次に紹介するのは、
「コットン・パッキング法」
と呼ばれる方法です。
と言えば、きっと皆さんは疑問に思われるに違いありません。
「あれ? どこかで見たような・・・?」
と。
そうです。この「コットン・パッキング」という治療法は既に「陥入爪の『不適切でない』治療」(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/42488718.html)として紹介しているのです。
ですが、この方法は巻き爪の改善を目的として行われることも多く、その場合には陥入爪に対して行う場合と意味合いが変わってくるのです。そのため、ここで改めて「巻き爪の治療法」としてとりあげることにしたわけです。
陥入爪の治療法として紹介したときには、この方法は
(食い込んでいる)爪と肉との間に隙間を作る
ことを目的としていました。ですが、巻き爪の治療法として用いる場合には、これでは意味がありません。
巻き爪とは、爪の両縁が内側へ接近してくるわけですから、それを阻止する目的で綿を詰めようというわけなのです。
どうでしょうか? ここまでの説明なら、皆さんにもまあまあ納得して戴けるものと思います。しかし、この治療法もやはり「不適切でない」という評価にとどまらざるを得ない、利点の少ない方法なのです。
まず第一に、この方法を「正しく」行うのはとても難しいのです。
爪の彎曲を阻止する目的ならば、当然のことながら綿は爪の内側、すなわち
爪の下
に詰めなければなりません。ところが、治療を要するほどの巻き爪では爪の縁が皮膚の奥深くに入り込んでいて、爪の下どころか爪の縁を見ることすら困難です。そうなると、往々にして、
めくらめっぽうに綿を爪の縁に押し込む
ようなことになりがちなのです。すると、どのようなことが起こるでしょうか?
そうです。爪の下に入れるべき綿が爪の上にばかり入ってしまうのです。そうなると、爪の縁を押し下げる形になってしまい、下の図1のように、爪の彎曲を阻止するどころか、さらに進行させることになるのです。
これではまさに有害無益であり、完全に不適切な処置となってしまいます。
第二に、例え「正しく」爪の下に綿を詰めても、苦痛が大きい割に効果が乏しいのです。
爪の下側というのは、皆さんもおわかりのように
皮膚に密着している
のが普通です。そして、その場所の皮膚はとても敏感なのです。だからこそ、生爪を剥がされる痛みは強烈であり、過去には拷問の手段としても用いられていたわけです。
この「コットン・パッキング法」というのは、まさにこの敏感なところを引き剥がして、そこに綿を詰めるという行為なのです。これがかなりの苦痛を伴うものであることは、想像しただけでわかることでしょう。
しかも、その苦痛に耐えて綿を詰めたところで、効果がほとんど期待できないとしたらどうでしょう。実際、綿を爪の下に入れても、それが爪の彎曲を阻止する効果は微々たるものと言わざるを得ません。なぜなら、
爪よりも皮膚の方が柔らかいから
です。
例で説明しましょう。ここに柔らかい羊羹があり、その上に鉄の板の断面が押し当てられているとします。そうなりますと、放っておけば鉄板がどんどん羊羹に食い込んでいくことが予想されます。そこで、それを阻止するために鉄板と羊羹の間に綿を詰めたらどうなるでしょうか? 期待通り鉄板が押し上げられて、羊羹に食い込むのを防ぐことができるでしょうか? いいえ、そんなことはありません。おそらくは綿を詰めた分、さらに羊羹が凹むだけの結果となるでしょう。
つまり、
硬いものは柔らかいものに勝つ
のです。
これを実際の爪に置き換えて考えてみましょう。爪の彎曲を阻止する目的で爪の下に綿を詰めたとします。そうするとどうなるかと言えば、下の図2のように、硬い爪が外側へ押しのけられるよりも、むしろ、柔らかい皮膚の方が内側へ押し込まれてしまうのです。
つまり、肝心の爪の形はほとんど変わることがなく、皮膚や肉だけがより変形するという無意味な結果になってしまうわけです。これが果たして「有効な治療」と呼べるでしょうか?
