新・美爪通信

 爪に関心のあるすべてのかたに贈る「爪の総合情報ブログ」です。巻き爪、陥入爪など、爪に関することなら何でもとりあげるだけでなく、時には寄り道をして、医学一般の話も加えて参ります。

ネイルサロンで「巻き爪治療」? ー 医師の怠慢

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 ここ数年ネイルサロンの発展がめざましく、現在も街のあちこちに「ネイルケア」とか「爪美容」を謳った美容室を見つけることができます。女性でなければ入りにくい雰囲気があるためか、中には「男性専門」のところまであるそうです。

 職業としての「ネイリスト」も人気が高く、養成スクールなども活況だと聞いています。爪一般への世間の関心の低さを嘆いている私としては、このように爪に対して高い意識を持つ傾向が見られるのは喜ばしいことです。


 そういったネイルサロンではマニキュアや付け爪による爪装飾が主に行われているのですが、一部では巻き爪に対する矯正治療まで行うところもあります。ただ、そういったネイルサロンで行われる「治療」は医学的には効果が小さく、手技も困難で時間がかかり、しかも費用も高額なものがほとんどです。

 ネイルサロンは医療機関ではなく、ネイリストも医師ではありませんから、注射や手術などの「人体に傷を与える」(専門用語では「侵襲を加える」と言う)行為を行うことは許されません。そのため、やむを得ずこのような「効果の低い」方法で巻き爪に対処しているのであろうと思われます。

 ネイルケアのメニューに載せているくらいですから、それを求めている人、つまり

   需要がある

のでしょう。


 そういった方法の他に、遙かに効果的で時間もかからず、日常生活の不便(「爪を長時間水につけないようにしなければならない」とか「数週間おきに処置を繰り返さなければならない」とかいう注意)がまったくと言っていいほどなく、しかも最終的には費用も安く済む治療法があるのに、なぜ医療機関で治療を受けないのでしょうか?


 これは、結局のところ、

   「医師の怠慢」

と言うに尽きると思います。

 つまり、医療機関で満足のいく治療をすることができないから、その「需要」に対してまでネイルサロンが扱うようになってしまったのです。


 私たち医療関係者は、もっと爪治療を普及させ、巻き爪で苦しむ方たちの需要を満たすべく努力すべきです。また、それと同時に、一般の方々も、もっと爪に関心を払って「適切な爪医療」が広まるよう声を上げていくべきであろうと思います。


 私も微力ながら

   爪の問題は何でも引き受ける

覚悟で診療を続けて参ります。


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 爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。

  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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 また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。

                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
                             メールアドレス: miyataatsushi@livedoor.com



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爪の病気 ー あなたはどの科にかかりますか?

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 私が現在の病院(医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル)に移ってから、早くも4か月が経ちました。

 地元の情報紙に採り上げて戴いたこともあり、最近徐々に爪治療目的で来院される方が増えてきました。


 ところで、皆さんは爪の問題でお困りの場合に、医療機関にかかるとしたら何科を選びますか?

   皮膚科?

   整形外科?

   それとも、形成外科?

と迷うところかも知れません。現に、実際に受診された方からも

   「何科にかかったらいいのかわからない」

との声を何度も聞いています。

 「爪は皮膚や毛に近いから皮膚科ではないか」とか、「陥入爪で血が出ているから外科系のどこかじゃないか」とか、色々と意見があろうかと思います。


 正解としては、一般に、爪に関しては

   皮膚科が扱う

ということになっています。爪は皮膚の付属器とされているからです。

 ですが、現実には陥入爪などで皮膚科の門を叩いても、すんなりとは受け入れてもらえないことが少なくありません。

   「うちではわからない」

とか

   「ここでは診られない」

とか言われて門前払いされたり、何とか診てもらっても大して処置もせず

   「経過を見ましょう」

などと言われて全然よくならないといったことがかなりあるのです。その結果、らちが開かずに整形外科等にかかり直すことになることも多いのです。現に、整形外科では巻き爪や陥入爪の手術も行っています。


 つまり、爪という分野は、皮膚科と整形外科(および形成外科や外科)の境界領域にあるのです。

 そして、どの科でも全く重視されていない分野であるため、専門に扱っている人がほとんどいないのです。

 ですから、爪の問題を抱えた患者が来院すると、

   「どう対処していいかわからない」

ということになってしまい、診療を断るか、さもなければ

   「来てしまったからには、何とか対処せざるを得ない」

ということから、その場しのぎの対応になってしまい勝ちになるのです。


 理想的には

   爪科

という科があればいいのですが、残念ながらそんな標榜科目はありません。

 大病院などでは皮膚科などで「爪専門外来」を設けているところもありますが、まだまだ少数です。


 では、皆さんが巻き爪や陥入爪になった場合には、どこへかかるのが望ましいのでしょうか?

