前回の記事で私は

   「巻き爪・陥入爪には(原則として)手術は必要ない」

と書きましたが、意外に思われた方が少なからずいらっしゃるのではないかと思います。ことによると、

   「専門外のくせに何を馬鹿げたことを言っているのだ!」

とお怒りの方もいらっしゃるかも知れません。ですが、私は決して間違ったことを言っているつもりはありません。現時点において、巻き爪・陥入爪に対して行われている「手術療法」は決して「最良」ではなく、手術以外の手段でもっとよく、しかも楽に治すことができることを知っているからです。詳しくはこれから順を追って述べて参りますが、それをお読み戴ければきっと、皆さんも賛同されるであろうと信じております。


 但し、誤解がないようにここで申し添えておきますが、私は決して

   「爪疾患に手術が必要なものがない」

と言っているわけではありません。こと巻き爪・陥入爪に関する限り、手術なしでほとんど治療可能であると言っているだけです。

 そこで、本題の「巻き爪・陥入爪の『手術療法』」についての説明に入る前に、「手術を必要とする爪疾患」について述べておきましょう。


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 爪疾患の中で、手術を要するものは主に以下の通りです。

   A. 爪周囲の悪性腫瘍

   B. 爪周囲の良性腫瘍

   C. 指節骨骨髄炎(しせつこつこつずいえん)


 これから、それぞれについて説明を加えましょう。


A. 爪周囲の悪性腫瘍

 梶原一騎(かじわら・いっき、1936年9月4日-1987年1月21日)原作の有名な『巨人の星』という野球漫画がありますが、その中で主人公の星飛雄馬(ほし・ひゅうま)の恋人として登場する日高美奈(ひだか・みな)という女性(看護師の服を着てその仕事をしているが、看護師の資格は得ていない)は、手の爪にできた『死の星』のために亡くなります。この『死の星』は、医学的には悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)であると推定されます。

 このような悪性腫瘍がもし爪に生じたら、これはもう手術で切除する以外に有効な治療法はありません。(ただ、実際には爪そのものに悪性腫瘍が生じることはなく、爪母部(爪を造る部分)に生じる場合がほとんどです。その場合には爪には黒い縦帯のような線が入ることになるので、『死の星』のようにはなりません。)

 爪に関連する悪性腫瘍としては、悪性黒色腫の他の皮膚癌も起こり得ますが大変まれなもので、私も1例しか見たことがありません。


B. 爪周囲の良性腫瘍

 悪性腫瘍なら当然手術で切除しなければならないわけですが、良性であっても手術しなければならない場合があります。

 主に問題になるのはグロムス(glomus)腫瘍と爪下外骨腫(そうかがいこつしゅ)の2つです。

 グロムス腫瘍は、爪床部に生じることが多い腫瘍で、痛みが強いため、これができると爪の裏側が痛くてたまらなくなります。また、これのせいで爪の正常な伸長が妨げられ、爪が変形を起こすこともあります。ですから、これも手術による切除が必要となります。

 爪下外骨腫は、爪の丁度裏側に当たる部分の骨に突起ができるもので、これがあると爪床部がそこだけ山のように盛り上がってしまい、爪が変形してしまいます。これも自然に治ることはないので、手術による切除が唯一の治療法となります。


C. 指節骨骨髄炎

 これは、主に陥入爪などが原因で瘭疽(ひょうそ)となり、その炎症が骨にまで及んでしまった状態を指します。

 瘭疽までなら、抗生剤療法で治る可能性もありますが、骨にまで炎症が及んでしまうと、もうそれだけでは治らず、骨の一部を削る手術が必要になることが多いのです。

 上に述べたA.、B. は予防するわけには行きませんが、この指節骨骨髄炎については、陥入爪を早期に治療することで防ぐことができますので、ここまで悪化するまで放置しないことが大切です。


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 このように、「手術を要する爪疾患」というものも確かに存在します。ですが、いずれも滅多に見られないものですので、実際には爪疾患で手術しなければならない場合というのは極めてまれなのです。

 それ以外の大部分の場合なら、手術なしで充分に治せるのです。

 よくわからないとおっしゃる方は、手術を決断なさる前にぜひとも然るべき医療機関にご相談ください。


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  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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