これまでとりあげてきた「手術」は爪自体に手を加えるものでしたが、今回問題にする「手術」は「指の肉(専門用語では『軟部組織(ナンブソシキ)』と呼ぶ)を切り取る」というものです。

 どういうことかと言えば、食い込んでいる爪を何とかする代わりに、「食い込まれている」肉の方をどかしてあげようという発想の「手術」なのです。具体的には、指に横からくさび状に切り込みを入れて肉の一部を切り取り、縫い縮めることによって肉の量を減らし、爪から遠ざけるという方法をとります。

 この「手術」はこれまでのものと違って、爪そのものを破壊しないだけ、まだ「マシ」な方法と言えます。少なくとも、後に禍根を残す度合いから言えばはるかに無難な方です。

 ですが、結論から言えばこの「手術」もやはり

   不適切

と言わざるを得ない「治療手段」なのです。ただ、同じ「不適切」と言っても、これまでの「かえって悪くしてしまう」ひどさとは意味合いが異なり、言ってみれば

   非効果的

だというべきものなのです。


 わかりやすくするために、図で説明致しましょう。

 まず、巻き爪の程度が比較的軽く、爪がほぼ半円状になっている時期を考えてみましょう。下の図は、そういう軽度の巻き爪・陥入爪の状態に、この「指の肉を切り取る『手術』」をした様子を表しています。

指の肉を切り取る手術1-1

 このように、指の肉の一部を切り取り、縫い縮めることにより、爪が食い込んでいた部分の肉を爪から「引き離し」て、陥入の程度を軽くしようというわけです。

 皆さんはこれをご覧になって、どうお感じになりますか?

    「なぁーんだ、大したことないじゃん」

とお思いの方、正解です。もし皆さんがそういう方ばかりであるならば、もう今回の記事はこれでおしまいにしてもよいくらいなのですが、恐らくは、

    「おっ! なかなかいい手術じゃん!」

とお感じになる方もいるのではないでしょうか。

 確かに図を見る限り、手術後の陥入爪の程度は改善しているように見えます。ですが、実はこの「改善」は一時的なものでしかなく、いずれまた元の状態(もしくはもっと悪い状態)に戻ってしまうのは確実なのです。


 そう断言できる根拠は3つあります。


 1つ目は、爪には元々「丸くなっていく性質がある」からです。以前の記事(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/15540985.html)でも触れました通り、爪は放っておけばどんどん丸くなっていく性質を持っているのです。ですから、爪の形を理想的な状態に保っておくためには適度に歩いて足の指の腹に圧迫力を与え、それにより爪の両端を持ち上げる力を生み出すことが必要となるのです。そう考えますと、この「手術」を受けるということは

    爪に力が加わらなくなる

ということになってしまうわけですから、巻き爪がこれまで以上に急速に進んでしまうことはほぼ間違いないのです。


 2つ目は、「切り取られた肉はまたいずれ再生する」からです。指の肉だって、ただ無駄に付いているわけではなく、それだけの太さになっているからにはそれなりの理由があったはずです。人体は、欠けた部分を修復する能力を持っていますから、肉を切り取ってもまた時間が経てば同じくらいの指の太さになるだけの肉が増殖するであろうことは想像に難くありません。ですから、一時的に肉を爪から遠ざけても、また肉の増殖によって爪に当たるようになってしまうことは充分に考えられるのです。


 3つ目は、「歩くことによって指の肉が移動する」からです。歩くと足の指の腹に圧迫力が加わるのは既に述べた通りです。そうなると、圧迫力が加わったことにより指の腹の肉が横に移動して、ひいては肉がまた盛り上がって爪に当たるようになってしまうことが濃厚に予想されるのです。


 このような理由から、この「指の肉を切り取る『手術』」をして一度改善したように思われる指も、時間が経つとまた状態が悪くなっていくことが避けられないと結論づけられるのです。以上述べたことを図にまとめると、下図のようになります。

指の肉を切り取る手術1-2

 つまり、せっかく痛い思いをしてこの「手術」を受けても、いずれまた元の木阿弥(もくあみ)になってしまうわけです。


 しかも、これは巻き爪・陥入爪が「軽症」だったらという話です。

 これがもっと重症な例の場合にはもっと悲惨なことになるのです。図で示しましょう。

指の肉を切り取る手術1-3

 巻き爪がある程度以上進んだ状態ですと、食い込んでいる部分が骨近くになってしまうため、いくら肉を切り取って縫い縮めたとしても、ほとんど改善が期待できないのです。そうなると、この「手術」の効果など

   初めからない

ということになってしまいます。


 如何でしょうか? 最初にこの「手術」に対して好意的な感想を持たれた方も、きっと考えを改められたのではないでしょうか?

 そうです。この「指の肉を切り取る『手術』」というものは効果がないか、あっても一時的なものに過ぎないのです。これでは全くもって釣り合いません。

 しかも、現実には指の肉には血管や神経などの重要な組織も含まれているため、上の図のようにごっそりと切り取ることなど不可能であり、もっとごく少ない量しか切除できません。そうなれば、効果のほどなど

   「推して知るべし」

でしょう。


 つまり結論として、こんな「手術」は存在意義がなく、

   不適切である

と言う他にないのです。


 皆さんも、もしこのような「手術」をすすめられたら、決して安易に受けることなく他の医療機関にも相談してよく熟考するようにして戴きたいと思います。私の「爪専門外来」でも相談をお受け致しますので、お迷いの方はぜひともご連絡ください。


(続く)


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                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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