 これまで何度か触れてきましたように、日本では(実は世界でも)爪疾患に対して不適切な対応をしている医療機関が依然として多く、むやみに受診することはおすすめできません。

 ここはやはり、インターネットなどで調べて

   「爪専門」

と宣言している医療機関を当たるのが望ましいと言えます。


 当院でもほとんどの爪の問題に対処できますので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。


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陥入爪の悪影響(7) ー 姿勢変化(後編) ー そして、痛みは頭にまで及ぶ

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 陥入爪は長期化すると前傾姿勢を招き、これが背骨への過大な負担となって、腰痛から背部痛を起こす原因となることを説明しました。

 ところが、陥入爪の悪影響はこれにとどまらず、何と頭痛まで引き起こすことがあるのです。


 私たちは意識していませんが、頭というものは体の中でもとても重い部分です。

 しかも、頭と背骨との結合は緩やかなので、頭が不安定にならないようにするためには頸部にある数々の筋肉がしっかり支えている必要があります。

 それでも、背骨が垂直(鉛直)になっている分には、頸部筋にかかる負担はほとんどありません。ですから、正常な姿勢であれば、頸部筋は主に頭を動かす働きさえしていればいいので、比較的楽であるわけです。

 ところが、猫背になってしまうと、どうしても頭を前へ突き出す格好となるので、頭が前方へ落下しないように絶えず支えていなければならなくなります。具体的には、後頸筋(首の後ろの部分の筋肉)が常に頭を引っ張り上げていなければならなくなるのです。

 この状況は丁度、四足歩行の動物が立っている様子に似ています。彼らの場合も、重い頭を絶えず背中側へ引っ張り上げていなければならない点に変わりはありません。しかし、そのために彼らの後頸部には通常、「項靱帯(コウジンタイ)」という強い靱帯が発達していて、頸部筋の負担を軽減する働きをしているのです。

 それに比べて、ヒトは四足歩行動物のように頭を前に突き出した姿勢を常態としているわけではありませんので、彼らと違って項靱帯も発達していません。ですから、負担は専ら

   後頸部筋に集中してかかる

ことになってしまうのです。

 そうなると、当然の結果として、頸部痛がよりひどくなるわけですが、実はそれだけでは済まないのです。


 私たちの頭には脳があり、その周囲を頭蓋骨が覆って保護しているのはご存じのことと思います。では、頭蓋骨の外側はどうなっているのでしょうか?

 「皮膚と毛しかない」とお思いの方もいるかも知れませんが、それは正しくありません。

 実は、頭蓋骨の外側にもわずかではありますが

   筋肉がある

のです。


 「頭痛」と言えば、一般の人は「脳に原因がある」とお考えのことと思います。ところが、実際には脳には何も異常がなく、頭蓋骨の外側の筋肉の痛みが頭痛の原因になっていることが往々にしてあるのです。そういう頭痛を

   「筋緊張型頭痛(キンキンチョウガタズツウ)

または単に

   「緊張型頭痛(キンチョウガタズツウ)

と呼びます。

 この型の頭痛の原因となる筋肉は、実は後頸部筋の一部とつながっています。そのため、頭痛と共に後頸部痛もあるといった場合には、緊張型頭痛である可能性が極めて高いことになるのです。


 ここまで言えば、もうおわかりでしょう。

 そうです。

   猫背による後頸部筋への負担は

緊張型頭痛の原因となる


ということになるのです。


 これまでの話をまとめると、こうなります。

 陥入爪で足の指が痛む状態を放置すると、重心の移動から猫背となり、ひいては腰痛・背部痛・頸部痛をきたし、最終的には頭痛まで起こしてしまうことになるのです。


 これは決して誇張でも

   「風が吹けば桶屋が儲かる」

式の例え話でもありません。現実に起こることなのです。


 最初は、足の爪だけの問題であったものが、巡り巡って頭にまで至る全身に悪影響を及ぼし得る現実、これを知ってもあなたはまだ

   「タカが爪のこと」

と言っていられますか?


 爪の病気も、他の臓器の病気と同様にきちんと治療すべきものと考えなければならないのです。


(この項終わり)

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陥入爪の悪影響(6) ー 姿勢変化(中編) ー 猫背は腰痛の原因となる

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 陥入爪を長期間放置すると、姿勢の変化を引きおこして猫背になることを説明しました。では、猫背になるとどのような問題が起こるのでしょうか?

