前回の「指の肉を切り取る『手術』」と同じく、今回とりあげるのも、爪よりはむしろ指の肉の方に手を加える「手術」です。

 ただ、ここでとりあげる「手術」はより一層過激であり、言ってみれば

   「巻き爪を力尽くで無理矢理矯正してしまおう」

という、如何にも外科的に根治を目指すものになっているのです。ですから、これからご紹介する「手術」にはそれなりの「治療効果」があると言うべきでしょう。

 しかし、それでもなお、これらの「手術」はやはり巻き爪・陥入爪の治療手段として

   不適切である

と言うべきものなのです。なぜなら、ある程度の「治療効果」があるとは言え、それが手術なしでも得られる程度のものでしかないので、わざわざ手術をする意味がないからです。


 原則として、手術をしない治療(専門用語で「保存的治療」と言う)と手術とを比較する場合、効果が同程度であるならば保存的治療の方が優れているのは当然のことです。手術には必ずある程度の侵襲(メスで切るなどによる身体への損害)が伴い、麻酔をするにしてもその痛みがないわけではなく、また、現代医学が進歩したとは言え、麻酔に伴う事故や感染の危険も決して零(ゼロ)にはならないからです。

 ですから、手術が適切な治療手段として認められるためには、

   他に治療手段がない

か、または

   治療効果が保存的治療よりも明らかに優れている

かでなければならないのです。

 その点で、これから挙げる「手術」は

   他に治療手段があり、

しかも

   治療効果が保存的治療と同等かそれよりも劣っている

というわけなのです。

 ですから皆さんは、もしこのような「手術」をすすめられたり指示されたりしたとしても、決して即決はせず、他の医療機関(私の爪専門外来でももちろん結構です)に相談して戴きたいのです。手術を受けてしまってからでは、まず元には戻せませんので、ぜひとも

   手術前に

ご相談戴きたいと思います。


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 ここでは、代表的なものとして、『爪床爪郭弁法(ソウショウソウカクベンホウ)』と『爪床形成法(ソウショウケイセイホウ)』の2つをとりあげることと致します。


 まずご紹介するのは

   『爪床爪郭弁法(ソウショウソウカクベンホウ)』

という「手術」です。これは主に以下の論文にて公表されていますので、詳しくは当該論文をご参照ください。

   ○ 大野宣孝、竹内ひろみ他 : 陥入爪の手術法. 日形会誌、2 : 231 - 238, 1982.

   ○ 桑名隆一郎、浦田喜子他 : 爪床爪廓(原文ママ)弁法による陥入爪の手術法. 臨皮、42 : 179 -182, 1988.


 手術法の名前の意味は、

   「爪床弁(爪床部を含む皮弁(軟部組織の付いた皮膚の一部を体から剥離して、

他の場所へ移動できるように弁状にしたもの。体から完全に切り離すのではなく、血管や神経が

つながっており、血流が保たれているものを言う)
と爪郭弁(爪郭部(爪の両側にある

皮膚)
を含む皮弁)
とを作成し、互いに位置を入れ換える方法」

ということです。具体的には、爪の中央部以外の部分を抜爪した後、爪床部の両端を指の骨から剥がして持ち上げ、その下に爪縁部の指の肉を詰め込んで平らになるようにして縫合するものです。ですが、これだけでは複雑過ぎてわかりにくいと思います。

 そこで、この『爪床爪郭弁法』を簡略化して図で説明することと致しましょう。


 まず、下の図1 のように

爪床爪郭弁法-01



巻き爪になった爪の中央部だけを残して、両端の部分の爪を抜いてしまいます。

 それから、図2 のように、

爪床爪郭弁法-02

爪の縁があったところからメスを入れて骨に達するまで切開し、骨膜(骨を覆っている膜)ごと骨から剥がしてしまいます。爪縁の部分の皮膚は、剥離しておきます(後で使います)。

 そして、最後に図3 のように、

爪床爪郭弁法-03

爪床部と骨との間にできた隙間に爪縁部の肉を詰め込み、剥がしておいた皮膚で傷口を覆って縫合して終了です。このようにして、丸く彎曲していた爪床部を平たく「整形」するわけです。


 如何でしょうか? この「手術」の概要がおわかりになりましたでしょうか?

 ここで、皆さんはどのようにお感じになりますか? 

   「巻き爪に対して行うにしては大がかり過ぎる」

とは感じませんか?

 確かにこの『爪床爪郭弁法』という「手術」は巻き爪を「治して」はいます。ですが、切開が広範囲に及びますので痛みも激しいでしょうし、術後の回復にも期間がかかるでしょう。また、当然入院が必要になり、かかる費用も高額になると考えられます。

 果たして巻き爪は、こんな大がかりな手術をして治さなければならないほどのものなのでしょうか。私は全くそうは思いません。保存的治療でもこれと同等以上の治療効果を挙げることができるからです。

 このような多大な負担と苦痛を伴う「手術」はやはり不要であり、

   不適切である

と言うより他にないのです。


(続く)


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