長いこと「巻き爪・陥入爪の標準的手術」とされ、今でも全国で(そして世界でも)普通に行われている『鬼塚法』という「手術」について考えてきました。

 『鬼塚法』は、それなりの目的があり、意義らしきものもあるものの、それと同時に様々な欠点があることから一般的にはおすすめできない「治療法」であることがおわかりになったことと存じます。


 しかし、これまで述べてきたことは実は末節であり、

   『鬼塚法』にはもっと根本的な問題がある

のです。それは、『鬼塚法』がそもそも

   巻き爪・陥入爪の治療手段と言えるのか

ということです。『鬼塚法』は巻き爪・陥入爪を果たして本当に「治している」と言えるのでしょうか? ここに大きな問題があるのです。

 これまでは、半ば意図的にこの問題を素通りして、『鬼塚法』が巻き爪・陥入爪の治療手段の一つであるということにして話を進めて参りました。この方が現状に即していて、受け入れやすいと考えたからです。ですが、『鬼塚法』が真に「治療手段」と言えるものなのかの検証は一切してきませんでした。

 現在『鬼塚法』を施行されている医師は、恐らく

   「そんなことは自明のことだ」

とお考えでいらっしゃるに違いありません。ですが、ここは冷静に考えてみる必要があるのです。

 実は、私は『鬼塚法』を巻き爪・陥入爪の治療法とすることが自明だとは考えておらず、むしろ

   大いに疑問だ

と考えているのです。


 『鬼塚法』が元々、巻き爪・陥入爪を「治している」と言えないものであるとするならば、治療手段としての優劣を論じること自体が無意味と言わざるを得ません。

 そこで、本源に立ち返って、「『鬼塚法』とは巻き爪・陥入爪にどういう効果をもたらすものなのか」から検証し直してみることと致しましょう。


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 まず、巻き爪について検証していきましょう。

 そもそも、「巻き爪」とはどういう状態でしょうか? 

 そうです。「爪が過度に彎曲している状態」のことですね。


 ということは、言い換えれば巻き爪とは

   「爪の曲率が大きくなり過ぎた状態」

となるわけです。

 そうなれば、「巻き爪を治す」ためにはどうすればよいかと言えば、爪の彎曲の程度を軽くすること、つまり、

   「爪の曲率を小さくすること」

こそが本来の巻き爪の治療であるべきなのです。

 持って回ったような言い方をしましたが、話は単純です。要するに「巻き爪とは爪が丸まり過ぎているのだから、それを平たく伸ばせばよい」ということなのです。


 このことから考えれば、ある「治療」が本当に巻き爪を治しているのかどうか評価するには、

   「爪の曲率を小さくしているか否か」

で判断すればよいわけです。

 如何でしょうか? 果たして『鬼塚法』は爪の曲率を小さくしているでしょうか?

 答えは明白です。

 『鬼塚法』は、その術式から考えても、単に爪の幅を狭くしているだけであり、爪の曲率には何の影響ももたらしません。つまり、

   「『鬼塚法』は巻き爪を『治している』とは言えない」

という結論になってしまうのです。と言うよりも、むしろ

   「そもそも『鬼塚法』は『巻き爪の治療』になっていない」

と言わざるを得ないのです。巻き爪とは初めから目的と手段が乖離しているのです。それをむりやり巻き爪の治療法として適用しようとするから数々の問題が生じるのです。


 医師も患者も、そろそろこの単純な事実に気付くべき時です。


 実際、『鬼塚法』などを無理に応用しなくとも、本来の巻き爪の治療法、つまり

   「爪の曲率を小さくする方法」

がちゃんとあるのです!

 皆さんも、ぜひとも目を曇らせることなく、適切な治療手段を見極めるようお気を付けください。


(続く)


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