 ここで寄り道をして、ヒトにおける背骨の役割について考えてみましょう。


 背骨は医学用語で「脊椎(セキツイ)」と呼び、ヒトを含む数多くの動物において、体を支える重要な働きをしています。

 ただ、ヒト以外の四足歩行の動物においては、背骨にかかる負担は比較的軽いと言えます。なぜなら、背骨が地面とほぼ平行になっていて圧迫力がほとんどかかりませんし、前脚と後ろ脚の2箇所で支えられているからです。例えて言えば、物干し竿を両端で支えて、そこに内臓や筋肉といった「洗濯物」をぶら下げている状態です。極めて安定した、無理のない構造と言えるでしょう。

 ところが、ヒトの場合は、直立二足歩行をするようになったために、背骨に多大な負担をかけざるを得なくなってしまいました。背骨がほぼ垂直となったために、背骨を押し潰すような強い圧迫力がかかりますし、支えているのは片端の1箇所のみですから安定性にも欠けます。例えるなら、物干し竿を垂直に立てて、途中に「洗濯物」を幾つも引っかけているようなものです。しかも、一番上には重い頭がついているわけですから、とてつもなく不安定な構造と言えます。

 こんな不安定なつくりでありながら、私たちヒトが普通に生活できているのは、強い圧迫力にも耐え得る背骨の強さと、背骨が倒れないように支えている数々の筋肉の働きがあるからなのです。


 では、本題に戻って、猫背が体にどのような悪影響を及ぼすか説明して参りましょう。

 ヒトのような体の構造では、背骨は水平面に対して直角(こういうのを「鉛直(エンチョク)」と言う)の状態が最も安定しています。その状態であれば、背骨を支える筋肉の負担もほとんどなく、倒れそうになってもわずかの力で元通りに戻すことができます。

 ですが、もし、背骨を「ピサの斜塔」のように斜めにした状態にしたまま保つとなったら大変です。


 例えとして、運動会の玉入れの籠(カゴ)を考えてみましょう。ヒトのように背骨の先端に重い頭がついている状態は、丁度、籠の中に玉がいっぱいに入った場合に相当します。

 ここでまず、「棒を垂直(鉛直)に立てていろ」と言われたらどうでしょうか? これなら、バランスさえ保てば力はほとんど要りませんので、例え小学生でも楽に長時間支え続けることができるでしょう。

 では、もし「棒を斜めに傾けたまま支えていろ」などと言われたらどうでしょうか? 力を抜けばすぐに倒れてしまいますから、絶えず足を踏ん張って力を込めて棒を支え続けなければなりません。これでは、小学生はおろか、大人であっても10分も経たないうちに嫌になって音を上げてしまうことでしょう。


 この例えで言うならば、猫背は背骨が斜めに傾いている状態に当たるわけですから、これを維持するためには背筋を初めとした多くの筋肉が絶えず緊張して支え続けていなければならないのです。いかに筋肉の負担がきついかは想像に難くありません。

 つまり、猫背になると体の筋肉、主に背筋は過大な負担を強いられ、休めるのは横になった時くらいということになってしまうわけです。特に、支点に近い腰部では最も強い力が必要であり、一番負担が集中してしまうことになります。

 そうなると、結果として腰痛が生じるのはむしろ当然であり、長引けば痛みの範囲は拡大して背部痛から頸部痛へとつながることとなるのです。


 つまり、猫背はまず

   腰痛・背部痛・頸部痛を引きおこす

というわけです。


 しかも、まだ続きがあります。

 猫背は腰・背・頸部の痛みばかりでなく、何と

   頭痛の原因にさえなり得る

のです。

 どういうことか、さらに説明を加えましょう。


(続く)

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陥入爪の悪影響(5) ー 姿勢変化(前編) ー 指の痛みは猫背につながる

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 これまでの話で、陥入爪が意外にも重症になり得ること、また、足の指のみならず膝にまで障害を及ぼし得ることがおわかりになったことと存じます。

 ところが、話はまだこれで終わりではないのです。陥入爪の悪影響は、長期化すると膝までにとどまらず、全身にまで広がってしまうこともあるのです。


 足の指の痛みが歩き方の変化を起こすことは既に説明しました。ですが、長い目で見ると他にももっと重大な変化を体に起こすことになるのです。それは

   姿勢の変化

です。


 足の指が痛むと、私たちは無意識的に足の指に力を加えないようにして生活するようになります。ここまでは歩き方の変化が起こる理由と共通しています。しかし、これが高じると、足の指をできるだけ地面につけないようにして、浮かせたままでいるようになっていきます。そうなると、それまで足の指にかかっていた体重が指以外の場所へ移動することになり、結果としてどうなるかと言えば、

