現在、日本で、そして世界でも「巻き爪・陥入爪の『標準的手術』」とされている『鬼塚法』という「手術」について、これまで長々と論じてきました。

 最後に、私が『鬼塚法』をどう捉えているか、その要点をまとめて結論とすることと致します。


 最も重要なことは次の一点に尽きます。

   『鬼塚法』は「爪の幅を狭くする手術」である。

従って、その対象は「爪の幅が広すぎる場合」

に限られる。


ということです。

 つまり、『鬼塚法』の適応とされている巻き爪や陥入爪は、決して「爪の幅が広すぎることが原因になっている」わけではないのですから、本来、『鬼塚法』の対象とすべきではないのです。

 現在、『鬼塚法』を施行されたがために生じている様々な問題(副爪、爪の変形、爪の幅が狭くなりすぎることなど)は、『鬼塚法』を適用しなければ初めから起こらなかったはずの問題であり、上に述べた原則通りに治療法を選択すれば未然に防げるものなのです。

 これまで当ブログの記事をお読みになった方であれば、きっと上記の結論に同意してくださることでしょう。


 では、なぜ、いまだに『鬼塚法』が巻き爪・陥入爪の「標準的手術」として大手を振ってまかり通っているのでしょうか?

 私が考えるに、これには大きく3つの可能性があるのです。


 一つ目は、

   『鬼塚法』が最良の治療法だと思い込んでいる

可能性です。これは、職場や先輩医師から教わったまま、何の疑問も抱くことなく『鬼塚法』を施行し続けている場合が相当します。言ってみれば、「巻き爪・陥入爪の治療に対する意識が低い状態」です。

 以前にも述べましたが、巻き爪・陥入爪といった爪の疾患は専門的に扱う医師がほとんどいないため、関心が低い傾向にあります。そのため、扱いも片手間やお座なりなものになりやすく、真剣に対応してもらえにくいのです。実際、治療に当たることの多い皮膚科や整形外科では、他に対応しなければならない疾患が山ほどあり、爪の問題に時間を割いて対応する余裕などほとんどないのが実情なのです。

 そのため、「巻き爪・陥入爪など、こじれたら『鬼塚法』を使えばいいのだ」という思考で停止してしまい、その先まで考えを巡らせる必要性を感じないでいることがあり得るのです。

 この場合には、当事者である医師が『鬼塚法』に対して問題意識を持たないことには解決の見込みはないと思われます。


 二つ目は、

   『鬼塚法』が最良でないことはわかっているが、

他によい治療法を知らない(またはできない)


可能性です。これは、一つ目の場合に比べればまだしも「意識が高い」状態と言えます。

 これは考えてみれば、実に「惜しい状態」と言えます。このような状況を改善するには、医学教育の場でもっと爪の疾患について採り上げるか、それが時間的に無理なら、せめて一般医家向けの爪治療の講習会をもっと普及させるべきでしょう。

 実際、内科が専門である私でさえ、1回の講習会と自習のみで習得できているのですから、ほとんどの医師は意欲さえあれば習得し実践できるものと信じています。


 三つ目は、

   『鬼塚法』以外の治療も施行できるが、保険適用外なので

(職場の都合で、または金銭的な理由で)行えない

可能性です。これは、爪治療に対する意識が充分に高いにもかかわらず、それを医療現場で生かせないという残念な状態です。

 現在、日本の医療保険制度では、巻き爪・陥入爪に対する『鬼塚法』などの手術は保険適用になっていますが、巻き爪に対する爪矯正治療や陥入爪に対する「溝形成法」などは適用とされていません。そのため、そういった『鬼塚法』以外の治療を行おうとしたら、赤字になることを覚悟して、報酬の低い「処置」として算定するか、または、患者の同意のもと、全額自費とするかしかなくなってしまうのです。

 ですから、そのような収益増加に逆行するような診療を職場から禁じられたり、また、患者が自費となることに同意されなかったりした場合には、不本意ながら『鬼塚法』を施行せざるを得ないことになりかねないのです。

 このような状態を根本的に解決するには、もはや保険適用範囲を広げて、爪矯正治療や「溝形成法」も保険で行えるようにしてもらう以外にありません。いつか、そのようになる日が来ることを私は願っています。


 以上述べた通り、今現在の日本ではまだ『鬼塚法』は主流の地位を占めています。ですから、背景のどのような事情があるにせよ、患者が巻き爪・陥入爪で医療機関を受診すれば当たり前の如く『鬼塚法』をすすめられる(または指示される)ことが充分に予想されます。

 私は、『鬼塚法』が現在も行われている事情について理解は致しますが、だからと言って、

   「『鬼塚法』は巻き爪・陥入爪の治療法として不適切である」

という主張を枉(ま)げることはできません。

 ですから、もしあなたが医療機関で『鬼塚法』もしくはそれに類する「手術」をすすめられた場合には、決して即決されることなく、考える時間を作って戴きたいのです。

 他の医療機関(私の「爪専門外来」でももちろん結構です)に相談されてから決定しても、決して遅くはありません。


(この項終わり)


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 爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。

  医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/

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 また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。

                             医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
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