消毒について一般の方が信じていらっしゃるであろう「神話」の一つ目は、

   「消毒は傷をキレイ(清潔)にする」

というものです。

 これは、詳しく言えば「消毒薬を傷口に塗ると、バイ菌(細菌)を殺すと同時に細菌もろとも消えてなくなり、あたかも最初から細菌がいなかったかのような状態にしてくれる」という幻想です。

 「幻想」と書いたのはもちろん間違っているからであるわけですが、一般にはどうにもこういったいいことずくめの効果を消毒に求めている方が多いのです。


 これは例えて言えば、テレビゲームの中の

   シューティングゲーム(STG)のようなもの

です。

 STGでは、敵の戦闘機をミサイルで撃墜したり、異星人を銃弾で倒したりするわけですが、ほとんどのゲームでは標的に弾が当たると同時に標的も弾も跡形もなく消え去って、あたかも初めから何もなかったかのような状態になります。

 ですが、現実にはそんなことにはならないことは誰でもおわかりになるでしょう。敵を倒せば当然その残骸だの死骸だのが残りますし、撃った弾だって決してひとりでに消えたりはせず、その場に残るはずです。それがそういう風になっていないのは、ゲーム画面を見やすくするなどの理由でそうしているに過ぎないわけです。

 なのに、消毒についてもそういったSTGのような感覚で考えがちなのは、実に不思議です。


 つまりは、消毒薬で細菌を殺しても、決して何もなくなるわけではなく、細菌の死骸と消毒薬(またはそれが変化したもの)が傷口に残存することになるのです。

 これは極めて

   当たり前

のことなのですが、実際にはこの当たり前であるべきことが充分に認識されているとは言えないのです。


 では、現実にはどういうことが起こっているかと言うと、消毒薬を傷口に塗ると細菌の死骸と消毒薬(またはそれが変化したもの)が残ります。そのうち、細菌の死骸は量として大したことはなく、生体にとっても容易に処理できるものですからあまり問題になりません。むしろ問題なのは、もう一つの方です。

 消毒薬の説明の記事(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/24897970.html)でも述べましたが、消毒薬のうち、作用後に有害物質を何も残さないのは

   過酸化水素だけ

です。つまりは、他の消毒薬はなにがしか有毒な化学物質が残るのです。実際には過酸化水素の殺菌力は弱く、それだけで細菌を充分に殺すのは無理ですので、ほとんどの場合は他の消毒薬が使われることになります。そして、傷口にはその消毒薬(またはそれが変化したもの)が付着したままとなるのです。これが「キレイ」(清潔)になったと言えるでしょうか? いいえ、これはもう、「汚染された」と表現するより他にありません。

 そうなると、当然の結論として、

   「消毒は傷を(有毒な)化学物質で汚染する」

というのが真実と言わなければならないのです。


(続く)


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