   体の重心が後ろへ偏る

ようになります。つまり、体重が踵に強くかかるようになり、指にはほとんどかからなくなるのです。こういう状態になると、足型を取っても踵ばかり濃くなって、指はまるでなくなってしまったかのような足型になります。


 「自分もそうかも知れない」とお思いの方は、次の実験をしてみてください。

 まず、「気をつけ」の姿勢で両方の踵をくっつけた状態で立ちます。そして次に、足の裏を床に密着させたままでしゃがんでみてください。この時、踵が床から浮き上がってはいけません。

 どうでしたか? うまくしゃがめましたか?

 バランスを崩して尻餅をついてしまった方は、体の重心が後ろへ偏っている可能性があります。


 このように、体の重心が後ろへ偏ると、次にはどのようなことが起こるでしょうか?

 重心が後ろの方にあるということは、すなわち

   後ろへ倒れやすい

ということを意味します。私たちは前方に倒れる分には手などをついて防御することができますが、後方へ倒れると、防御できずに頭を打ってしまいやすいので、このような不安定な状態は好ましくありません。特に、階段や坂道を上る場合には非常に危険な状態となります。

 そのため、私たちは姿勢を安定させるために無意識のうちに重心を前へ戻そうとします。

 ですが、足の指には体重をかけられません。そうなると、どうすれば重心を前へ移動させることができるでしょうか?

 まず膝を前に突き出す方法が考えられますが、これでは指先に体重がかかりやすくなってしまいます。

 そうなると、上半身を前方へ傾けることによって重心を前へ移動させるより他に方法がないことになります。つまりは

   猫背になってしまう

わけです。


 これまでの話の流れを整理してみますと、

   陥入爪になると足の指が痛くなる

   → 足の指が痛いと指を浮かせて歩くようになる

   → 足の指を浮かせると体の重心が後ろへ偏る

   → 重心が後ろへ偏ると後方へ倒れやすくなる

   → 姿勢を安定させるために重心を前へ戻そうとする

   → 重心を前へ動かすために上半身を前へ傾けるようになる

   → 前傾姿勢、つまり猫背になる

ということになります。


 猫背というものは、その語感からして不健康であることからも知れるように、決して「良い姿勢」とは言えません。若いのに猫背だったりすると、見た目の印象も悪くなってしまいます。

 しかも、猫背は医学的に見ても極めて問題の多い姿勢であり、様々な悪影響を体に及ぼす原因となるものなのです。


 どのような悪影響があるのか、これから説明して参りましょう。


(続く)

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陥入爪の悪影響(4) ー 関節変形(後編) ー O脚は変形性膝関節症を引き起こす

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 なぜ、O脚になると変形性膝関節症になりやすくなるのでしょうか? 

 この理由にご納得戴くためには、まず膝の構造について説明しておかなければなりません。


 ヒトの脚には、大腿(ダイタイ)部に「大腿骨(ダイタイコツ)」という骨が1本あり、下腿に「脛骨(ケイコツ)」という骨と「腓骨(ヒコツ)」という骨が1本ずつあります。ですが、これらのうち腓骨は膝関節には関与していませんので、膝関節とは大腿骨と脛骨とが接している関節ということとなります。

 ヒトは普通に立っている時には2本の脚で体重を支えているわけですが、歩けば当然、1本の脚で全体重を支えなければなりません。さらに、走ったり跳びはねたりすれば体重の何倍もの力に耐えなければならないのです。このような厳しい負担がかかる膝関節というものは、どういう構造になっているのでしょうか?

 「膝関節は大腿骨と脛骨とが接している関節」と書きましたが、決して骨同士が密着しているわけではありません。簡単に言えば、脛骨の上面は平たいテーブルのようになっていて、それに接する大腿骨の下端には内側と外側に1つずつ突起があって、その2つの突起が脛骨の上面に載っているのです。つまり、大腿骨と脛骨は

   内側と外側の2箇所で接している

ということなのです。これは極めて重要なことですので、しっかり押さえておいてください。

 膝がまっすぐな場合、つまり、O脚でもX脚でもない場合には、2箇所の接点にはほぼ均等に重力が加わるようになっています。

 ですが、O脚になると、膝が外側へ曲がるため、2箇所の接点のうちの外側の方が浮き上がる形となり、結果として

   内側の接点に体重が集中して加わる

こととなります。

 ただでさえ厳しい負担がかかっている膝関節でこのような不均衡が生じれば、どのような不具合が起こるか大方予想がつこうというものです。


 ここで続けて、変形性膝関節症についても説明しておきましょう。

 一般に関節とは骨と骨とが接している構造を指しますが、「直に」接しているわけではありません。

 考えてみれば、膝関節のような動く関節で骨同士が直に接していたら滑りが悪くて動きにくいでしょうし、衝撃が直接骨に響いて痛くて堪らなくなることでしょう。このため、関節で接する骨の表面は軟骨で覆われていて、この軟骨が潤滑・衝撃吸収の役割を果たしているのです。

