陥入爪になった人の体験談などを読んでいると、よく次のような話が出てきます。

   「爪が伸びると肉に食い込んで痛くなるので、
その都度、病院に行って切ってもらう」(!)

   「痛くなるたびに自分で切っているけど、
ちっともよくならない」(!!)


 私は残念でなりません。また同時に、懺悔せずにはいられません。

 陥入爪を治すには「爪を指先まで伸ばすこと」が必要であることを説明しました。ところが、これらの方たちはまさにそれと逆のこと、つまり

   陥入爪の治りを妨げる行為

をしているのです!! しかも、自分でしているだけでなく、病院でも同じことが行われているのです!!

 実を言えば、以前、私も同じような「処置」を陥入爪患者に対して施行していたことがあります。それがとんでもない間違いであることも知らずに・・・。

 もう一度申します。

   私は懺悔しています。

 「無知」というのは恐ろしいことです。


 ここでもし、あなたが

   「どうしていけないの?」

とか

   「痛みが取れるんならいいじゃない」

とかお考えだとしたら、ここでもう一度強調しておかなければなりません。

   「爪を切る」という行為は、

陥入爪の治りを邪魔するもの

でしかないのです!!


 「痛くなるたびに自分でまたは病院で爪を切っている」というのは、まるで「賽(サイ)の河原」や「シシュフォスの神話」のように救いのない状態なのです。


 ここで、馴染みのない方のために、少々説明を加えましょう。

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「賽の河原」

 これは「地名」ですが、この世にあるところではありません。「三途の川」の河原、つまり地獄にある場所なのです。

 そこでは、死んだ子供たちがそれぞれの親を供養するために石の塔を作らされています。

 河原にある石を積み上げて塔を作るのですが、完成が近くなると決まって鬼がやってきて、跡形もなく壊してしまいます。

 それでも、子供たちは供養塔作りをやめさせてもらえません。

 しかたなく、また最初から作り始めるわけですが、何度作っても、完成しそうになると必ず鬼が来て壊してしまいます。

 ですから、何度でも永久に塔を作り続けなければならない、そこはそういう地獄なのです。



「シシュフォスの神話」

 「シシュフォス(Σίσυφος)」というのは、ギリシャ神話に登場するコリント国の王の名前です。

 シシュフォスは、生前の行いが悪かったためゼウスの怒りを買ってしまい、死後に地獄で刑罰を受けることになります。

 その刑罰とは、重い岩を山の頂上まで運ぶというものでした。シシュフォスは力を振り絞って岩を押し上げます。

 ところが、山の頂上には番人が待ち構えていて、シシュフォスが岩を押し上げてくると蹴り落としてしまいます。

 またシシュフォスが岩を押し上げてきても、頂上に届く寸前で必ず番人に蹴り落とされてしまいます。

 何度繰り返しても同じです。番人はそうするように命じられているのです。

 そういうわけで、シシュフォスは徒労と知りながらもひたすら岩を押し上げ続ける他にないのです。それも永遠に・・・。

 そこは、そういう地獄なのです。

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 さて、私が何を言いたいか、おわかりになりましたでしょうか?

 つまり、爪が指先まで伸びれば陥入爪が治るというのに、もう少しで爪が指先に達しようというところで切ってしまう・・・。この状況は何かに似ていると思いませんか?

 そうです。

   爪を「賽の河原」の子供やシシュフォスに例えるとしたら、

それを切ってしまうあなたや病院はサシヅメ

鬼や地獄の番人に例えることができるでしょう。


 爪が憐れだとはお思いになりませんか?


 もし、あなたが今、そのような状況に置かれているとしたら、ぜひとも当院にご相談されることをおすすめ致します。


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  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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 また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。

                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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