次に挙げるのは、

   「コットン・パッキング法」

と呼ばれる方法、つまり、陥入爪の陥入している部位に綿を詰めるという治療法です。これは、医療機関でよく行われているのみならず、患者自身が応急処置として行っていることも多い方法と言えます。


 陥入爪とは

   「爪が肉に食い込んでいる状態」

であるわけですから、爪を肉から抜き去ってやれば症状は治まります。つまり、

   爪と肉との間に隙間を作ればよい

わけです。この「コットン・パッキング法」とは、爪と肉との間に綿を詰め込むことによって隙間を作ってやろうという方法なのです。

 具体的には、綿(医療用の脱脂綿がよい)をちぎって丸め、直径5mm程度の丸玉や円柱状にして、それを爪の縁から押し込んで爪と肉との間に入るようにするのです。手技としては簡単であり、ややコツは要りますが自分でもできますし、費用もほとんどかかりません。その点では実に便利な方法と言えるでしょう。

 ですが、残念ながらこの方法も軽症例にしか効果がありません。つまり、

   適応が限られている

のが最大の問題なのです。

 陥入爪で治療を必要とするほど悪化している方の場合、大抵、爪は肉にかなり深く食い込んでいて、時には5mm以上も深く陥入していることもあるのです。そうなると、爪の縁を露出させることは極めて困難です。そんな状態で綿を詰めようとしても、自分では入れたつもりでも爪の縁まで充分に入らないことがほとんどで、意味を成さないのです。

 ましてや、中に爪棘(ソウキョク)と呼ばれるトゲ状の爪の変形などあろうものなら、綿を無理に詰めようとすることによって爪が裂けたりしてさらに悪化することも充分にあり得るのです。


 ですから、この「コットン・パッキング法」は、陥入爪のうちの初期、少なくとも爪の縁が容易に露出できる程度のものでなければ有効とは言えないのです。何度も爪の縁を切り取って凌いできたような場合にはまず使えません。

 つまり、この方法は初期の陥入爪の改善には役立ちますが、それ以外にはほぼ無効であり、むしろ陥入爪になる前の予防手段として用いるのが適切なのです。肉芽や腫脹が見られるような進行した陥入爪には、他の治療法が必要だとお考えください。もし、現在この治療法を受けていらっしゃる方で、なかなか改善しないという場合は、この「コットン・パッキング法」の適応ではない可能性が高いと思われますので、他の治療法を検討されることをおすすめ致します。


(続く)


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