 変形性膝関節症とは、この関節軟骨が傷む(具体的には「すり減る」)ことによって起こる病気なのです。

 軟骨というものは非常に強靱で耐久性にも優れているのですが、残念なことに、一度傷むと二度と再生しません。そのため、長年の使用によってすり減ると薄くなる一方となり、最後にはすり切れてなくなってしまうのです。

 軟骨がすり切れてなくなってしまうと、関節の滑りが悪くなって歩きにくくなりますし、骨の表面が露出するため、そこに体重が加わると痛みや炎症が起こります。こういう状態を

   変形性膝関節症

と呼ぶわけです。

 この病気になると、まず最初に正座ができなくなり、しゃがむこともできなくなってきます。そして、進行すると、立って歩くことすら痛くてできなくなってしまうのです。

 治療としては、すり切れた軟骨を元に戻す方法はありませんので、膝への負担を軽減して進行を遅らせることくらいしかできません。進行して、日常生活すら辛いようであれば、人工関節と交換する手術をしなければならないこともあります。

 このように、変形性膝関節症とは、命に直接関わらないにしても、私たちの生活に多大な障害をもたらす重大な病気なのです。


 ここまでで、膝関節の構造、変形性膝関節症についてあらかたおわかり戴けたことと存じます。

 では、O脚になるとなぜ変形性膝関節症になりやすくなるのでしょうか?

 勘のいい方はもうおわかりのことと思います。

 そうです。なぜかと言えば、それは

   膝関節の内側に体重が集中するから

です。


 膝関節の内側に負担が集中してかかれば、それだけ内側の軟骨が速くすり減るのは当然です。しかも、軟骨がすり減れば軟骨の層が薄くなるため、接している骨同士の隙間が狭くなり、ただでさえO脚だったのがもっとO脚になっていく結果となります。

 そうなると、ますます内側に体重が集中してかかることになり、悪循環に陥ってしまうのです。

 そのまま行けば、内側の軟骨がすり切れて変形性膝関節症を発症するのは時間の問題です。


 どうでしょうか?

 O脚の弊害は決して単なる見た目の問題だけにとどまらないのです。

 陥入爪を放置したばっかりにO脚となり、さらに変形性膝関節症にまでなってしまったら、その及ぼす損害は実に重大です。しかも、そうなってしまってからいくら慌てて陥入爪の治療をしたところで、膝はもう元に戻りはしないのです。


 これで、「爪の病気など放っておいても大したことはない」という認識が大間違いであることがおわかりになったでしょう。


 ですが、実は陥入爪が及ぼす悪影響はまだこれで終わりではないのです。


(続く)

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陥入爪の悪影響(3) ー 関節変形(前編) ー 指が痛いとO脚(オウキャク)になる

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 陥入爪に伴う指の炎症がいかに大きな問題となるかについて説明して参りました。

 では炎症さえなければ、もしくは悪化しなければ、問題はないのでしょうか? 放置していてもよいのでしょうか?

   いいえ、そうは行きません。


 陥入爪の悪影響は、決して炎症のみによって起こるものではないからです。陥入爪のために指が痛い状態が続くと、さらに厄介な障害が起こり得るのです。


 すでに書きました通り、陥入爪があると足の指(主に親指)が激しく痛みます。特に外力が加わると、跳び上がるほど痛むこともあります。そのため、陥入爪があると歩く時も指にあまり体重をかけられなくなり、無意識のうちに

   足の親指を浮かせて歩く

ようになってしまいます。実はこれが、大きな問題を起こす原因となるのです。

 このような歩き方は、ヒトの本来の歩き方ではありません。そして、このような不自然な歩き方は足にも余計な負担をかけ、様々な問題につながるのです。


 まず、足の親指つまり足の内側を浮かせて歩くため、足の外側や踵(カカト)に体重が集中するようになります。すると、力が集中する部分の皮膚が厚くなり、胼胝(タコ)やウオノメができやすくなります。ひどくなると、皮膚に亀裂が入り、血が出て痛むようになることもあります。


 ですが、これくらいの問題はまだ序の口です。


 歩き方の変化は関節に無理な負担をかけるため、長引くと

   関節の変形につながる

こととなるのです。


 「足の内側を浮かせて歩く」歩き方が常態化したら、次にどのようなことが起こるのでしょうか?

