前回の記事で、『鬼塚法』に代表される『爪郭爪母楔状切除術』がどのような「手術」なのか大体おわかりになったと思います。

 繰り返しになりますが、現在この「手術」は日本で、いや世界でも、最も「標準的」とされているものなのです。これだけ普及しているからには、この『鬼塚法』にはそれなりの利点、つまり「治療効果」が認められていることになります。

 では、『鬼塚法』に認められている「治療効果」とは如何なるものなのでしょうか? まず仮に、『鬼塚法』支持者の立場に立ってみて、『鬼塚法』を弁護するつもりでその「治療効果」を考えてみましょう。


 まず、巻き爪の「治療」として『鬼塚法』を行う場合について考えましょう。

 巻き爪の場合、爪の幅が広ければ広いほど爪の彎曲の程度はひどくなります。ということは、爪の幅を狭くすれば(曲率が変わらない限り)彎曲の程度は軽くなることとなります。しかも、巻き爪の巻き方によっては、爪の両端だけが特に強く巻き込んでいることがあるため、そういう例では爪縁の一部を切り取ることによって大いに彎曲が改善されるわけです。

 これが、巻き爪に対して『鬼塚法』がもたらす「治療効果」ということになります。つまり、

   「爪の幅を狭くすることによって、爪の彎曲の程度を軽くする」

ということです。


 このように考えてみると、『鬼塚法』は巻き爪に対して充分な「治療効果」が期待できるように思われてくることでしょう。

 では、陥入爪に対してはどうでしょうか? 次にそれを考えてみましょう。


 陥入爪の場合、爪の片端または両端が肉に食い込んでいて、しかも大部分の場合、爪が短すぎていて爪の伸びて行く先が肉によって狭められている状態にあります。

 そうなると、爪の端の食い込んでいる部分を切り取ってしまえば食い込みがなくなりますし、爪の幅が狭くなれば、肉によって狭められたところも引っかからずに通過できるようになる(はず)と考えられます。そうなれば陥入爪は治り、その後の再発も抑えられるわけです。

 これが陥入爪に対する『鬼塚法』の「治療効果」と考えられます。つまり、

   「爪縁の陥入を解消し、なおかつ爪の自然な伸長を助ける」

ということです。


 このように考えてきますと、『鬼塚法』という「手術」は誠に真っ当で、実に理に適(かな)った「治療手段」と思われてきます。皆さんは如何ですか? このように説明されれば、何の疑問もなく納得しておしまいになるのではないでしょうか?

 もし、皆さんが患者としてこの『鬼塚法』をすすめられた場合でも、以上のような説明をされれば拒むのは困難であろうと思われます。「他に打つ手がないほどひどい巻き爪・陥入爪なら、受けてもよいのではないか」と考えても不思議はありません。

 恐らく、だからこそ、この『鬼塚法』はこれだけ広く普及するに至っているのであろうと私は考えています。


 ですが、それでも私はこの『鬼塚法』という手術には

   反対

なのです。

 確かに『鬼塚法』には上で挙げたような「治療効果」がないわけではありません。しかし、同程度の「治療効果」ならば充分に保存的治療で得られますし、『鬼塚法』にはこれらの「治療効果」だけでなく幾つもの

   欠点

がどうしてもつきまとうのです。そして、それらの欠点は実に大きな問題になり得るものなのです。

 次からは、その『鬼塚法』の欠点について説明して参りましょう。


(続く)


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