これまでの話で、陥入爪が意外にも重症になり得ること、また、足の指のみならず膝にまで障害を及ぼし得ることがおわかりになったことと存じます。

 ところが、話はまだこれで終わりではないのです。陥入爪の悪影響は、長期化すると膝までにとどまらず、全身にまで広がってしまうこともあるのです。


 足の指の痛みが歩き方の変化を起こすことは既に説明しました。ですが、長い目で見ると他にももっと重大な変化を体に起こすことになるのです。それは

   姿勢の変化

です。


 足の指が痛むと、私たちは無意識的に足の指に力を加えないようにして生活するようになります。ここまでは歩き方の変化が起こる理由と共通しています。しかし、これが高じると、足の指をできるだけ地面につけないようにして、浮かせたままでいるようになっていきます。そうなると、それまで足の指にかかっていた体重が指以外の場所へ移動することになり、結果としてどうなるかと言えば、

   体の重心が後ろへ偏る

ようになります。つまり、体重が踵に強くかかるようになり、指にはほとんどかからなくなるのです。こういう状態になると、足型を取っても踵ばかり濃くなって、指はまるでなくなってしまったかのような足型になります。


 「自分もそうかも知れない」とお思いの方は、次の実験をしてみてください。

 まず、「気をつけ」の姿勢で両方の踵をくっつけた状態で立ちます。そして次に、足の裏を床に密着させたままでしゃがんでみてください。この時、踵が床から浮き上がってはいけません。

 どうでしたか? うまくしゃがめましたか?

 バランスを崩して尻餅をついてしまった方は、体の重心が後ろへ偏っている可能性があります。


 このように、体の重心が後ろへ偏ると、次にはどのようなことが起こるでしょうか?

 重心が後ろの方にあるということは、すなわち

   後ろへ倒れやすい

ということを意味します。私たちは前方に倒れる分には手などをついて防御することができますが、後方へ倒れると、防御できずに頭を打ってしまいやすいので、このような不安定な状態は好ましくありません。特に、階段や坂道を上る場合には非常に危険な状態となります。

 そのため、私たちは姿勢を安定させるために無意識のうちに重心を前へ戻そうとします。

 ですが、足の指には体重をかけられません。そうなると、どうすれば重心を前へ移動させることができるでしょうか?

 まず膝を前に突き出す方法が考えられますが、これでは指先に体重がかかりやすくなってしまいます。

 そうなると、上半身を前方へ傾けることによって重心を前へ移動させるより他に方法がないことになります。つまりは

   猫背になってしまう

わけです。


 これまでの話の流れを整理してみますと、

   陥入爪になると足の指が痛くなる

   → 足の指が痛いと指を浮かせて歩くようになる

   → 足の指を浮かせると体の重心が後ろへ偏る

   → 重心が後ろへ偏ると後方へ倒れやすくなる

   → 姿勢を安定させるために重心を前へ戻そうとする

   → 重心を前へ動かすために上半身を前へ傾けるようになる

   → 前傾姿勢、つまり猫背になる

ということになります。


 猫背というものは、その語感からして不健康であることからも知れるように、決して「良い姿勢」とは言えません。若いのに猫背だったりすると、見た目の印象も悪くなってしまいます。

 しかも、猫背は医学的に見ても極めて問題の多い姿勢であり、様々な悪影響を体に及ぼす原因となるものなのです。


 どのような悪影響があるのか、これから説明して参りましょう。


(続く)

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