では次に、「肉芽処置」に属する処置のうちのB.に分類されるものについて考えてみましょう。

 これは、前回にも述べた通り、

   肉芽を消そうとするあまり、肉芽以外の部分にまで影響を及ぼしてしまう

恐れのある処置です。


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B-1.液体窒素などによる凍結


 これは、液体窒素や液体空気、あるいはドライアイスのような低温の液体もしくは固体を肉芽に当てて、肉芽を急激に冷却・凍結させることによって除去しようとする処置です。言ってみれば、

   人為的に凍傷を起こす

処置です。凍傷を起こせば組織は破壊され、放っておいても崩れ去ることになるわけです。

 この処置を行うためには液体窒素などが必要なわけですが、これは一般の皮膚科でもイボを取ったりする際によく使うものですので、皮膚科専門のところであれば大抵置いてあるものです。ですから、陥入爪で肉芽が見られる状態で皮膚科にかかると、この処置をされる可能性は少なくありません。

 この処置も「単に肉芽を除こうとしているだけ」である点では、すでに述べた処置と何ら変わるところはありませんので、当然、陥入爪の根本的治療につながるものにはなり得ません。その理屈についてはもう繰り返さなくてもおわかり戴けるでしょう。

 ただ、違うのは

   影響が肉芽だけにとどまらない

恐れがあることです。

 炭酸ガスレーザーの場合には、レーザーは肉芽の表面でほとんど全て熱エネルギーに変わってしまい、奥までは届きませんので、余程下手をしない限り余計な分まで「焼いて」しまうことはありません。

 ところがこの処置では、イボなどを取る目的で行われる場合でも、使う液体窒素の量が多すぎたり、当てる時間が長すぎたりすると、健常な皮膚まで「凍傷」を起こしてしまい、後で水疱をきたしたりして患者に怒られることがあるのです。その見極めは容易ではありません。

 そのため、陥入爪でこの処置を受けると、液体窒素が陥入爪の陥入部の奥まで入りすぎて、凍傷によって

   さらに傷を深くしてしまう

危険がつきまとうのです。


B-2.薬品による腐蝕


 これは、硝酸銀やフェノールなどの腐蝕性薬品により肉芽を「腐らせる」処置です。一般には、「焼く」という表現を用いる場合もありますが、別に加熱するわけではありません。

 硝酸銀やフェノールは蛋白質を変性させる作用が強く、これに触れた生物や生体組織はほとんど死んでしまう毒性を持っているのです。特に硝酸銀は健常な皮膚でさえ冒すほどの危険性があります。

 これだけの危険な作用を持つ薬品なのですから、これを肉芽にかければ当然肉芽も「腐ってしまい」、崩れてしまうことになるのです。

 そのため、この処置も使う量が多すぎたり、誤って傷の部分に流れ込んでしまったりすれば、やはり

   さらに傷を深くしてしまう

危険が大きいと言えます。

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 このように見て参りますと、ここで挙げた液体窒素や薬品による肉芽処置は、単に肉芽を消すだけにとどまらず、陥入爪の傷をも悪化させる危険を孕んでいることがわかります。

 陥入爪を本当の意味で「治す」ためには、爪が食い込んでできた傷をまず「治す」ことが必要であることは言うまでもありません。それなのに、これらの処置は傷を治すどころかますます深くするような、言わば

   治癒に逆行する

ことにつながりかねないのです。

 これは、例えて言えば、下水管が腐って汚泥が噴き出ている状況で、汚泥を取り除こうとする余り、

   下水管をもっと腐らせて傷を広げる

ようなものです。これを愚かしいと言わずして、何と言うべきでしょうか。


 このような、無意味であるばかりか有害にさえなり得る処置を「治療」と称して行うことは、断じてやめるべきだと私は信じています。

 もし、皆さんがここで挙げたような処置を受けていらっしゃるとしたら、ぜひ考え直して戴きたいと思います。

 お迷いの場合には、私の爪専門外来でも相談をお受け致しますので、どうぞご連絡ください。


(続く)

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