次にご紹介するのは、一般に

   「アンカーテーピング法」

と呼ばれている方法です。ただ、これでは具体的に何をどうするのかわかりませんので、言い換えますと

   「爪甲周囲の軟部組織(側爪郭部)を牽引する方法」

ということになります。


 「テーピング」とは、元々スポーツの分野でよく行われるものであり、「テープを貼ることにより関節や筋肉を保護・固定する行為」を意味します。それを陥入爪の治療に役立てようというのが、ここで言う「アンカーテーピング法」であるわけです。

 また、テーピングはその働きによって「アンカーテープ」と「サポートテープ」の2つに大きく分けられます。「アンカーテープ」とは、「アンカー」が船の「碇(いかり)」という意味であることからもわかる通り、テープを「碇のように」皮膚に固定するために用いるものを言います。そのため、「アンカーテープ」に使うテープは強力で無伸縮性のものが多いのです。そして、この「アンカーテープ」を足場のようにして、他のテープを貼る土台として用いるわけです。「サポートテープ」は、この「アンカーテープ」に貼り付けてその場所の皮膚を引っ張り、固定する働きをさせるために使うもので、伸縮性のよいものを使うことが多いことになるのです。

 つまり、この「アンカーテーピング法」というのは、陥入爪の陥入している部位の皮膚に「アンカーテープ」を貼って固定し、その「アンカーテープ」を「サポートテープ」によって牽引する方法を意味しているのです。


 このようなテーピングにより、陥入している部位の皮膚や肉芽を爪から遠ざけるように引っ張り、陥入の程度を軽くして治そうというのが、この治療法です。

 この方法は、以前「不適切な『手術』」として紹介した「指の肉を切り取る手術」(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/35954061.html)に大変よく似ています。違うのは指に傷を残さないところくらいです。ですから、この治療法に対する評価もほぼ同じであり、

   非効果的

の一語に尽きます。その理由については、上記参照記事に詳しく説明しているので、ここでは繰り返しません。


 この治療法も、陥入爪のごく初期または陥入の程度がごく軽いものにしか効果が期待できず、しかも効果があっても一時的なものにとどまってしまう可能性が非常に高いのです。

 ですから、手術のように痛みや傷を残さない点ではマシとも言えますが、陥入爪の治療法としてはおすすめできるものではないのです。


 もし、皆さんがかかっている医療機関で、この方法を受けていらっしゃるとしたら、それが効果的であるか、また、効いていないのに漫然と継続していないかについてご検討されることをおすすめ致します。


(続く)


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