 ここで、皆さんにはぜひ実験をしてみて戴きたいと思います。

 歩く際に足の内側を浮かせたままでいるためにはどうすればいいでしょうか? 実際にそのようにして歩いてみてください。

 普通に考えれば、両足を足首のところで内側に反り返らせればいいように思うでしょう。こういう状態を「内反足(ナイハンソク)」と言います。ですが、そのままずっといるのはとても難しいことに気付くはずです。なぜなら、足首の関節(足関節(ソクカンセツ))は内反足の状態ではとても不安定だからです。しかも足関節というものは捻挫を起こしやすいところで、その大部分は「内返しに捻ってしまうもの」なのです。内反足の状態では、いつ足首を内側に捻って捻挫を起こしてしまうかわからず、とても危険です。

 では、どうすれば足の内側を浮かせたまま安定して歩くことができるでしょうか?

 実験してみた方はおわかりになると思いますが、足の内側を浮かせたままでいようとすると、無意識のうちに両膝の間が広がった形になるのです。つまり、足首を内側に曲げるわけに行かないから、脚ごと(正確に言えば「下腿ごと」)動かさざるを得なくなるのです。そういう状態になると、両膝が左右に広がって、脚全体がアルファベットの「O(オウ)」のような形となります。そのため、このような脚を

   「O脚(オウキャク)」

と呼びます。因みに、逆に両膝がくっついて両足首がむしろ左右に開いているような脚を「X脚(エックスキャク)」と呼びます。


 つまり、どういうことかと言えば、

   足の指が痛むのを放っておくとO脚になる

というわけなのです。


 O脚になると、脚の形が崩れていわゆる「蟹股(ガニマタ)」となり、理想的な脚線美から程遠い状態となります。マンガやアニメでも、美形キャラクターがO脚であることはまずなく、むしろ少しX脚気味に描かれるのが普通です。それだけ、O脚というものは好ましくない脚の形なのです。誰も進んでO脚になろうなどとは思わないに違いありません。

 でも、中には

   「俺は男だし、脚線美なんかどうでもいい」

という方もいらっしゃることでしょう。では、そういう人はO脚になっても構わないかと言えば、決してそんなことはありません。なぜなら、

   O脚になると膝が悪くなる

からです。もっと具体的に言えば、「変形性膝関節症(ヘンケイセイシツカンセツショウ)」になりやすくなるのです。


 いったいどういうことか、話をさらに進めましょう。


(続く)

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陥入爪の悪影響(2) ー 炎症(後編) ー 指切断や死亡にまでつながる

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 体の側も最初のうちは善戦していても、結局は果てしなく続く戦いに疲弊し、遅かれ早かれ前線を維持できなくなるでしょう。そうなると「撤退」することになるわけですが、軍隊のように物資や施設を爆破してから逃げるようなことはできませんので、置き去りにされた皮膚や肉などの組織は腐敗して黴菌の餌食となってしまいます。

 また、前線を放棄しなくても、防御が手薄になって黴菌の侵入を許してしまうことも起こり得ます。そうなると、陥入爪の周囲の皮膚の下に炎症が広がり、指全体がまるでコケシの頭のようにまん丸く腫れ上がってきます。こういう状態を「蜂窩織炎(ホウカシキエン)」と言い、特に指に起こったものを

   「瘭疽(ヒョウソ)」

と呼びます。


 前線後退にしろ、瘭疽にしろ、体にとってただならぬ事態であることは明らかです。

 ここまで来れば、さすがに治療を受ける人が多いわけですが、ここまで放置した代償は小さくありません。

 前線後退、つまり傷が深く進行した状態では、当然治るのに長い時間がかかりますし、傷が骨にまで達していると抗生物質などを使っても治らず、骨を削り取る必要があったり、ひどい場合には

   指を切断しなければならない

ことにさえなりかねません。

 瘭疽の場合も切開手術が必要な場合がありますし、黴菌が血の中に絶えず流れ込むことになるため、黴菌が全身を回ってしまい、敗血症にまで至ってしまうこともあり得ます。そうなると、高熱を出して入院しなければならなくなり、肺や腎臓にも障害が及んで「多臓器不全(タゾウキフゼン)」と呼ばれる重篤な状態に陥ってしまうこともあります。特に、高齢者や糖尿病の患者などではそうなる危険性が高く、場合によっては