以上のように、この「コットン・パッキング法」という治療法は、巻き爪に対しても有効性に乏しく、決しておすすめできるものではありません。費用がほとんどかからない、重大な障害を起こさない、といった「利点(?)」もなくはありませんが、患者にしてみれば、いくら安くても害がなくても治らなければ意味がないのは当然です。
ですから、もし、皆さんがこの「コットン・パッキング法」やそれに類する治療を漫然と施行されているようであれば、そのまま継続すべきか否か検討されることをおすすめ致します。
(続く)
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爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。
医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/
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また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。
医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
メールアドレス: miyataatsushi8@gmail.com
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「コットン・パッキング法」
と呼ばれる方法です。
と言えば、きっと皆さんは疑問に思われるに違いありません。
「あれ? どこかで見たような・・・?」
と。
そうです。この「コットン・パッキング」という治療法は既に「陥入爪の『不適切でない』治療」(http://biso-tsushin.doorblog.jp/archives/42488718.html)として紹介しているのです。
ですが、この方法は巻き爪の改善を目的として行われることも多く、その場合には陥入爪に対して行う場合と意味合いが変わってくるのです。そのため、ここで改めて「巻き爪の治療法」としてとりあげることにしたわけです。
陥入爪の治療法として紹介したときには、この方法は
(食い込んでいる)爪と肉との間に隙間を作る
ことを目的としていました。ですが、巻き爪の治療法として用いる場合には、これでは意味がありません。
巻き爪とは、爪の両縁が内側へ接近してくるわけですから、それを阻止する目的で綿を詰めようというわけなのです。
どうでしょうか? ここまでの説明なら、皆さんにもまあまあ納得して戴けるものと思います。しかし、この治療法もやはり「不適切でない」という評価にとどまらざるを得ない、利点の少ない方法なのです。
まず第一に、この方法を「正しく」行うのはとても難しいのです。
爪の彎曲を阻止する目的ならば、当然のことながら綿は爪の内側、すなわち
爪の下
に詰めなければなりません。ところが、治療を要するほどの巻き爪では爪の縁が皮膚の奥深くに入り込んでいて、爪の下どころか爪の縁を見ることすら困難です。そうなると、往々にして、
めくらめっぽうに綿を爪の縁に押し込む
ようなことになりがちなのです。すると、どのようなことが起こるでしょうか?
そうです。爪の下に入れるべき綿が爪の上にばかり入ってしまうのです。そうなると、爪の縁を押し下げる形になってしまい、下の図1のように、爪の彎曲を阻止するどころか、さらに進行させることになるのです。
これではまさに有害無益であり、完全に不適切な処置となってしまいます。
第二に、例え「正しく」爪の下に綿を詰めても、苦痛が大きい割に効果が乏しいのです。
爪の下側というのは、皆さんもおわかりのように
皮膚に密着している
のが普通です。そして、その場所の皮膚はとても敏感なのです。だからこそ、生爪を剥がされる痛みは強烈であり、過去には拷問の手段としても用いられていたわけです。
この「コットン・パッキング法」というのは、まさにこの敏感なところを引き剥がして、そこに綿を詰めるという行為なのです。これがかなりの苦痛を伴うものであることは、想像しただけでわかることでしょう。
しかも、その苦痛に耐えて綿を詰めたところで、効果がほとんど期待できないとしたらどうでしょう。実際、綿を爪の下に入れても、それが爪の彎曲を阻止する効果は微々たるものと言わざるを得ません。なぜなら、
爪よりも皮膚の方が柔らかいから
です。
例で説明しましょう。ここに柔らかい羊羹があり、その上に鉄の板の断面が押し当てられているとします。そうなりますと、放っておけば鉄板がどんどん羊羹に食い込んでいくことが予想されます。そこで、それを阻止するために鉄板と羊羹の間に綿を詰めたらどうなるでしょうか? 期待通り鉄板が押し上げられて、羊羹に食い込むのを防ぐことができるでしょうか? いいえ、そんなことはありません。おそらくは綿を詰めた分、さらに羊羹が凹むだけの結果となるでしょう。
つまり、
硬いものは柔らかいものに勝つ
のです。
これを実際の爪に置き換えて考えてみましょう。爪の彎曲を阻止する目的で爪の下に綿を詰めたとします。そうするとどうなるかと言えば、下の図2のように、硬い爪が外側へ押しのけられるよりも、むしろ、柔らかい皮膚の方が内側へ押し込まれてしまうのです。
つまり、肝心の爪の形はほとんど変わることがなく、皮膚や肉だけがより変形するという無意味な結果になってしまうわけです。これが果たして「有効な治療」と呼べるでしょうか?
以上のように、この「コットン・パッキング法」という治療法は、巻き爪に対しても有効性に乏しく、決しておすすめできるものではありません。費用がほとんどかからない、重大な障害を起こさない、といった「利点(?)」もなくはありませんが、患者にしてみれば、いくら安くても害がなくても治らなければ意味がないのは当然です。
ですから、もし、皆さんがこの「コットン・パッキング法」やそれに類する治療を漫然と施行されているようであれば、そのまま継続すべきか否か検討されることをおすすめ致します。
(続く)
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爪専門外来について診療・相談ご希望の方は、どうぞ下記のホームページをご参照の上、電話にてお問い合わせください。
医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル ホームページ: http://www.fureai-g.or.jp/fhh/
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また、私個人へのメールによる問い合わせにも対応致しますので、ご希望の方は下記メールアドレス宛にご送信ください。ただし、職務の都合上、返信に日数を要することがありますので、ご諒承ください。
医療法人健齢会 ふれあい平塚ホスピタル 内科 宮田 篤志
メールアドレス: miyataatsushi8@gmail.com
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