前回の記事で、『鬼塚法』という「手術」は、少なくとも巻き爪に対しては

   「治療」とは言えない手技である

ことがおわかりになったと存じます。

 では、陥入爪に対してはどうでしょうか? これから検証していきましょう。


 まず、「陥入爪」とはどういう状態でしょうか?

 そうですね。

   「爪が皮膚に食い込んで傷を作っている状態」

ということになります。ここまでは、恐らくどなたも異論はないことと存じます。

 では、なぜ爪が皮膚に食い込むのでしょうか?

 このように聞かれたとき、あなたはどうお考えになりますか? おそらく大部分の方がこうお答えになるのではないでしょうか。

   「爪が皮膚のある場所に刺し込まれたから」

 つまり、本来皮膚が占めていた空間に爪が「侵入」してきたせいであると考えるわけです。このようにお考えの方は、患者に限らず医師にも非常に多いと思われます。

 元々皮膚が存在していた空間に爪が入り込んで来た場合、皮膚と爪とが同じ空間に同時に存在することは不可能ですので、どうしてもどちらかが排除されることになります。そうなるとどちらが排除されるかと言えば、当然、柔らかい方が排除されるに決まっています。爪は歯や骨に次いで硬い組織なのですから、当然、皮膚よりも遙かに硬いことになります。となると、排除されるのは専ら皮膚の方となるわけです。

 もし仮に、爪よりも硬い皮膚というものがあったとすれば(そんなものはありませんが)、排除されるのは爪の方となり、爪が割れたりひしゃげたりして、陥入爪は発生しないことになるわけです。


 以上に述べたことは、爪をナイフに例えればもっとわかりやすいでしょう。

 つまり、皮膚にナイフが刺し込まれた場合、同じ空間にナイフと皮膚とが同時に存在することはできませんので、どちらかが排除されることになるわけですが、ナイフと皮膚とを比べれば明らかに皮膚の方が柔らかいので、皮膚が排除されて「刺し傷ができる」という結果となるのです。これがもし、ドイツの有名な大叙事詩『ニーベルンゲンの歌(Das Nibelungenlied)』の主人公のジークフリート(Siegfried)のように鋼のような皮膚であったならば、ナイフが刺し込まれても、ナイフの方が折れて排除される結果となるわけです。


 このように陥入爪を捉え直してみると、「陥入爪を治す」ということがどういうことであるべきかが自ずとわかってきます。

 陥入爪が起こるのは、爪と皮膚とが同じ空間に同時に存在しようとするがためであるわけですから、それを治すためには

   爪と皮膚のどちらかをその空間から排除すればよい

ということになるのです。


 ここまでわかったところで、問題の『鬼塚法』について考えてみましょう。『鬼塚法』は陥入爪を治していると言えるか否か?

 答えは明らかです。

 『鬼塚法』とは爪の食い込んでいる部分を切除する「手術」であるわけですから、陥入爪になっている空間から爪を排除していると言えます。つまり、

   『鬼塚法』は陥入爪の治療になっている

ということになるのです。この点では、巻き爪の場合と違って、いちおう合目的的であると言えます。

 現在、『鬼塚法』が陥入爪の「標準的手術」とされているのも、強(あなが)ち根拠がないわけではないのです。


 しかし、では、これをもって

   「『鬼塚法』は陥入爪の『正しい』治療法である」

と言えるかというと、そうは行きません。

 物事は、単に目的を達すればよいというものではなく、そのための手段が適切か否かの評価も必要なのです。


 私は上でこう結論づけました。陥入爪を治すためには

   爪と皮膚のどちらかをその空間から排除すればよい

と。ですが、ご注意ください。私が決して

   爪をその空間から排除すればよい

と言っているのではないことに。

 つまり、排除するのは爪でも皮膚でもよいのです。そうであれば、まず「どちらを排除するのがより適切なのか」を検討するのが筋というものです。

 『鬼塚法』は、その問いを素通りして、「排除するのは爪の方である」と決めつけている方法なのです。


 果たして、排除されるべきなのは本当に爪の方なのでしょうか?

 ここに大きな問題があるのです。


(続く)


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