巻き爪・陥入爪に対して、肉に食い込んでいる爪の角を切り取るという処置が行われることがあります。実を言えば、私自身も同様の処置を「有益な治療」と信じて患者に施行していたことがありました。

 ですが、これは一見有益のように見えて、実は治癒を妨げている有害な処置なのです。このことは、以前「賽の河原」や「シシュフォスの神話」の例えを挙げて説明した通りです。

 ところが、残念なことにこういった「爪の角を切り取る処置」は現在でも広く行われているのです。しかも、している側もされている側も、何の疑問も感じずにいるのです。実際には、こういう処置を受けても一時的に痛みが緩和されるだけで、爪が伸びてくれば、また同じように痛くなって同様の処置を繰り返すことになってしまうのですが、不思議なことに、それについて患者が怒ったり騒いだりしたという例はあまり聞きません。むしろ、

   「痛みが取れて感謝している」

とおっしゃる患者までいるくらいです。

 なぜ、皆さんは疑問に思われないのでしょうか? 同じ処置をただ繰り返しているだけで、「出口が見えない状況」にいるというのに、どうしてそのままでいいとしてしまえるのでしょうか?

   私は不思議でなりません。

 それなのに、現時点では巻き爪・陥入爪で痛みを訴えて医療機関を受診すると、多くの場合、当たり前の如く

   「切りますね~」

などと言われて、爪の角を切除されてしまうのです。「足専門外来」と名乗っている特殊外来ですら、例外ではありません。


 そこで、こういった「爪の角を切り取る」という「治療」がいかに不適切なのか、ここで改めて説明し直しておくことと致します。

 (なお、ここで「爪縁切除」と書かずにわざわざ「爪の角を切り取る処置」などという長ったらしい書き方をしたのは、「爪縁切除」と書くと、後で出てくる手術療法のことと混同する恐れがあるからです。ここでは、肉に食い込んでいる部分の爪だけをニッパーや鋏で切り取る処置についてのみ考えることとします。)


 まず、巻き爪・陥入爪で痛みを訴える場合というのは、ほぼ例外なく爪の一部が肉に食い込んでいます。つまり、巻き爪の有無にかかわらず、陥入爪は確実に起こしているということです。ですから、ここでは陥入爪があることを前提に話を進めることとしましょう。


 陥入爪とは「爪の一部が肉に食い込んでいる状態」のことです。そして、それは深爪が主な原因であり、指の先よりも爪が短い状態から起こります。


 爪が指先よりも長く伸びていれば、周囲の肉は爪に押しのけられているので、

   爪の幅いっぱいのスペースが確保されている状態

となります。この状態であれば、通常は陥入爪は発生しないわけです。

 ところが、爪が指先よりも短くなってしまうと、爪で押しのけられていない部分の肉は内側へせり出してきて、爪の行く手を遮る形となります。

 その状態で爪が伸びていくと、どんなことが起こるでしょうか?

 爪の行く手は、肉がせりだしているせいで、爪の幅よりも狭いスペースしかない状態になっていますから、爪が伸びていくためには、邪魔な肉を押しのけていかなければなりません。

 そのとき、爪の先端の角が滑らかな流線形になっていれば、肉を傷つけずにうまく押し広げることができるかも知れません。ですが、少しでも角張っていたり、ましてや尖(トガ)っていたりしようものなら、爪の角が肉に引っかかってしまうのは当然と言えます。そうなると、爪が伸びていくにつれて肉が引っ張られ、最後には引き裂かれてしまうことになるのです。これが

   陥入爪の発生

です。


 こう考えると、こんな状態で「爪の角を切り取る」ということが、いかに愚かしい行為であるかよくおわかりになるでしょう。

 大事なことは、食い込んでいる爪を取り除くことなどではなく、逆に、爪の行く手を邪魔している肉を押しのけて

   爪が幅いっぱいに伸びることのできるスペースを確保すること

でなければならないのです!

 陥入爪で「爪の角を切り取る処置」をするということは、爪の行く手をさらに狭める結果につながるだけなのです!

 ですから、皆さんには、陥入爪で痛みが激しいからと言って、安易に爪の角を切り取って楽になろうとせずに、ぜひとも根本的な治癒へ向けて正しい治療を受けて戴きたいのです。


 では、この「爪の角を切り取る処置」の不適切な点は、単に「その場凌ぎ」や「問題の先送り」というだけの問題でしょうか?

 いいえ、違います。

 実はこの処置には、陥入爪を改善しないばかりか、さらに難治化・重症化させる危険が伴うのです。

 どういうことなのか、さらに話を進めることと致しましょう。


(続く)

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