   死亡にまで至る

こともあり得るのです。

 現に、次のような実例があります。

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俳優の金田龍之介さん死去、お父さん役から悪役まで幅広く


 ホームドラマの父親役から、すごみのある悪役まで幅広くこなし、名脇役として活躍した俳優の金田龍之介さんが3月31日午前2時13分、慢性腎不全のため亡くなった。

 80歳だった。(中略)

 金田さんは、足の爪を切った際に雑菌が入り、3月26日に入院。30日深夜に容体が急変したという。(後略)

(2009年3月31日 gooニュースより引用、下線宮田)

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 詳しい経過は不明ですが、恐らく金田龍之介さんも深爪から炎症を起こし、そこから黴菌が血の中に入り、敗血症から腎不全にまで至ってしまったものと推察されます。


 このように、陥入爪は進行すると指の切断や、場合によっては命にかかわることにもつながりかねない病気なのです。


 ここまで言えば、足の爪の症状が決して

   タカが知れたもの

などではなく、放置しておけないものであることが充分におわかり戴けることでしょう。


(続く)
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                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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陥入爪の悪影響(1) ー 炎症(前編) ー 放っておくと危険です!

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 爪の病気は決して無視・軽視してよいものではなく、他の病気と同様にきちんと対処すべきものであることを強調しました。

 では、爪の病気の症状はどういったもので、その悪影響はどの程度なのでしょうか?

 ことによるとあなたは次のように思ってはいらっしゃいませんか?

   「症状は痛みと腫れくらい」

   「ひどくなっても、せいぜい指だけの問題にとどまる」

 ところが、実際には爪疾患の悪影響は想像以上に大きく、また、広い範囲に及ぶものなのです。


 いったいどういうことなのか、爪の病気の代表である陥入爪を例にとって、これから具体的に説明して参ります。

 これを知れば、きっと誰でもウカウカしていられなくなることは間違いないでしょう。


 陥入爪とは「爪が皮膚を突き破って、肉に食い込んでいる状態」を言います。ですから、陥入爪になると指が痛み、絶えず血や膿(ウミ)が染み出てきて悪臭を放つようになります。そんな状態を治療せずに放置したらどうなるでしょうか?

 まず、爪が皮膚を突き破っているのですから、そのままでは皮膚が修復されず、傷はいつまで経っても決して治りません。例えて言うなら、

   ナイフが突き刺さっているようなもの

です。そんな場合は、ナイフを抜かない限り傷が治るわけがないことくらい誰でもわかるでしょう。

 そして、傷が治らない状態が続くと、傷口から次々と黴菌(バイキン)が侵入してきます。丁度、戦場の最前線で壁が破られたのを放っておくとそこから敵がどんどん攻め込んでくるようなものです。

 敵すなわち黴菌に入られっ放しではたまりませんから、体の方では当然それを迎え撃つことになります。その際に活躍するのは、主に血液の中の白血球(ハッケッキュウ)です。ただ、白血球というものは、戦士や兵士のように武器で黴菌を倒すようなことはできず、黴菌を飲み込んで(こういう働きのことを「貪食(ドンショク)」と言う)黴菌もろとも自滅するという方法でしか黴菌に対抗できません。そのようにして自滅した白血球が膿となるわけです。そのため、次々と侵入してくる黴菌を排除し続けるためには、白血球も次から次へと送り込まれる必要があるのです。

 白血球が沢山あり、それが指先にまで充分に送り続けられる状況ならば、少なくとも黴菌の足止めをすることはできるでしょう。ですが、「爪が皮膚を突き破っている状態」が解消されない限り、この「戦い」に勝利することはあり得ず、いつまでも際限なく戦い続けなければなりません。


 ここで、体と黴菌とでどちらが有利か考えてみましょう。


 まず、体の側から見ると、足の指の先というのは非常に戦いにくい場所と言えます。

 体の中心から最も離れているのですから、戦場に例えれば、本営から一番遠い最前線のようなものです。そういう場所には兵士や物資を運ぶのも大変です。ですが、現場では常に白血球や栄養といった「兵士や物資」が大量に必要とされます。このような「兵士や物資」を運ぶのは専ら血液であり、戦況を不利にしないためには、豊富な血流が保たれていなければならないのはおわかりになるでしょう。

 ところが、現実には足の先という場所は最も血流が乏しくなりやすいところであり、しもやけができやすいのもそのためです。ましてや、動脈硬化や糖尿病があったりすると、ただでさえ乏しい血流がさらに滞り勝ちになり、白血球や栄養もろくに送れなくなってしまいます。

