爪亭八楼(つめてー・やろう):「さあて、小難しい話が続きやしたんで、ここらで一つ漫談と参りやしょう。旦那方もちょいとばかしお付き合いのほどを・・・。

 もう立春も過ぎたってぇのにまだまだ寒い日が続きやすねぇ。昨日なんか関東全体がえれぇ雪で、朝なんかまるで雪国でやんした。まさに『早春賦』の

   『春~は名~のみ~の風の寒さや~♪』

の世界で、まだまだ寒い毎日が続くようでやんすねぇ。こんな寒ぃ日にゃあ、風邪(かぜ)、特にインフルエンザになりやすいから気をつけなきゃいけやせん。旦那方、インフルエンザのワクチンは済ませなさったかい? おぉおぉ結構、結構。


 ところで、ワクチンってぇ言やあ、

   『ヒブ(Hib)ワクチン』

ってぇのもあって、これは子供に髄膜炎を起こしやすい

   Haemophilus influenzae type b(インフルエンザ菌b型)』

って言う細菌の名前を略して呼んでるわけでやんす。

 ここですかさず、

   『ちょおおっと待ったああ!』

と、来やしたねぇ。期待通りのツッコミが。

   『「インフルエンザ菌」ってぇ名前なら、「インフルエンザ」を

起こすんじゃねぇのかい?!』

そうそう、まさにそうでやんすよねぇ。でも、違うんでやんすよねぇ。『インフルエンザ菌』ってぇのは確かに髄膜炎なんかの病気を起こしはするが、インフルエンザは起こさねぇ。インフルエンザは

   『インフルエンザウイルス』

ってぇ言う、細菌よりずーっと小せぇ『ウイルス』ってぇ奴が起こすんでやんす。

 ここで本日のお題と参りやしょう。

   『インフルエンザを起こさないのに

「インフルエンザ菌」とは、これ如何に?』



 実を言やぁ、『インフルエンザ菌』ってぇ名前はそもそも

   間違い

だったんでやんすね。

 昔は電子顕微鏡なんてもんはなかったもんだから、普通の顕微鏡(光学顕微鏡のこと)で見えるものしかわからなかったわけで、細菌は見えてもウイルスなんて小っけぇもんは見えなかったんでやんすな。そんなわけで、インフルエンザ患者から見つかった細菌をてっきり『インフルエンザの原因だ』と思い込んじまって、『Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)』って名付けちまった。ところが後になって、本当はウイルスが原因だったことがわかった。『インフルエンザ菌』って名付けた細菌はたまたま一緒に感染していたってことだったんでやんすね。

 でも、そん時にゃあ、もう『インフルエンザ菌』の名前が定着しちまってて、直しようがなくなってた。そこで、(本当は無関係なんだが)名前にだけ『インフルエンザ』が残っちまったってぇわけよ。


 似たような例は他にもありやして、有名なところじゃ、あの千円札の肖像にもなっている野口英世(のぐち・ひでよ、1876年11月9日-1928年5月21日)の逸話がありやす。

 野口英世は、よく知られているように『黄熱病(オウネツビョウ)』の研究に生涯を捧げたわけでやんすが、その研究の中で、『黄熱病』とよく似た症状の患者から細菌を見つけて『これこそが黄熱病の原因だ』と考えて『Leptospira icteroides(「黄疸レプトスピラ」という意味)』って名付けたんでやんすね。ところが、『黄熱病』の原因も実はウイルスだったことが後でわかって(野口英世自身も晩年に気付いていたそうです)、結局彼自身も黄熱病で亡くなることになったわけでやんす。野口英世が見つけた細菌は、実は『ワイル(Weil)病』って言う別の病気を起こす『Leptospira interrogans serovar icterohaemorrhagiae(黄疸出血性レプトスピラ)』だったんでやんすね。


 そんなわけで、お題への答えは

   『インフルエンザを起こさないのに

「インフルエンザ菌」とは、これ如何に?』


   『黄熱病を起こさないのに

「黄疸レプトスピラ」と名付けたが如し』


 お後がよろしいようで」


   
m(__)m


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。

  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。

                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
                             メールアドレス: miyataatsushi8@gmail.com



人気ブログランキングへ