これまで私は繰り返し何度も

   巻き爪・陥入爪に手術は不要である

と言ってきました。そして、巻き爪・陥入爪に対して行われてきた「手術」を悉く

   不適切である

と断じてきました。もちろん、それなりの根拠があってのことなのですが、この主張は実は現在の日本で(そしてアメリカを含む世界全体で)一般に行われている「治療」に

   真っ向から歯向かっている

ものなのです。おそらく、皮膚科や整形外科の学会などでこのような主張を繰り広げたら、罵声を浴びるか嘲笑の的になるのは目に見えているのです。

 ですが、私は主張を変えるつもりはありません。手術なしで巻き爪・陥入爪を治せる方法を知っている以上、わざわざ手術をしなければならない理由はどこにもないのです。


 ところが、現在、巻き爪・陥入爪に対して行われる「標準的治療」と言えば、今回からとりあげる

   『鬼塚法(オニヅカホウ)』

という「手術」になってしまっています。この手術は医療保険にも収載され、厚生労働省の「お墨付き」の「治療」という扱いにもなっているため、皆さんが中等度以上の巻き爪・陥入爪のために医療機関を受診したら、ほとんどの場合、この「手術」をすすめられることが予想されるのです。

 それだけ、『鬼塚法』という「手術」は有名であり、「巻き爪・陥入爪の手術の代名詞」と言ってもよいくらいなのです。

 では、この『鬼塚法』とはどういう「手術」なのでしょうか? その利点と欠点はどうなのでしょうか? これから詳しく述べていくことと致しましょう。


 『鬼塚法』とは、正式には

   『爪郭爪母楔状切除術(ソウカクソウボケツジョウセツジョジュツ)』

と呼ばれるもので、具体的には、「爪の片方(両方の場合もある)の一部を切り取り、それと共に爪縁部の皮膚も爪母部も切除して、爪の幅を狭くする手術」と言えます。詳しくは次の論文に公表されています。

   ○ 鬼塚卓也、小島和彦 : Ingrown nail, 爪刺(陥入爪)について. 皮膚臨床、10 : 1215 - 1221, 1968.

 この論文が有名だったため、筆頭著者の名前から『鬼塚法』と名付けられたのです。

 切除後に傷口を縫合するのが『鬼塚法』なのですが、それ以外にも、傷口にフェノールという薬品を塗って肉芽(ニクゲ)の発生を抑える『フェノール法』という「手術」など幾つかの方法があります。ですが、ここではそれらの
「手術」も含めて『鬼塚法』と呼ぶことと致します。


 例によって、文章だけではイメージがつかみにくいと思われますので、改めて図で説明致すこととしましょう。

 まず、下の図1のように

鬼塚法-01

爪の片方の縁を短冊状に切り取り、それと一緒に爪縁部の皮膚と爪母部をメスで切除します。その際に、爪母部の組織を残してしまうと後で爪が生えてきてしまいますので、充分に深く切り取ります。

 そして、図2のように

鬼塚法-02

傷口に金属でできた「鋭匙(エイシ)」と呼ばれる器具を入れて強くこすり、骨の表面の骨膜を削り取るまで掻爬(ソウハ)します。これは、爪母部を完全に取り除くために重要な操作となります。最後に傷口を縫合して終了となります。『フェノール法』では、ここで傷口にフェノールを塗り、アルコールで洗った後、そのまま傷口を乾燥させるということとなります。


 『鬼塚法』がだいたい、どのような「手術」かはこれでおわかり戴けたでしょう。

 では、次に、この『鬼塚法』はどのような「治療的意味合い」を持っているのかについて考えてみることと致しましょう。


(続く)


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