を塗る行為です。


 この処置は、これまでとりあげてきたものに比べれば、害が少ないと言えます。なぜなら、爪変形や陥入爪難治化などの原因になりにくいからです。

 ですが、考えようによっては

   無駄な処置

とも言えます。陥入爪は消毒薬を塗ったことぐらいで治るものではないからです。

 これまで挙げてきた処置に比べて弊害がないとは言え、患者にしてみれば時間を割いてわざわざ来院し診療費まで払っているのですから、「害がなければいい」というわけには行かないのはもちろんのことです。


 この消毒という処置は、ことによると一番多く行われているものではないでしょうか。

 と言うのは、私が今までお会いしてきた患者から話を聞きますと、

   「医療機関にかかっても、消毒

するばかりでちっともよくならない」

という訴えが頻繁に出てくるからです。

 そういった例から考えてみますと、この処置はどちらかと言うと爪医療に対する関心が低い医療機関で行われることが多いようです。

 つまり、陥入爪を前にして、どうしていいかわからないが、来てしまったからには何もせずに帰すわけにも行かず、苦し紛れに消毒だけしている場合が多いと考えられるのです。

 おそらく、そういう医療機関でも、「消毒だけで陥入爪が治る」と本気で考えてはいないのではないでしょうか? どちらかと言えば、その場凌ぎに一応「治療したフリ」だけしてやり過ごしているというのが真実に近いのではないかと思われます。そして、患者の側で見切りをつけて転院してくれるのを待っているとさえ思われるのです。


 はっきり申しますが、消毒という処置は陥入爪に対して

   何のメリットもない無駄な行為

なのです。

 もし、あなたが陥入爪で医療機関にかかった際に、消毒だけして「様子を見ましょう」としか言われないようであれば、その「治療」を継続するべきか否か慎重にお考えになることをおすすめ致します。


 ただ、ここであなたが

   「消毒して何がいけないの?」

とか

   「しないよりはいいんじゃないの?」

というようにお考えだとしたら、改めて

   消毒という行為が如何に無意味であるか

について説明しなければなりません。

 消毒は患者にとって不利益にはなっても、決して利益にはなり得ない処置なのです。


 どういうことなのか、次回から詳しく説明して参りましょう。


(続く)

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巻き爪・陥入爪の不適切な「治療」(9) ー 肉芽処置(後編) ー 腐った下水管をもっと腐らせる

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 では次に、「肉芽処置」に属する処置のうちのB.に分類されるものについて考えてみましょう。

 これは、前回にも述べた通り、

   肉芽を消そうとするあまり、肉芽以外の部分にまで影響を及ぼしてしまう

恐れのある処置です。


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B-1.液体窒素などによる凍結


 これは、液体窒素や液体空気、あるいはドライアイスのような低温の液体もしくは固体を肉芽に当てて、肉芽を急激に冷却・凍結させることによって除去しようとする処置です。言ってみれば、

   人為的に凍傷を起こす

処置です。凍傷を起こせば組織は破壊され、放っておいても崩れ去ることになるわけです。

 この処置を行うためには液体窒素などが必要なわけですが、これは一般の皮膚科でもイボを取ったりする際によく使うものですので、皮膚科専門のところであれば大抵置いてあるものです。ですから、陥入爪で肉芽が見られる状態で皮膚科にかかると、この処置をされる可能性は少なくありません。

 この処置も「単に肉芽を除こうとしているだけ」である点では、すでに述べた処置と何ら変わるところはありませんので、当然、陥入爪の根本的治療につながるものにはなり得ません。その理屈についてはもう繰り返さなくてもおわかり戴けるでしょう。

 ただ、違うのは

   影響が肉芽だけにとどまらない

恐れがあることです。

 炭酸ガスレーザーの場合には、レーザーは肉芽の表面でほとんど全て熱エネルギーに変わってしまい、奥までは届きませんので、余程下手をしない限り余計な分まで「焼いて」しまうことはありません。

 ところがこの処置では、イボなどを取る目的で行われる場合でも、使う液体窒素の量が多すぎたり、当てる時間が長すぎたりすると、健常な皮膚まで「凍傷」を起こしてしまい、後で水疱をきたしたりして患者に怒られることがあるのです。その見極めは容易ではありません。

 そのため、陥入爪でこの処置を受けると、液体窒素が陥入爪の陥入部の奥まで入りすぎて、凍傷によって

   さらに傷を深くしてしまう

危険がつきまとうのです。


B-2.薬品による腐蝕


 これは、硝酸銀やフェノールなどの腐蝕性薬品により肉芽を「腐らせる」処置です。一般には、「焼く」という表現を用いる場合もありますが、別に加熱するわけではありません。

 硝酸銀やフェノールは蛋白質を変性させる作用が強く、これに触れた生物や生体組織はほとんど死んでしまう毒性を持っているのです。特に硝酸銀は健常な皮膚でさえ冒すほどの危険性があります。

 これだけの危険な作用を持つ薬品なのですから、これを肉芽にかければ当然肉芽も「腐ってしまい」、崩れてしまうことになるのです。

 そのため、この処置も使う量が多すぎたり、誤って傷の部分に流れ込んでしまったりすれば、やはり

   さらに傷を深くしてしまう

危険が大きいと言えます。

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 このように見て参りますと、ここで挙げた液体窒素や薬品による肉芽処置は、単に肉芽を消すだけにとどまらず、陥入爪の傷をも悪化させる危険を孕んでいることがわかります。

 陥入爪を本当の意味で「治す」ためには、爪が食い込んでできた傷をまず「治す」ことが必要であることは言うまでもありません。それなのに、これらの処置は傷を治すどころかますます深くするような、言わば

   治癒に逆行する

ことにつながりかねないのです。

 これは、例えて言えば、下水管が腐って汚泥が噴き出ている状況で、汚泥を取り除こうとする余り、

   下水管をもっと腐らせて傷を広げる

ようなものです。これを愚かしいと言わずして、何と言うべきでしょうか。


 このような、無意味であるばかりか有害にさえなり得る処置を「治療」と称して行うことは、断じてやめるべきだと私は信じています。

 もし、皆さんがここで挙げたような処置を受けていらっしゃるとしたら、ぜひ考え直して戴きたいと思います。

 お迷いの場合には、私の爪専門外来でも相談をお受け致しますので、どうぞご連絡ください。


(続く)

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