巻き爪・陥入爪に行われている不適切な「治療」の筆頭が抜爪であることを述べました。では、抜爪はどのような点で「不適切」なのでしょうか?


 まず、この「抜爪」という処置が本来の「治療」と言えるものなのかが問題となります。

 前回の記事で、私は爪のことを歯に例えました。ですが、爪と歯とでは決定的に異なることがあるのです。それは、

   爪は抜いてもまた生えてくる

ということです。

 歯であれば、抜いたらもう生えては来ませんから、どんなにひどい虫歯でも抜いてしまえばとりあえず痛みは治まり、二度と虫歯になることはありません。ですから、虫歯に関する限りは、「抜く」という処置は「治療行為」と呼ぶことができるものと言えるでしょう(それが「最善かどうか」はまた話が別です)。

 ですが、爪というものは、歯と違って抜いても何度でもまた生えてくるのです。この違いは極めて重要です。

 巻き爪で医療機関にかかろうという方の場合、大抵は爪の根元まで彎曲しています。ですから、そういう方の場合は

   爪は生える前からすでに巻いている

と言えるのです。つまり、爪を造る「爪母(ソウボ)」という部分の形がすでに彎曲してしまっているわけです。

 そんな状態の人に対して抜爪をすることが、果たして「治療」と呼べるのでしょうか?

 「治療」と呼べるためには、少なくとも

   前の状態よりも改善していなければならない

はずです。

 ところが、巻き爪の場合は爪を抜いたところで爪母の形態が変わるわけではありませんので、また同じように彎曲した爪が生えてくるのは当然と言えます。これでは「改善している」とは到底言えません。

 陥入爪の場合でも、爪が食い込むほどせり出した肉(軟部組織)が残っている限り、新しくまた生えてきた爪がそこまで伸びれば、また食い込むことは目に見えています。実際、何度も抜爪を繰り返している例では、陥入爪の再発率は

   何と100%

という報告があります。そうなってしまった人は、これからも爪が生えるたびに抜爪を繰り返さなければならないのです。それも、生きている限りずっとです。

 悲惨だとはお思いになりませんか?


 つまりは、「抜爪」という処置は巻き爪・陥入爪を改善しないので、「治療」と呼ぶには値しないものと言わざるを得ないのです。強いて抜爪に「治療的価値」を見いだそうとするならば、「爪がまた生えてくるまでの間、一時的に症状を緩和する」ということくらいしかありません。ですが、こんなことは「麻酔をかけて一時的に痛みを止めている」のと似たようなものでしかなく、他に治療手段がないならともかく、こと巻き爪・陥入爪に関しては全く顧みる価値はありません。


 巻き爪・陥入爪の「治療」と言うからには、一時的でなく、爪が伸びても痛くなったりしない状態へ持って行くものでなければならないのです。


 では、抜爪が不適切である理由は「現状を改善しないから」だけでしょうか?

 いいえ、とんでもないことです。実は抜爪という「治療」は現状を「改善しない」どころか「もっと悪くする」恐れが多分にある、大変に弊害の多い処置なのです。


 どういうことか、さらに話を進めましょう。


(続く)


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