私が爪治療に本格的に取り組み始めてから、もう5年以上になります。

 最初は

    「自分のできる範囲内だけで」

と思っていたのですが、次第にのめり込んでしまい、今ではほとんどの爪のトラブルに対処するようになったばかりか、爪についての総合情報ブログまで書くようになってしまいました。


 そうした中で患者さんから話を聞きますと、爪に対する世間一般の関心がまだまだ極端に低いことに気付かされます。そしてそれは、医療機関においても同様なのです。しかも、この状況は5年前からほとんど改善していません。

 実際、医学は各方面で著しく進歩しているのに、こと爪に関してはここ数年間全く進歩していないと言ってよいのです。

 なぜ爪医学は進歩しないのかと問われれば、やはり原因は

    「爪に対する関心の低さ」

にあると言わざるを得ません。


 医学の専門書でも、爪について書かれているページはごくわずかですし、書店を見て回っても、爪の美容の本なら結構あるのに、爪の「家庭医学書」などというものはまず見当たりません。

 情報の宝庫と言われるインターネットでさえ、爪に関する情報を見つけるのは困難で、しかもその中の大部分は間違っている有様です。

 こうした中で、爪のトラブルを抱えた人は長いこと情報不足のまま我慢を強いられてきていると言えるでしょう。

 私は爪の専門家ではありませんが、医師として、こういった現状を何とか打破したいと思っています。私がこれまで爪治療に取り組んできた中で得た情報を公開することで、その目的に少しでも近づきたいと願っているのです。

  ところで、表題にもあります通り、私は内科医です。専門は呼吸器内科と漢方医学です。そんな、科も専門も爪とはおよそ無関係な私が、なぜ爪医学に取り組むようになったのでしょうか。

 実際、患者さんからも他の医師からも「なぜ内科医なのに爪を治療するのか」と何度も聞かれてきました。当初は私も気の利いた答えができず、ジョージ・マロリー(*)にあやかって

    「なぜ爪を治療するのか? そこに爪があるからだ」


などと言ってみたりもしていましたが、最近になってようやく本来の理由がわかってきました。

 内科で診る機会の多い病気に糖尿病というものがありますが、この病気には「足のトラブルが多い」という特徴があります。そのため、糖尿病の患者さんの場合は内科でも足の問題に対応しなければなりません。そして、その中には足の爪に関する問題も結構あるのです。

 爪に興味を持ち始める前、私はそういった爪のトラブルにうまく対処できず、困った時には皮膚科にお願いするのが常でした。そんな時、糖尿病の講演会に出席する機会があり、そこで看護師によるフットケア(足の管理)についての発表があったのです。

 その発表では、巻き爪などで苦しんでいる患者さんに対して看護師が爪切りを施していることが紹介されていて、しかもそれがとても評判がよく、何ヶ月も先まで予約が埋まっているとのことでした。当時の私はそれに感銘を受け、「そんなに喜ばれるのなら、自分でも実行してみよう」と思ったのです。

 ですが、実際に爪切りをしてみると、確かにその時は痛みが消えて患者さんも喜ぶのですが、私はある疑問が頭に浮かんでなりませんでした。それは、

     「爪が伸びたら同じことではないのか?」


という疑問です。つまり、「爪を切ってもまた伸びれば痛くなるのは目に見えている。それで爪切りを繰り返して結局最後はどうなるのか? 死ぬまで爪切りを繰り返すのか? 果たしてそれでよいのか?」ということです。月日が経っても、この疑問は消えるどころか強まる一方でした。


 そこで私は、爪治療の第一人者である高田馬場病院整形外科の町田英一(まちだ・えいいち)先生の講習会に参加することにしました。考えてみれば、これが私が爪医学にのめり込む最大の転機になったのです。

 そこでは、巻き爪などで足が痛む場合に爪を切り込むのは本来の治癒から遠ざかる有害な行為でしかないことが力説されていて、私は長いこと抱えていた疑問が解けたと同時に、今まで患者さんに対して「有害な行為」をしてきたことへの懺悔の思いを禁じ得ませんでした。

 このようなわけで、私は内科でありながら爪の治療に積極的に取り組むようになったのです。そして、実際に取り組んでみますと、現在の爪医学には多くの問題が残っていることがわかってきました。しかも、それらは何年経っても一向に解決される気配がないのです。

 いったいどういう問題があるのか、そして、それらをどう解決していけばよいのか、それをこのブログで明らかにしていきたいと思っているのです。


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(*) : ジョージ・マロリー(1886-1924)はイギリスの登山家で、「なぜ山に登るのか」と聞かれて

         『Because it's there! (そこに山があるからだ)

という名言を残したことで有名です。



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  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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