 こうなってしまうと、黴菌に対する戦況が不利になることはあっても、有利になることがないのは明らかです。


 一方、黴菌の側から見れば、この戦いには有利な条件が揃っていると言えます。

 第1に、足の指は靴下や靴に包まれている時間が長く、その間は黴菌の生育に適した高温多湿の環境となります。特に、指と指の間などはほとんど常にそういう状態にあると言えるでしょう。

 第2に、足の指はろくに洗わないため、黴菌のエサとなる汗や垢が充分にあります。しかも陥入爪になれば、そこから出てくる血や膿も黴菌にとっては絶好の「ご馳走」となります。

 第3に、黴菌は、白血球のように遠くから運んで来る必要はなく、その場で増殖することができます。

 第4に、黴菌の中には毒素を出せるものがあり、それによって白血球などを死滅させることができます。


 このように考えてみますと、陥入爪という「戦場」ではあらゆる面で黴菌が圧倒的に有利であることがわかります。そうなると、この戦いが最終的にどういう経過を辿るかも想像がつこうというものです。


(続く)
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爪を取り巻く環境の異常性(3) ー 当たり前のことが当たり前でない現実

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 ここでまず、強調しておかなければならないことがあります。それは、

    爪の病気は治療しなければならない

ということです。こんなことを言うと、皆さんは恐らく

    「なぜ、そんな当たり前のことをわざわざ強調するのか?」

と怪訝に思うことでしょう。

 ですが、これは爪医療を考える上で最初に確認しておかなければならないことなのです。そして、こんなことを取り立てて問題にしなければならないところにこそ、爪の置かれている現状の異常性が浮き彫りになっているのです。


 爪以外の臓器や部分のことでしたら、誰もわざわざこんなことを確認したりはしないでしょう。医学書などでも、病気については初めから治療を前提とした書き方がされていて、「なぜ治療しなければならないか」などということは書かれていません。例えば、心臓病の本であれば、「心臓病を治療する必要があるか」などといったことは最初から問題にされていないのです。

 なぜ問題にならないかと言えば、

    病気は治療するのが当たり前

だからです。

 ところが、こと爪に関してだけは、この当たり前であるべきことが

    当たり前でない

のが現実なのです。


 ここで仮に、あなたが会社員であると想定してみてください。

 もし、あなたが心臓病や肺炎になったとして、治療のために会社を休むと言った場合、周囲はどのように反応するでしょうか?

 恐らく、余程のブラック企業でもない限り「やむを得ない」と認めてくれるでしょうし、「お大事に」とかいう優しい言葉もかけてもらえるでしょう。

 ですが、もしあなたが巻き爪の治療のために会社を休むなどと言ったら、いったいどんな反応が返ってくるでしょうか? いたわりの言葉などかけてもらえるでしょうか?

 いいえ、とんでもないことです。恐らくはまともに休みなど取らせてはもらえないでしょうし、それどころか、予想される反応はと言えば、

    「爪ごときのことで休もうとは、結構なご身分だな」

    「お前がそんな軟弱な奴だとは思わなかった」

    「戻って来ても机はないものと思え」

といったものでしょう。ひどい場合には、社内いじめが始まってしまい、職場ですれ違いざまに足を踏まれたりして

    「あ~ら、ごめんねぇ~♪」

などと笑顔で言われるようなことにもなりかねないのです。

 こういった事態が容易に想像できる現状があるため、爪の問題で苦しむ患者の多くは、正直に爪の病気とは言えず、「足が痛いから」とか何か他の病気ででもあるかのように誤魔化さなければならなくなるのです。


 つまり、世間一般の認識としては

    「爪の病気など、わざわざ

治療するほどのものではない」


というのが現状なのです。

 こういった認識の根底にある考えは大方、次のようなものでしょう。

    「爪の病気の症状などタカが知れている」

    「爪の病気など放っておいても大したことはない」

 あなたも、程度の差こそあれ、同じようにお考えなのではないでしょうか?


 しかし、これらの考えは大いに間違っています。

 本当は

    「爪の病気の症状は時に重篤になる」

    「爪の病気を放置すると、後で重大な問題になる」

というのが正しいのです。


 どういうことなのかはこれから詳しく説明して行きますが、ここでは少なくとも、爪を取り巻く今の現状は余りにも爪を軽視しすぎているということをわかって戴きたいと思います。


(この項終わり)


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プロフィール

宮田 篤志(みやた・あつし)

 神奈川県平塚市の病院に勤めている勤務医です。
 内科医でありながら、爪の医療にのめり込み、爪専門外来を開いています。巻き爪、陥入爪など、爪のことなら何でもご相談ください。