陥入爪を長期間放置すると、姿勢の変化を引きおこして猫背になることを説明しました。では、猫背になるとどのような問題が起こるのでしょうか?

 ここで寄り道をして、ヒトにおける背骨の役割について考えてみましょう。


 背骨は医学用語で「脊椎(セキツイ)」と呼び、ヒトを含む数多くの動物において、体を支える重要な働きをしています。

 ただ、ヒト以外の四足歩行の動物においては、背骨にかかる負担は比較的軽いと言えます。なぜなら、背骨が地面とほぼ平行になっていて圧迫力がほとんどかかりませんし、前脚と後ろ脚の2箇所で支えられているからです。例えて言えば、物干し竿を両端で支えて、そこに内臓や筋肉といった「洗濯物」をぶら下げている状態です。極めて安定した、無理のない構造と言えるでしょう。

 ところが、ヒトの場合は、直立二足歩行をするようになったために、背骨に多大な負担をかけざるを得なくなってしまいました。背骨がほぼ垂直となったために、背骨を押し潰すような強い圧迫力がかかりますし、支えているのは片端の1箇所のみですから安定性にも欠けます。例えるなら、物干し竿を垂直に立てて、途中に「洗濯物」を幾つも引っかけているようなものです。しかも、一番上には重い頭がついているわけですから、とてつもなく不安定な構造と言えます。

 こんな不安定なつくりでありながら、私たちヒトが普通に生活できているのは、強い圧迫力にも耐え得る背骨の強さと、背骨が倒れないように支えている数々の筋肉の働きがあるからなのです。


 では、本題に戻って、猫背が体にどのような悪影響を及ぼすか説明して参りましょう。

 ヒトのような体の構造では、背骨は水平面に対して直角(こういうのを「鉛直(エンチョク)」と言う)の状態が最も安定しています。その状態であれば、背骨を支える筋肉の負担もほとんどなく、倒れそうになってもわずかの力で元通りに戻すことができます。

 ですが、もし、背骨を「ピサの斜塔」のように斜めにした状態にしたまま保つとなったら大変です。


 例えとして、運動会の玉入れの籠(カゴ)を考えてみましょう。ヒトのように背骨の先端に重い頭がついている状態は、丁度、籠の中に玉がいっぱいに入った場合に相当します。

 ここでまず、「棒を垂直(鉛直)に立てていろ」と言われたらどうでしょうか? これなら、バランスさえ保てば力はほとんど要りませんので、例え小学生でも楽に長時間支え続けることができるでしょう。

 では、もし「棒を斜めに傾けたまま支えていろ」などと言われたらどうでしょうか? 力を抜けばすぐに倒れてしまいますから、絶えず足を踏ん張って力を込めて棒を支え続けなければなりません。これでは、小学生はおろか、大人であっても10分も経たないうちに嫌になって音を上げてしまうことでしょう。


 この例えで言うならば、猫背は背骨が斜めに傾いている状態に当たるわけですから、これを維持するためには背筋を初めとした多くの筋肉が絶えず緊張して支え続けていなければならないのです。いかに筋肉の負担がきついかは想像に難くありません。

 つまり、猫背になると体の筋肉、主に背筋は過大な負担を強いられ、休めるのは横になった時くらいということになってしまうわけです。特に、支点に近い腰部では最も強い力が必要であり、一番負担が集中してしまうことになります。

 そうなると、結果として腰痛が生じるのはむしろ当然であり、長引けば痛みの範囲は拡大して背部痛から頸部痛へとつながることとなるのです。


 つまり、猫背はまず

   腰痛・背部痛・頸部痛を引きおこす

というわけです。


 しかも、まだ続きがあります。

 猫背は腰・背・頸部の痛みばかりでなく、何と

   頭痛の原因にさえなり得る

のです。

 どういうことか、さらに説明を加えましょう。


(続く)

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